悪魔


ソフィアの部屋ではクッキーを食べながら報告書を書いているツナとソフィアがいた。

「終わった!」

「お疲れ様。今回の任務はこれで完了よ。」

一足先に終えていたソフィアはノンカフェインの紅茶を淹れてツナに渡す。

「ありがとう。もう日付が変わってるね。」

「本当ね。今日はオフになるからゆっくり休んで。」

「ソフィアもね。」


紅茶を飲んでソフィアの部屋を出て行き自室に向かうと雲雀が立っていた。

「お疲れ小動物。」

「雲雀さんもお疲れ様でした。あのーーー」

ツナの言葉を雲雀は遮った。

「草食動物達はディアベルで保護する形になったよ。言い方を変えれば軟禁だね。」

「な、軟禁!?」

驚くツナ。雲雀は説明を始めた。

「牝豚とキアロスクーロは血眼になって草食動物達を探して殺すと思う。それに草食動物達が今の君のことをボンゴレとキアロスクーロに話せばディアベルは動きにくくなる。」

「・・・そうですよね。でもここにいれば京子ちゃんとハルはとりあえず無事なんですよね。良かった。」

京子とハルが置かれた状況を思えばディアベルにいた方が安全だとツナは安心した。雲雀は相変わらず処断が甘いツナに少しだけ苛立ったが顔には出さないようにした。

「良かったって・・・。あの草食動物達のせいで君は酷い目にあったんだよ。」

「京子ちゃんもハルも騙されてただけですし。」

「でも暴言吐かれたんでしょ?」

「それはそうですけど。暴力は振るってこなかったですから。」

「・・・そこなの?」

雲雀は身体だけじゃなく心も傷つけられたんじゃないのかと言いたいところだ。

「忠告しておくけど草食動物達に会っても良いことはないよ。あの草食動物達は君と再会してもただの一つも謝罪の言葉がないからね。」

「でも、今の状況で謝罪なんて考える余裕なんてないんじゃないでしょうか?」

眉を八の字にして言うツナに雲雀はため息混じりに言った。

「君が何を思うのかは君の自由だ。でも見極めることを忘れるな。良いね?」

関係を再構築出来るか出来ないか見極めろと言って雲雀はディアベルを後にした。

ツナはけりをつけないといけないんだと悟り京子とハルの部屋に向かったが。

「あれ?クローム?何でそこに?」

クロームが京子とハルの部屋のドアの前に立っていた。

「ボス?休まなくて良いの?」

クロームはツナの身体を気遣いツナもクロームを気遣った。

「クロームは休まないの?」

「私は任務中なの。」

「任務中!?でも今日はオフだよね?」

ディアベルは基本的に任務を終えたらオフになる。ツナは任務明けのクロームに新たな任務が与えられたのかと驚いた。

「でも何の任務?そこは京子ちゃんとハルの部屋だよね?」

「私は笹川京子と三浦ハルの見張り。ボスには悪いけど二人には会わせられないの。」

「え?」

「私の任務は見張りとボスを笹川京子と三浦ハルに会わせないこと。これはダンテさんの命令なの。でも私的にも会わせたくない。だってあの人達騙されたのを知ってもボスの謝罪の言葉は無かった。本当に悪かったと思うならボスがいなくても謝罪する筈。でも口にしたのは自分と大切な人間の安全の確保だけだった。」

「・・・・・・。」

クロームの話にツナは悲しそうに俯いた。

『雲雀さんが言っていたのはこの事なのかな?でも京子ちゃんとハルの心情は不安定だし・・・話はしたい。』

ツナは疑問があった。
何故オークションに出ていたのか?そんなことをしてリボーン達に知られたらデボラは破滅だ。それなのに彼女達はオークション会場に居た。

「でも何でオークションに出ていたのかが知りたい。」

クロームはツナに問う。

「それはディアベルとして情報を得るため?それともあの人達は騙されていたから無罪だと思っているの?それとも同情?」

「それは・・・。」

ツナも正直何をしたいのか分からない。でももし出来るなら和解したいとは思っている。クロームはツナの考えを見透かした。

『和解とかは無理だと思う。あの人達は自分のことしか考えないから。』

「とにかくダンテさんの指示だから二人には会わせられない。」

「・・・分かった。クロームも任務明けだから無理はしないでね。」

ツナはそう言うと踵を返した。クロームはツナを何とかしなきゃ!と考え始めた。


ーーーー

ツナは自室に戻るとベッドで横になった。


デボラの嘘を真に受けた家族と家庭教師と友人と先輩。

デボラの嘘を見抜いた子供達。

自分を信じてくれるクローム。

同じ苦しみを味わったミリアム。

元マフィアということで苦悩しつつも優しくしてくれるソフィア。

ディアベルのメンバーとして対等に接してくれる玲一。

局面でいつも助けて貰って見守ってくれる雲雀。

『母さんやリボーン達より大事なのは雲雀さん達だ。でももしかしたら新しい関係を築けるかも知れない。』

でも超直感は〈新しい関係にはなれない〉と知らせてきて。

ツナは起き上がり呟いた。

「俺、どうしたいんだろう?本当は分かってるのに。」


リボーン達とは違う場所にいること。

リボーン達とは考え方が違うこと。

リボーン達は自分を裏切った。


ツナは迷っていた。


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