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勇カズの与太話

【鳥籠の少女は飛び立った】

わたしの世界は本と魔法で包まれた鳥籠だ。
羽はあるのに飛べない鳥。
窓はあるのに空しか見えない。
わたしの部屋にくるのは決まって恐る恐るごはんを持ってくる女中とつまらなそうなわたしと同じ顔のお姉ちゃんだけ。

お姉ちゃんが行ってる学園はとても楽しそうなのに、お姉ちゃんはいつも授業のことしか話してくれない。
つまんなそう。
だから、わたしもつまんなそうにお姉ちゃんの出した授業の問題に答えるの。
そしたらお姉ちゃんはいつも目を丸くして怖い顔になる。
かわいそうなお姉ちゃん。

あるときそれ以外のお客様がきたときがあった。
月のない真夜中のこと。
あいつは開くはずのない窓を簡単に開けてわたしの部屋に降り立った。
『私と共にくる気はないか』
あいつはそう言った。
いや、なんかぐちゃぐちゃ他にも言ってたけど覚えていないけど、その言葉だけはわたしの胸に刺さった。

部屋の外では大騒ぎ。わたしの部屋に侵入者って。
……バカみたいね。
そのときわたしは思ったの、あいつについていけばきっともっと楽しそうだって。
こんなつまらない世界からおさらばできるって。
だからわたし言ったのよ。
『よろこんで』
冷たいあいつの手を掴んで、鳥籠の鳥は外に出たの。
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