悪魔

雲雀との再会



日本に渡る前日、玲一は暫くは飲めないからと気に入りのカフェでコーヒーを飲んでいると黒髪の男が声をかけた。

「相席するよ。」

玲一は遠慮のない奴だと椅子に座る人物を見ると目を見開いた。

「もしかして、恭弥・・・か?」

玲一の前にスーツ姿で頷く雲雀がいた。いきなりの再会に呆然としている玲一を気にせず店員にコーヒーを注文した。



「久しぶりだな。しかし恭弥がイタリアにいるとは思わなかった。観光か?」


思い出すのはいつもトンファーで襲いかかってくる雲雀の相手をして最終的にトンファーを取り上げて終わらせていたこと。玲一は懐かしそうに雲雀を見ている。
雲雀は結局玲一には勝てなかったなと思うが今はそれどころではない。大事な『友人』がデボラによって陥れられたのだから。


「久しぶり。それより玲一に相談したいことがあるんだ。君さ警察か探偵でしょ?」

「何の話だ?」

まさか警察でも探偵でもなくて秘密結社の人間だとは言えるわけがない。それ以前に何故何年も会っていない雲雀がそんなことを言うのか理解出来ない玲一は眉間を寄せる。雲雀は数日前のことを口にした。

「数日前に君と赤毛の男の会話をここのカフェで聞いていた。」

「・・・そういうことか。で、相談って?」

かなり小声で会話していたがどうやら雲雀は地獄耳らしいと玲一は捉えたがほんの少しの音で起きる雲雀だ。聞こえて当然だ。
納得した玲一は色々詮索される前に話を聞いて切り上げようとした。


「あの日の話だと玲一はキアロスクーロのことを調べることになってたよね?僕ならそれに役立つ証言が出来るけど。」

内容まで聞いていたのかと内心冷や汗をかく玲一。しかし一般人であろう雲雀がキアロスクーロを知っているのかと訝しそうに見るが雲雀は玲一の様子を気にせず話を続けた。

「キアロスクーロのデボラとかいう牝豚が僕の大事な友人を陥れて刑務所に入れた。どう?結構良い情報じゃない?」

「友人って?」

「沢田綱吉。本人は嫌がってるけどボンゴレの次期後継者。沢田はデボラに陥れられたと考えて良いと思う。」

「!?」


一体どういう経緯で雲雀がマフィアと係わったんだと玲一は驚く。普通に考えたら日本人で一般人がイタリアのマフィアと友人は有り得ない。
しかし雲雀の証言は証拠を確証あるものした。有益な情報だ。

「それで、相談って何だ?」

「沢田を刑務所から出して欲しい。」


ツナの居る刑務所は並盛からかなり離れた場所だった。圧力をかけたが並盛では力がある雲雀でも並盛ではない場所で圧力をかけられなかった。(キアロスクーロが圧力をかけていたし、その時既にツナは女性受刑者の刑務所に移動していた。)

悔しそうに話す雲雀に玲一は曖昧に頷く。

「分かった。何とかしてみるよ。」

明日から実行するのだから雲雀の頼み事は玲一からしたら頼み事にすらならないような物だ。それより玲一は雲雀は自分が此所に来ると思ったんだと不思議に思う。


「それにしてもさ俺が何故此所に来ると思った?」

尾行されてはいなかった筈。玲一はその辺は注意を払っている。

「ある意味賭けだった。試しに此処の店長や店員に聞いたんだよ。そしたら常連客だって教えてくれた。それから毎日此所に通った。」

「で、今日も来たら俺に会ったってことか。それじゃ最善は尽くすから。」

玲一は雲雀の探るような目に気付き、詮索される前に自分のコーヒー代を置いてカフェを出ていった。

「彼、僕に何か隠してるよね?」

風紀財団を作るのに玲一は有益な存在かもしれない。雲雀はコーヒーを飲みながら隠してることを暴いてみようと思った。


ーーーー


「ここが日本ね!」

日本に渡った玲一とミリアム、ソフィア。日本人の玲一と何度か来ているソフィアとは違い、初めての日本にミリアムはキョロキョロと見回す。物珍しそうに見て楽しんでいるような感じだ。

「遊びに来たんじゃないからな。」

「分かってるよ。任務でしょ。」

釘を刺す玲一にミリアムはバツが悪そうな顔になった。


既に廃業してまっただろう工場地帯。そこで働いていた従業員が癒しに使っていたと思われる潰れた喫茶店。その喫茶店を改装、改造したのがディアベルの日本支部だ。

玲一達は喫茶店に入ると日本支部のリーダーに出迎えられた。

「お疲れ様です。玲一さん、ソフィアさん、ミリアムさん。」

穏やかな雰囲気の日本支部のリーダーは部下にお茶の用意をさせ、作戦を練り出した。


「ソフィアさんとミリアムさんが潜入し、沢田綱吉を脱獄させる。玲一さんは我々と潜入と脱獄のルートを押さえる。ですが潜入はともかく脱獄はかなり厳しいですよ?」

ツナの居る刑務所は別名、攻略不能の城壁と呼ばれている。壁が他の刑務所より高く作られているしセンサーがあちこちに設置されている。


「そこなんだよね。」

玲一が言うとミリアムが無茶ぶりを言う。

「そこを何とかするのが玲一の仕事。何とかして。」

「無茶ぶりだ。・・・でも幻術を扱える人間がいれば平気か?」

玲一とミリアム、支部のリーダーとその部下達はソフィアを見た。

「??」

「ダンテはその為に任務を終えたばかりのソフィアをメンバーに入れたわけか。」

「成程。」

「ソフィアにかかってるからね。」

「え!?」

確かにソフィアは幻術を扱えるが幻術に毛が生えたようなものの程度。

「それこそ無茶ぶりよ!!」

そもそも幻術の資質が高ければ後継者争いに破れなかった筈だ。はっきり言って使えない代物だ。

結局玲一にごり押しされて脱獄する時はソフィアの幻術で姿を消して行動することになった。


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