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勇カズの与太話

【黄昏の街】
 赤色の石畳と整った街並みと賑やかな広場をくぐり抜けて、彼はバルコニーへとたどり着き足を止める。
 ――夕暮れ時の街並みはこの街の自慢だ。 髭をたくわえた街役場の男性が言っていたことを思い出し、彼は手すりに手を置く。
 山と山の合間に位置する狭間の街。陽が落ちれば、澄んだ青空と遠くの山並みを朱く塗りつぶして夜宴を駆り立てる。オレンジを背にした城壁の頭、背の高いカテドラル、城跡を利用した町人たちの家々。バルコニーを覆うようにかけられたアーチは、額縁の役割をもって遠景を切り取り、時間を閉じ込める。
 幻想的な街を象徴する薔薇色レンガの建物たちが夕焼けを照り返し、額縁の中に朱く赤くたたずんでいた。閉じ込められた絵画はなるほど『黄昏の街』にふさわしいほどの美しさと儚さと感動を与える。
 などと、感嘆の声を上げる他の旅人に紛れて彼は考えていた。遷りゆく景色を眺めることは嫌いではない。

 南寄りのこの地には山間を抜けて生温い風が吹き抜けていく。穏やかな気候だ。次第に夜が街を蝕んでいけば、人行く道が魔力を帯びて光り始めていた。
 ――それは魔導灯の火だよ。 街を訪れた旅人の男が教えてくれた。黄昏と魔導灯がこの街を楽しむ合図だと言って、旅人は広場の酒場へ消えて行った。
 朱色の余韻にいつまでも身を投じていたかったが、日没には仲間の待つ宿へと戻らないといけない。旅の同行者から耳にたこができるほど忠告されていた。いっときの風情よりも明くる日の腹を満たすことの方が、彼にとっては優先すべきことだった。
 夜の絵画から始まる人間模様を眺めながら、彼は来た道を戻ることにした。



カズト「……」
レンカ「テメェどこかに行くつもりか?」
カズト「街についたら一度パーティーは解散してる」
レンカ「……明日は依頼されたクエストをやるんだ。夕食までには戻ってこいよ? じゃないとお前の朝飯の分は用意しない」
カズト「そう言う場合のお前は本当に用意しないな。善処はする」
レンカ「善処じゃなくて約束しやがれ」
カズト「……口うるさい脳筋だ」
レンカ「……なんて?」
カズト「いや、なんでもない」



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