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勇カズの与太話

戦闘前カットイン風SSシリーズ。

01
彼の瞳は光を映すか。
「めんどくせぇ」
彼の瞳に色彩はあるか。
「全部、終わりにしようか」
全てを見下した彼の瞳は何も映さない。代わりにその世界は慄いた。目の前に佇むその者は森羅万象を従え、黒い刃と完全なる勝利を相手に向けた。彼は正に"勇者"なのだと、耳元に精霊が囁くから。



02
前傾姿勢に後ろ手で構えるそれは普段の彼女からは想像のつかない得物であった。
「ありがたく思えよ、"これ"の初めての相手に選ばれたんだ」
彼女の手に握るは透明に揺らめく水のリボン。魔法で作り出した彼女だけの武器、遠距離を苦手とする彼女のための戦闘法。
「いくぜ?」



03
「テーマは『見世物小屋』…」
淡い色彩の二つ髪を揺らして彼女の描く"世界"が姿を現した。檻の中の猛獣が吼え狂う音が聞こえる。
「さあ、ミナのマジックショーへようこそ」
彼女はシルクハットを深く被り、微笑んだ。ふわり、浮かんだナイフたちが刃先を向けた。ここは既に彼女の"奇術"の中だ。



04
鍔を持ち上げた彼の
射抜くような双眸に睨まれる。
「あまりボクを舐めないほうがいい」
ニコリと笑み。白煙の中に溶ける。
足音ひとつ、吐息ひとつ、鼓動ひとつ、彼には視えている。その全てが火焔吹くトリガーの焦点となるだろう。
「一瞬で終わらせるよ」
両掌に握られた双つの銃把を静かに傾けた。

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