授業終了後、白石が彼女の手を引っ張る形で二人は真っ先に教室を出た。
行き先は普段誰も近寄らない特別教室棟。

　「白石、いきなり何するん！」
　「授業中も今も、席替えの件も色々とすまんな、村田。」
　「ごめん、途中から言うてる意味わからへんわ。」

彼女に謝罪した白石は、どこか嬉しい顔をしていた。
同時に、あることを言いたそうな顔をする。

　「今回の席替え、村田の隣りはな、もともと謙也やったんや。」
　「えっ？ 白石じゃなくて？」
　「席を移動する時、代わってもろた。謙也と俺、前後やったし。」
　「なんでそんなこと…。」
　「俺が村田を好きやから…。」

夏香は驚いた顔をした。
同時に彼の言葉の意味を理解出来なかった。

　「3年になって初めて同じクラスになった村田に一目惚れした。それが理由や。」
　「そんなこと言われると、嫌でも期待してしまうやろ。やめてくれへんか？」

その後は沈黙が続いた。
話し始めたのは彼の方だった。

　「…してええよ。」
　「えっ？」