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【にんぎょのおうじさま】


そのひは つきのない まっくろなよる でした。
おうじさまは しょうじょに あうために
いりえに いきました。
しかし そこには しょうじょの すがたは なく
かわりに あくまが たっていました。

あくまは いいました。
「にんぎょの おうじよ。
おまえの なかまは あずかった。
たすけたいのならば おれの いうとおりにしろ」
おうじさまは おどろいて
あくまのいうことに みみを かたむけました。

「おまえに このナイフを てわたす。
そのナイフで しょうじょの むねを つらぬくのだ。
おまえに ちをふむあしを あたえる。
そのあしで たかいとうにすむ
しょうじょのもとへ ゆくのだ。
つぎの あさひが のぼるまでに できなければ
おまえも おまえのなかまも 
あわとなり うみの なかへ きえゆくだろう」

おうじさまは ひどく かなしみました。
しかし おうじさまは
あくまの いうとおりに することに しました。
おうじさまは にんぎょのおうじさま ですから
なかまを たすけることは あたりまえ でした。


おうじさまは あるきました。
なれないあしを ひきずりながら
つきのしたの みちを あるきました。
そのひは とても つめたいよる だったので
あしもとが とても つめたくなりました。
おうじさまは そんな つめたさにも たえて
あるきつづけました。
おうじさまは かなしくて ないていました。
そのなみだは やがて だいちに おちて
なみだのみちが できました。

なみだのみちを たどっていくと
おうじさまは ついに
たかいとうにすむ
しょうじょの もとへと たどりつきました。
まちのなかで いちばん たかいとう でした。
しょうじょは おもいびょうきに かかってしまい
ベッドのなかで しずかに ねむっていたのです。

しょうじょの かおが あまりにも きれいだったので
おうじさまは ずっとみていたい とねがいました。
しかしそれは
おうじさまが ねがっては いけないこと でした。
しょうじょの むねを つらぬかないと
おうじさまも おうじさまのなかまも
あわになって きえてしまうからです。


おうじさまは ナイフを しょうじょに むけました。
「ありがとう さようなら」
そして おうじさまは
なみだを ひとつおとしてから ナイフを
ふかく ふかく みずからのむねへと つきさしました。
すると おうじさまは
あわになって きえてしまいました。

おうじさまが さいごに のこしたなみだが
しょうじょの むねに しずみます。
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