悪魔


ダンテの執務室に入ると玲一より年上でクールな雰囲気を持つブルネット色のショートヘアの美女が報告している最中だった。

「潜入したファミリーは麻薬入りの飲料を裏で売っていたわ。」

「ソフィアご苦労だった。」

ソフィアと呼ばれた女性はダンテに調査書を渡すと玲一に気付いた。

「玲一、久しぶりね。」

「捜査お疲れさん。」

玲一はソフィアに返事をするとダンテの机にダンッと調査書を叩き付けるように置いた。

「証拠はないけどキアロスクーロと令嬢の何かを知っている人物を見付けた。沢田綱吉を刑務所から脱獄させてキアロスクーロのことを聞けば証言は得られるかもしれない。」

ダンテは玲一の調査書に目を走らせた。


「成程。しかしいくら証人になるかも知れないとはいえ次期ドン・ボンゴレではな。」

キアロスクーロより危険だと調査書を机に置くダンテ。
世界最大規模のファミリーの次期ボスに近付くのは浅はかだ。
暗に許可しないと言ってくるダンテに玲一は眉間に皺を寄せる。ソフィアは調査書を手に取り読んだ。


「許可しても良いんじゃない?」

「ソフィア、キアロスクーロもボンゴレも巨大な組織だ。戦力だって分からんのに迂闊に沢田綱吉に近付くのは危険だ。」

「それで良いのよ。」

「?」

「沢田綱吉を手に入れるのは危険だけど手に入れたら証言は取れる。もしかしたら証拠も有るかも知れないわ。」

いずれはキアロスクーロもボンゴレも潰すのだからと付け加えるソフィアにダンテは暫し考えた。


「あくまで今回はファミリーの潜入捜査ではなく情報収集と言うことか。良いだろう。許可する。メンバーは玲一とソフィアとミリアムだ。」

ダンテはその場に居ないミリアムを呼び出した。


見事な金髪をポニーテールに結った可愛らしい顔をした女性が執務室に入って面子を見て結構キツイ任務だと悟った。


「かなり面倒な任務?」

「ミリアム良く分かったわね?」

ミリアムと呼ばれた女性は玲一を見て小さく溜め息をした。

「玲一がいる時って潜入するにしても、追跡するにしても何にしても厄介な任務じゃん。ソフィアはそうは思わない?」

少々怠そうにするミリアムにソフィアは今回の任務を推したのは自分だと苦い笑みを見せた。玲一はだからどうしたと我関せずだ。
今回の任務の主要メンバーが揃ったところで作戦会議が始まった。

「今回の任務は沢田綱吉を日本の刑務所から脱獄させることだ。玲一は日本支部のメンバーと脱獄の手配。ミリアムとソフィアは刑務所に潜入。そこで沢田綱吉と接触しろ。」

「つまり犯罪者に成り済まして沢田綱吉に接触ってこと?」

ミリアムが渡された調査書を読みながら聞くとダンテは無言で頷いた。ミリアムは本当に厄介だなと思った。

「沢田綱吉がどんな性格か分からないから慎重にいかないと危険。」

マフィアらしい性格だったら疑い深いし狡猾で気性も荒いだろうと思っているとソフィアが最初に接触するのは自分だと言った。

「沢田綱吉に最初に接触するのは元マフィアの私よ。だから安心して。と言ってもどんな人物か確かめる暇はないわね。」

「そっか。」

早急にツナを脱獄させるなら確かめる時間はない。

「俺は日本支部と協力して脱獄のルートを探るってところだろ?」

玲一が言うとダンテは頷きメンバーに言った。

「日本に渡り任務を遂行しろ!」

「「「了解!!」」」


玲一達は執務室を出るとミリアムが一人言のように言った。

「犯罪者に成り済ますってどんな罪状になるのかな。」

「希望の罪状があるなら聞くけど?」

「玲一そんなものあるわけないよ。」

「俺、手配できるけど?」

「だからないって!」


言い合いする玲一とミリアム、それを面白そうに見ているソフィア。


彼等がツナを助け出す少し前にある人物が玲一の前に現れた。


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