悪魔
いつも馬鹿なことばかりして困らせた自分。
そんな自分を守ってくれていたカルロ。
玲一はダンテを真っ直ぐ見た。
「その組織って警察にも協力出来る?」
その言葉は出来るならカルロへの恩返しになるかもしれないと思って出た言葉。
ダンテは内心まだ子供な部分があると感じた。普通なら「脅迫だ!」とか言うものだ。だがその子供の部分を利用した。
(子供の部分が残ってるからこそカルロの後を付けては犯人を取っ捕まえて面白がっているのだが。)
「敵対することもあるがマフィア関連ならほぼ毎回味方になる。」
マフィアを潰す為に立ち上げた組織。つまりカルロの味方になる確率の方が高い。
「その話乗るよ。」
「そうか。雲雀丘玲一君。今日からディアベルのメンバーだ。」
その日の夜中のマンションの一室ーーー
カルロは目を見開いて口はガゴーンと外れてしまうのではないかというくらいに開いた。
目の前にはリビングで何故か幼馴染みと同居人がコーヒーを飲んでいる。カルロは推測も察知も出来ない。
呆然としているカルロに玲一は何もなかったかのようにお帰りと声をかけ、ダンテは久しぶりだなと言った。
「いやいや、そうじゃないだろう!何でお前がここに居るんだ!?玲一、どういうことだ!?」
パニックになっているカルロは玲一にとりあえず座りなよと促された。
コーヒーを出され落ち着いたカルロはどういうことなんだと口を開いた。
「ダンテ。用があるなら直接俺に連絡したらいいだろう?警察官の家に犯罪者みたいなお前が来てどうする?お前の組織なんて警察から見たら犯罪者集団だ。」
しかも寛ぎやがってと毒づくカルロにダンテは口に笑みを乗せた。
「確かに俺は犯罪者だがカルロの同居人も強盗暴行罪の犯罪者だ。」
「っ!?」
ダンテに言われて言葉が詰まるカルロ。ダンテは続ける。
「ディアベルの情報網はカルロは良く知っているだろう?我々の情報で君達はマフィアを捕まえられる。いくら君が隠蔽しても玲一君の過去など直ぐに調べられる。」
平然と言うダンテを睨み付けるが玲一の過去を人質のようにするくらいだ。用件を聞いた方が早い。
「何が目的だ?」
「玲一君は明日からディアベルの正式メンバーになる。一応保護者の君に話しておこうと思ってな。」
「玲一!」
驚きを隠せないカルロは玲一の顔を見る。玲一は頷いた。
「ちょっと待て!玲一分かってるのか?ディアベルは犯罪者の集団みたいな組織なんだぞ!」
玲一はもう決めていた。カルロを見て少しだけ困った顔をした。
「分かっているよ。それにダンテが言ったんだ。普通に就職したって過去がバレたらクビなる。日本に帰って就職しても同じだって。」
「ダンテ!!」
「本当のことだろう。」
「クッ!」
玲一の親戚が悪い。だが企業はそうは見ない。過去が知れれば企業は「犯罪者」として切り捨てるだろう。玲一の事情よりそのことが明るみに出て世間に犯罪者を雇用していると知れたら企業はダメージを食らう。
ダンテの言っていることは当たっている。カルロは忌々しそうにダンテを見る。玲一を犯罪組織に入れさせたくはない。
今にもダンテに殴りかかりそうなカルロに玲一は静に言った。
「俺はカルロに恩返ししたいんだ。ディアベルはマフィアを撲滅させるための組織。警察官のカルロや同僚にはマフィアの情報は必要だよね。だから俺はディアベルに入るよ。」
もう決めたと初めて会った日と同じ意思の強い目で言う玲一にカルロはため息した。
玲一は決めたらそう簡単には曲げない。証拠にいくら叱ってもカルロの後を付けて犯人を捕まえたりしていたし、徒党を組んで弱い人間を痛めつける人間を問答無用で殴り飛ばしていたのだ。
「分かった。玲一が決めたなら仕方ない。」
元々言うことを聞かない玲一だ。カルロは子離れの時期が来たんだと言い聞かせた。
「最後まで困らせてゴメン。」
玲一に謝られてカルロは「全くだ。」と軽く小突いた。
翌日ーーー
必要最低限の荷物を持って玲一は靴を履いた。
「昼食と夕食は冷蔵庫に入れてあるから。」
「サンキューな。」
玲一はカルロに向き合った。
「いままで本当にお世話になりました。」
頭を下げる玲一にカルロは頭をポンポンと叩く。
「気にするな。ディアベルが嫌になったら帰ってこい。玲一の家はここだ。」
「ありがと。それじゃ俺行くから。」
玲一は笑顔を見せて家を出た。
玲一と暮らして色々あったなと思い出してカルロはソファーに座った。
「明日からはコンビニと外食か。」
カルロはどこか寂しそうに呟いた。