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『美女と野獣』

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「最初は半信半疑だったのよ、人が獣に変わるなんてって。でもあなたに出会って、話を聞いて……ああ、噂は本当だったんだってわかったの」
「それって……」
黙って聞いていた男だったが、彼女の言う"その人"に思い当たるところがあり口を開きかけたが噤んだ。
「『魔法の赤い花の前で愛を唱えれば、心から願う望みを一つだけ叶えてくれる』っていう言い伝えがあるの知ってる?私の大好きな書物に載っていた伝説。……『真実の花』はこの伝説を元にして、私が作ったお話なの」
「なんで、そこまで……」
「だって……あなたに逢いたかったから。……後は、私自身に言い聞かせるためかな」
魔法の花、いや真実の花が見つからなかったらどうしようって思ってたの。そこまで言うと少女は気まずそうにはにかむ。
「絶対に見つけようね」と少女は言った。その言葉は宣言として、他でもない少女自身に向けられていたのだ。
全てわかった。少女は村にいた頃からずっと隣に居て、ずっと自分を認めてくれていた。

「そうか、君はあのときの君だったんだね」

真実の魔法の花の前で愛を誓う時、心から願う望みを一つだけ叶えてくれるらしい。涙がひと粒零れて、男は淡い光に包まれる中でずっと頭の隅に隠していた本当の自分の姿を思い出していた。
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