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『美女と野獣』

3
伝承の王子様と重ねられるのは畏れ多いなどと是が非でも言えないが、男はある日突然醜い獣の姿になっていた。わけもわからぬまま自分の姿に絶望した男は住んでいた小さな村を飛び出して、ひとり自暴自棄になりながら世界をふらふらと渡り歩いた。その醜い姿を見た人々からはなんと恐ろしい化物だと囁かれることすらあった。
男が少女と出逢ったのは、人に恐れられることなど既に慣れてしまったそんな頃だった。一冊の書物を抱えた少女は誰もが見惚れるほど美しかった。少女は世界中の書物を読むことが夢だと語り、男の旅路への同行を願い入ったのだ。自分は醜いから近づかない方が良いと何度も断ったのだが、少女は頑として自分の要望を折ろうとはしなかった。後に聞いたことだが少女は美しい見た目だけではなく、自他共に認める折り紙付きの変人であり頑固者だという。
こんなに醜い自分に優しく接する変人は、かつて村にいた頃に話しかけてくれた村一番の美少女によく似ていた。だからこそ男は少女の願いを最後まで断ることはできず、護衛と称して少女の夢に付き添うことにしたのだった。
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