悪魔
ディアベル本部に着くと京子とハルはバンから出てクロームと雲雀、ミリアム、玲一に連れられて本部に向かっていく。それを車の窓から見ていたツナは慌ててドアを開けた。
「京子ちゃん!ハル!」
ツナの声に二人は振り向いた。
「ツナ君!」
「ツナさん!」
クローム達はその時のツナの顔を見てまずいと思った。
ツナの表情は京子とハルを心配していてクロームとミリアムは急いで京子とハルを本部の中に連れて行き、ソフィアはツナに話しかけた。
「あの二人は暫くはダンテに色々聞かれると思うから私達は報告書を書いておいた方が良いわ。私の部屋にクッキーがあるから食べながら書きましょう。ね?」
「・・・うん。」
ソフィアは吹っ切れていない以上ツナに京子とハルを会わせなくなかった。
もし京子とハルが説得に掛かったらツナは簡単に落款してしまう。そうなればディアベルの存在がボンゴレに知られるだろう。そうなればディアベルは動きにくくなる。
それだけではない。今のボンゴレはツナの血筋と性別を骨の髄までしゃぶり尽くそうと動く筈だ。
ツナと京子とハルを会わせるわけにはいかない。ソフィアはそう思った。
ダンテの執務室ーーー
ダンテはクローム達に労いの言葉をかけるとミリアムが京子とハルをダンテの前に出した。
「笹川京子と三浦ハルよ。」
ダンテの前に立った京子と顔色が悪い。雲雀とクローム、ミリアムが二人を睨み付けていたからだ。
「君達がボンゴレの関係者の笹川京子さんと三浦ハルさんで間違いないな?」
力なく頷く京子とハルにダンテは尋問した。
「君達は何故オークションに出ていた?」
「デボラちゃんに・・・・・・。」
「ハルと京子ちゃんは用済みだって言われて・・・・・・。」
「用済みと見なされてオークションで売り飛ばされそうになったわけだな。」
「「はい・・・・・・。」」
ダンテは尋問を続ける。
「どんな些細なことでもいい。ボンゴレもしくはキアロスクーロの悪事を暴けるようなことを知らないか?」
京子とハルは記憶を辿る。
「・・・そういえば。」
「あ、もしかして・・・・・・。」
何かを思い出した京子とハルは話した。
「あの、デボラちゃんの部屋に水晶で出来たイルカの像があって綺麗だから触ろうとしたら物凄い勢いでデボラちゃんに止められたことがあったんです。」
「あの時のデボラちゃんは凄く怖かったです。」
ダンテと玲一はおそらくイルカの像は隠し部屋の扉のスイッチだろうと推測した。
「他に知っていることはあるか?」
「いいえ。」
「ハルも他に知ってることはないです。」
他に知っていることはないと京子とハルが言うとクロームとミリアムはこれ見よがしに溜め息を吐いた。
「ボンゴレにいてキアロスクーロにも行っていたのに大した情報を持ってないなんて。」
「くたびれただけだったわ。あのまま置いてくれば良かったかなー。」
「そんな!?」
「酷いです!」
京子とハルに嫌味を浴びせるクロームとミリアム。玲一はクロームとミリアムを宥める。
「二人の気持ち分かるけど彼女達は一般人の括りだ。多分知らされてなかったんだよ。それよりこれから笹川京子と三浦ハルの身柄はどうなるの?」
ダンテは淡々と答えた。
「彼女らは我々ディアベルが預かることになった。」
「どういうこと?」
「カルロの提案だ。下手に警察で保護したら少なくともキアロスクーロは彼女達を取り戻そうとするだろう。笹川京子と三浦ハルはキアロスクーロがしていることを知ったからな。」
「まあ、警察も中にはマフィアと繋がってる奴もいるからソイツが手を回して笹川京子と三浦ハルの身柄をキアロスクーロに渡す可能性はあるね。」
「そういうことだ。悪いが笹川京子と三浦ハルは我々が保護することになる。玲一とクロームとミリアムは彼女達の見張りをしろ。」
ダンテが指示を出すと京子とハルは驚いた顔をした。
「ちょっと待って!」
「保護って何ですか!?ちゃんと説明してください!!」
京子とハルに今まで黙っていた雲雀が苛立ちげに口を開いた。
「キアロスクーロは君達を探して見付けたら即殺すだろうね。仮に日本に帰国してもキアロスクーロは追手を放つと思うけど。草食動物達は逃げ切れるのかい?」
「「・・・・・・。」」
雲雀に指摘され戦う術がない京子とハルは黙りこんだ。
ダンテは京子とハルの部屋を用意させクロームとミリアムが京子とハルをその部屋に案内させた。
京子とハルに与えられた部屋は二人部屋で家具もそれなりに揃っていた。
「食事はここに運ぶから。それとディアベルから出ていかないでね。」
出ていったら殺されるだけだと告げるミリアムに京子とハルはツナと話がしたいと頼む。
「お願い。ツナ君と話がしたいの!」
「お願いします!」
頼む二人にクロームとミリアムは嫌な顔をした。
「ツナと?何で?」
「ボスと話すって暴言でも吐くつもりなの?」
「そんなことしないよ!」
「何でツナさんに暴言を吐くと思うんですか!?」
クロームは嘲るように返した。
「いなくなればいいとか最低な人間とか散々吐いてたじゃない。」
「そ、それは・・・。」
「でもハルと京子ちゃんは騙されていて・・・。」
言い訳をする京子とハルにクロームとミリアムは呆れ返り、蔑視した。
「騙された?違うでしょ?ビーニの話しか聞かないで制裁まがいなことをしてツナを更正させてるんだって酔ってたんでしょ?そんな奴に大事な親友を会わせたくないわ!」
「貴女達は自分のことしか考えてない。だからボスには会わせない。どうせここから出せとかボンゴレに帰ってとかボスに言うから。」
そう言うとクロームとミリアムは部屋から出ていく。京子とハルはクロームを呼び止めた。
「クロームちゃん待って!」
「暴言なんて吐きません!だから!!」
クロームは振り向かず歩きながら行った。
「貴女達もアルコバレーノも嵐の人達もボンゴレも散々ボスの心を無視してあっさり裏切ったのに暴言なんて吐きません?嘘ばかりね。だってーーー」
だって貴女達はボスに謝罪したいなんて思ってない。
最後の方の言葉は京子とハルは聞き取れず聞き返すがクロームはドアを閉めることで返した。