勇カズ 冒険Log(本編)
advent.04
1
湿地帯近くの林エリアを歩いているときのこと。この日は雲ひとつなく晴れやかな日だったが、容赦なく照りつける太陽によって辺りの気温を高めていた。
うだるような暑さに流石のカズト一行もバテバテだった。暑さに負けて休憩していた。
「あつっい! なんで今日はこんなに暑いんだ」
「ほんとに! 休んでるはずなのに体力を奪われている気がするよ!」
ようやく見つけた木陰で休んでいるものの、暑さを凌ぐ方法もなくレンカとリオはグチグチと文句を垂れている。
「へー、可哀想に」
「涼しくなれないのはとても可哀想!」
文句ばかり言う2人の横で、カズトとミナは涼しい顔をしている。
「……なんでお前らは暑くないんだ!? 汗一つかいてないなんて、さては化け物か?」
「もちろんミナは魔法で自分の周りを涼しくしてるから平気なのよ〜」
「ズルいぞガキ! カズトも魔法を?」
「いや、オレは何もしてない。あー、あちぃー……」
「本物の化け物かよ!」
「カズトが化け物なのは知ってた……」
「失礼な」
失礼とも思わない棒読みだ。
2
暑がる一行の様子を見てか、唐突にミナが切り株の上に立ち高らかに言う。
「とーっても可哀想な愚民共よ! このミナ様に土下座をして1ホールケーキを献上するのならばお前たちも魔法で涼しくしてさしあげよーう! あ、カズトだけは無償でかけてあげるね!」
ニコッとカズトに笑いかけると、ミナはスペルを唱えカズトに涼しくなる魔法をかけた。
「サンキュー」
「そんなの差別だ! ふざけるなよ、ボクらはお前みたいなガキに土下座なんかしないぞ! なっ、レンカちゃ」
「ミナ様どうか私に涼しくなる魔法をかけてください」
「レンカちゃんん!!?」
リオが味方を求めるも、レンカはすでに頭を地面にこすりつけていた。
「いや、ホント、マジしんどいんで」
「レンカはいい子だねー!」
よしよし、とレンカの頭をなでるミナ。暑さの前にレンカにとってプライドなんて二の次だったようだ。
「……くっ! ボクは屈したりしないからな!」
捨て台詞を吐いたリオをハイハイ、と軽くあしらい、四人はさらに歩を進めていく。
3
涼しくなる魔法をかけてもらったカズトとレンカは先ほど感じていた暑さなどなかったような涼しい顔で歩いている。代わりにリオは止まらない汗を拭いながら黙々と歩いていた。
「涼しー」
「ほらほら、クズリオちゃん。早く地面にひれ伏し、ミナに跪いて靴の先を舐めるのよー! すぐに楽にしてあげる!」
ほうきに乗るミナは暑そうなリオの目の前をわざとらしく行ったりきたりをくりかえしている。
「さっきよりも条件酷になってねーか!?」
「お前見てると暑苦しい」
「暑苦しいってなんだよっ! そもそもお前暑がってなかっただろ!?」
「リオ、うるせぇ」
「レンカちゃん! レンカちゃんだけはボクの味方だよね!?」
「いや違う」
「えっ……」
レンカにも裏切られ肩を落とす彼の姿を見てミナとカズトは嘲笑っていた。
そこへ1体のゴブリンが4人の前にやってきて持っていた剣の刃をこちらへ向けた。
「見つけたぜ勇者カズト! さあ、勝負だ!」
「えーーー……」
すると、嫌そうな顔をして戦闘を渋るカズトをさえぎってリオが前に出る。
「ちょうどいい、今日はボクが相手になってやろうじゃないか。この怒りと悲しみ、お前らで憂さ晴らししてやる!」
「おお、熱い熱い」
「せいぜい頑張りなさいねー」
「くっそ……」
リオは目の前のゴブリンをにらみつけると、ゆっくりと両腰のホルスターに手を伸ばした。
4
彼はトドメの一撃を食らわすためにと両手に握る銃口をゴブリンの顔へ向ける。ゴブリンの顔面は蒼白だ。
「ひぃー! 死にたくない!」
ゴブリンたちは死ぬことを恐れ、文字通りの死に物狂いでその場から逃げ出していった。
リオは逃げる彼らを追わず、完全にゴブリンの姿が見えなくなったところで彼は構えていた銃をおろした。
「どうだ! ……うわ、動いたら余計に暑くなった……」
「あは、バカリオー!」
「ああ、バカだな」
「カズトと同じ意見だね! ミナ、嬉しいよ!」
「暑い、くっつくな」
「こいつら、むかつく!」
おろした銃を再びカズトとミナに向けたのを、まあまあとレンカがなぐさめる。
「レンカちゃん……」
「おつかれ。こんなもんしかなかったけど、これで我慢してくれ」
レンカがアイテム欄からあるアイテムを取り出しリオに手渡した。薄く平たい竹組みのそれには憎たらしいデフォルメされた太陽が描かれていた。
「……う、うちわ?」
「暑いんだろ?」
「……あ、レンカちゃん。……あ、ありがとう! ボクはとても嬉しいよ!!」
「気休めにも程がある」
レンカの微妙な優しさにカズトは呆れていたが、レンカは気にしていないようだ。
受け取ったうちわをパタパタと動かしてわずかにそよぐ風を仰いだ。
「あー……暑い………」
そのわずかすぎる風は無いよりはマシだろう。リオは汗を拭った。
To the next adventure…
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湿地帯近くの林エリアを歩いているときのこと。この日は雲ひとつなく晴れやかな日だったが、容赦なく照りつける太陽によって辺りの気温を高めていた。
うだるような暑さに流石のカズト一行もバテバテだった。暑さに負けて休憩していた。
「あつっい! なんで今日はこんなに暑いんだ」
「ほんとに! 休んでるはずなのに体力を奪われている気がするよ!」
ようやく見つけた木陰で休んでいるものの、暑さを凌ぐ方法もなくレンカとリオはグチグチと文句を垂れている。
「へー、可哀想に」
「涼しくなれないのはとても可哀想!」
文句ばかり言う2人の横で、カズトとミナは涼しい顔をしている。
「……なんでお前らは暑くないんだ!? 汗一つかいてないなんて、さては化け物か?」
「もちろんミナは魔法で自分の周りを涼しくしてるから平気なのよ〜」
「ズルいぞガキ! カズトも魔法を?」
「いや、オレは何もしてない。あー、あちぃー……」
「本物の化け物かよ!」
「カズトが化け物なのは知ってた……」
「失礼な」
失礼とも思わない棒読みだ。
2
暑がる一行の様子を見てか、唐突にミナが切り株の上に立ち高らかに言う。
「とーっても可哀想な愚民共よ! このミナ様に土下座をして1ホールケーキを献上するのならばお前たちも魔法で涼しくしてさしあげよーう! あ、カズトだけは無償でかけてあげるね!」
ニコッとカズトに笑いかけると、ミナはスペルを唱えカズトに涼しくなる魔法をかけた。
「サンキュー」
「そんなの差別だ! ふざけるなよ、ボクらはお前みたいなガキに土下座なんかしないぞ! なっ、レンカちゃ」
「ミナ様どうか私に涼しくなる魔法をかけてください」
「レンカちゃんん!!?」
リオが味方を求めるも、レンカはすでに頭を地面にこすりつけていた。
「いや、ホント、マジしんどいんで」
「レンカはいい子だねー!」
よしよし、とレンカの頭をなでるミナ。暑さの前にレンカにとってプライドなんて二の次だったようだ。
「……くっ! ボクは屈したりしないからな!」
捨て台詞を吐いたリオをハイハイ、と軽くあしらい、四人はさらに歩を進めていく。
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涼しくなる魔法をかけてもらったカズトとレンカは先ほど感じていた暑さなどなかったような涼しい顔で歩いている。代わりにリオは止まらない汗を拭いながら黙々と歩いていた。
「涼しー」
「ほらほら、クズリオちゃん。早く地面にひれ伏し、ミナに跪いて靴の先を舐めるのよー! すぐに楽にしてあげる!」
ほうきに乗るミナは暑そうなリオの目の前をわざとらしく行ったりきたりをくりかえしている。
「さっきよりも条件酷になってねーか!?」
「お前見てると暑苦しい」
「暑苦しいってなんだよっ! そもそもお前暑がってなかっただろ!?」
「リオ、うるせぇ」
「レンカちゃん! レンカちゃんだけはボクの味方だよね!?」
「いや違う」
「えっ……」
レンカにも裏切られ肩を落とす彼の姿を見てミナとカズトは嘲笑っていた。
そこへ1体のゴブリンが4人の前にやってきて持っていた剣の刃をこちらへ向けた。
「見つけたぜ勇者カズト! さあ、勝負だ!」
「えーーー……」
すると、嫌そうな顔をして戦闘を渋るカズトをさえぎってリオが前に出る。
「ちょうどいい、今日はボクが相手になってやろうじゃないか。この怒りと悲しみ、お前らで憂さ晴らししてやる!」
「おお、熱い熱い」
「せいぜい頑張りなさいねー」
「くっそ……」
リオは目の前のゴブリンをにらみつけると、ゆっくりと両腰のホルスターに手を伸ばした。
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彼はトドメの一撃を食らわすためにと両手に握る銃口をゴブリンの顔へ向ける。ゴブリンの顔面は蒼白だ。
「ひぃー! 死にたくない!」
ゴブリンたちは死ぬことを恐れ、文字通りの死に物狂いでその場から逃げ出していった。
リオは逃げる彼らを追わず、完全にゴブリンの姿が見えなくなったところで彼は構えていた銃をおろした。
「どうだ! ……うわ、動いたら余計に暑くなった……」
「あは、バカリオー!」
「ああ、バカだな」
「カズトと同じ意見だね! ミナ、嬉しいよ!」
「暑い、くっつくな」
「こいつら、むかつく!」
おろした銃を再びカズトとミナに向けたのを、まあまあとレンカがなぐさめる。
「レンカちゃん……」
「おつかれ。こんなもんしかなかったけど、これで我慢してくれ」
レンカがアイテム欄からあるアイテムを取り出しリオに手渡した。薄く平たい竹組みのそれには憎たらしいデフォルメされた太陽が描かれていた。
「……う、うちわ?」
「暑いんだろ?」
「……あ、レンカちゃん。……あ、ありがとう! ボクはとても嬉しいよ!!」
「気休めにも程がある」
レンカの微妙な優しさにカズトは呆れていたが、レンカは気にしていないようだ。
受け取ったうちわをパタパタと動かしてわずかにそよぐ風を仰いだ。
「あー……暑い………」
そのわずかすぎる風は無いよりはマシだろう。リオは汗を拭った。
To the next adventure…