悪魔
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カルロに呼び出されたのはマフィア関係のことだろう。
「直接ダンテじゃなくて俺に連絡してくるってことは厄介な物?」
「まぁ、かなりな。ダンテなら無理って言ってくる。」
頬をポリポリと指でかくカルロに玲一は話してみろと続きを促す。
「実はなマフィアのキアロスクーロファミリーを捕まえたいんだが。」
「っ!?」
危うくコーヒーを吹き出すところだった玲一。思いっきり厄介な話だと思った。
キアロスクーロファミリーは世界最大規模のボンゴレファミリーの同盟ファミリー。ボンゴレの同盟ファミリー内では2番目に大きいファミリーだ。
「ボンゴレの同盟ファミリーだよ。凄く厄介じゃん。何かしら手はあるの?」
「いや、余りない。以前から麻薬や人体実験とか色々やってるが尻尾を出さない。しかし最近頻繁に人身売買のやり取りをしているらしい。」
「ダンテに伝えておく。」
つまり証拠を見つけろということ。久しぶりに玲一はワクワクした。マフィア絡みならマフィアの人間を潰せるからだ。玲一からしたらマフィアも自分の親戚同様『群がって弱い人間から搾取する連中』なのだ。
伝票を持って席を立つカルロ。
「俺の奢りだ。玲一頼んだぞ。」
「了解。」
カルロが店を出ていくのを見て別件を抱えているんだろうと思った後、玲一はコーヒーを飲み干した。
そして玲一とカルロの会話をコーヒーを飲みながら聞いていた黒髪で切れ長の黒曜石のような色の瞳を持つ人物がいた。その人物は口角を上げた。
ディアベルはかなり都心部の外れにあり見た目はレストランだ。その地下にディアベルの本部がある。
玲一はダンテの執務室にいたが玲一顔はムスッとさせダンテは無表情だ。
「ディアベルはマフィアを潰す組織だろ?」
「あのボンゴレの同盟ファミリーは厄介過ぎる。潜入捜査するにも危険だ。」
「だったらディアベルの意味がない!」
机をバンッと叩く玲一。ダンテは無表情のまま。
「確証がないのにメンバーを危険にさらすわけにはいかない。」
「・・・分かったよ。」
嫌味のようにドアをバンッと乱暴に閉めて玲一は執務室を出ていった。ダンテは不愉快そうに眉を寄せるだけだった。
玲一はだったら証拠を自分で見付けるまでだと調査しだした。
パソコンを使いハッキングでキアロスクーロの情報を漁るように探していく。
「資金源の表の企業は特にないか。となるとキアロスクーロの情報システムに潜るしかない。」
しかしキアロスクーロのセキュリティは強固で入り込むことが出来ない。
チッと舌打ちする玲一の携帯が鳴った。ディスプレイにはカルロと出ていた。
「もしもし。」
『玲一。どうだった?』
「頭がガチガチに固いリーダーは拒否したから独自に調べてるけどシステムが強固過ぎて入り込めない。」
頭がガチガチに固いリーダー。カルロは苦笑いした。
『そうか。一つだけこっちで分かったことがある。キアロスクーロの令嬢のデボラ・ビーニが留学生として2ヶ月前に日本に渡って並盛高校に通ってる。これどう思う?』
「成程。並盛高校にはボンゴレの後継者がいるね。カルロは別件の事件抱えてるのに調べる暇あるの?」
『ないよ。だから時間作って調べてんだよ。証拠があれば上も捜査に乗り気になるだろうからな。』
時間を作っている。多分睡眠時間を削っているんだろう。
「そう。無理はしないでね。」
カルロは玲一もなと言って携帯を切った。
玲一はデボラ・ビーニとボンゴレの後継者を調べ出したが。
「・・・これって?」
パソコンで見た小さいニュース。男性が女性に暴力を振るって逮捕されるという何処にでもありそうな内容。
「沢田綱吉が刑務所に?」
沢田綱吉はボンゴレの後継者。刑務所に入れられたならボンゴレが圧力をかけて釈放させるだろう。なのに釈放させずに1ヶ月刑務所にいる。
「どういうこと?」
玲一はディアベルの日本支部にツナのことを調べさせ、自分はデボラのことを調べていく。
デボラのしていることに玲一は吐き気がした。
キアロスクーロが所有しているデパートに入っているテナントの商品を代金を払わずに自分の物したり、弱小ファミリーの子息、令嬢に因縁をつけて金品を奪い、時には一般人を恐喝して金を奪っていた。
それだけではなく何故か転校先で毎回苛められている。そしてデボラを苛めた人間は数ヶ月後に自殺や事故死している。
「弱い人間から搾取するわ、恐喝するわ、苛めた人間のほとんどが事故死するってあり得ない。ミリアムは奇跡的に生き延びたってことか。」
大方キアロスクーロの力で事故死にしたのだろう。要するにデボラは好き勝手に動き後始末をキアロスクーロの力で片付けた。
パソコンにディアベルの日本支部からデータが入り玲一は待ってましたと言わんばかりにデータを見たが。
「沢田綱吉は男だよね?」
ツナは女性受刑者の刑務所に収容されていた。
日本支部からのデータには戸籍も出生証明書も男と記載されていると報告されている。
「沢田綱吉がデボラ・ビーニとキアロスクーロの何かしらの証拠を持ってるかもしれない。」
急いでデータをまとめてダンテの執務室に向かった。