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麦色の小咄

【見据えた銃口】
※うちよそ六陣より抜粋

 どこからか殺気を感じ、カルロは立ち止まる。
「……誰だ」
 辺りに気を配り周囲に耳を研ぎ澄ますも返事はない。が、次の瞬間彼の足元へ銃弾が放たれた。
「銃……。っ!」
 足を退けてなんとか避けたものの、再び銃声が跳ねる。
「くそっ。どこだ!」
 気配はないが確実に狙われている。カルロは素早く自身の周りを炎で囲い、銃弾の飛んできた方向へと炎を放った。手応えはない。
 その場に留まるよりは動いたほうが弾は当たらない。そう考えカルロは岩場に囲まれた洞窟の中を走って移動する。
 銃声音が変わる。甲高く連なった音は散弾銃だろうか。
「……っ」
 放たれた弾は炎の壁が焼き落としているが、炎の隙間を縫って通り抜けた弾がいくつかカルロの肌を掠める。
 銃弾の切れ間に何かが彼の足元へと転がってくる。これは……と考えるより早くカルロは急いで距離を取り防護壁を張る。
 そして、爆ぜた。
「…………っ!」
 転がってきたのは線の抜かれた手榴弾だった。爆発の炎に焼かれることはなかったがその凄まじい爆風は辺りの岩を多少砕きカルロを後方へ吹き飛ばした。
「………くそ……」
 悪態をつく。戦況が悪すぎる。そして何より「相手」が悪すぎる。

 乱れた息を整えていたとき、背後から銃声が聞こえた。今までのどれより近いその声は彼の右足を貫いていた。
「………っ!?」
 続けて左足に。
 成す術もなくカルロはその場に崩れ落ち倒れ臥す。先ほどまでの音は止み、気持ちが悪いくらい辺りはしんとしている。
「…………っ」
 静まり返った空間で誰かの足音が近づいてくる。音を消して歩くことに慣れた微細な足音が止まるとカシャ、という金属の音が聞こえた。
「…………」
 おもむろに顔を上げる。
「…………リオ」
 目の前にはカルロのよく知る人物がこめかみに銃口を差し向けていた。
「…………」
 特徴的なハットを被っていない彼の表情はよく見えるのが哀しいほど、ひどく冷たい目をしていた。
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