その大会の知らせは突然だった。
ミニ四駆の世界大会が日本で開催されることになった。
梓は幼馴染のJと研究所で話をしていた。

　「ミニ四駆の世界大会ね。」
　「僕たちが日本代表になったんだ。」
　「えっ？　そうなの？」
　「鉄心先生が強引にメンバー登録したんだけどね…。」
　「あの人らしいね。」

暫くすると、他のメンバーが研究所へと顔を出す。
やはり話の内容は例の大会のことだ。

　「マシンを大会仕様にしなくちゃいけないから大変なんだね。」
　「でも早く外国チームと試合したよな。」
　「この前の借りもあるしね。」
　「この前の借りって？」

梓は自分の知らないところで起こった出来事に困惑していた。だが内容から”嫌な出来事があった”ことだけは感じ取っていた。
Jの話では、世界グランプリに出場予定になっているアメリカチームと草レースすることとなったが、あっさりと負けてしまったらしい。

　「そういえば梓は何でいるの？」
　「なんでって？　Jに逢いに来たんだけど…。」
　「ふーん。」
　「おい、豪！　梓ちゃんに失礼だろ！」
　「烈君、いいよ…。」

豪の兄の烈は相変わらず手を焼いている様子だ。
梓は最初こそ豪の言動に困ったが慣れてしまえば気にならなくなっていた。