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【初恋プレリュード】


とある町に勇者は居た
景色を眺めて歩く
賑わう商店街を通り抜け
狭い路地へ

誰も通らない途の中
ひっそりと佇むそれはあった
沢山の色に彩られた小さな店
足はそこへ向かった


それは花屋だった
綺麗な花が咲いている
人気の無いこの場所に
花は黙ってそこに居た
勇者はずっとそれを見ていた

珍しい来客
彼女もまた見ていた
店の奥
彼女は勇気を持って
一歩前に
勇者の前へ

花の香り
顔をあげてみる
そこには女性が立っていた
切り揃えられた短い黒髪
悪魔のような赤い眼と黄色の線
しかしその眼に敵意無く
優しい眼だった

彼女は問うた
花は好きか
勇者は答えた
好きだ

彼女は綻ぶ
同時に彼女は俯いて
悲しそうに問うた
私が恐くないのか

何故
と勇者は言った
彼女は答える
悪魔との混血
忌むべき存在なのだと

勇者は優しく微笑んだ
俺は気にしない
アンタは綺麗な眼をしている
恐くない

驚く彼女
勇者は微笑み返した
楽しかった
勇者は背を向け
立ち去ろうとした

彼女は勇者を呼び止めた
足を止めて振り返る
また来てください
彼女は笑っていた
勇者は頷いた
そして立ち去る背中を見送った
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