悪魔
玲一が待っている場所に着くまでの間、京子とハルはツナに何か言おうとするがクロームとミリアムが睨み付け黙らせていた。ツナはそんなクロームとミリアムにおろおろしていた。
セダンが一台、バンが一台が待機していた。
バンから雲雀が出てきた。
「お疲れ小動物・・・!?」
あられもない格好の姿のツナに雲雀は赤面しながらも眉間に皺を寄せてジャケットを渡す。
「小動物これを着な! 」
「は、はい!!!」
顔を真っ赤にして眉を寄せている雲雀を見てツナは雲雀が怒り狂っていると思い込み今の格好は風紀を乱しているんだと慌てて着た。実際とんでもない格好なのだが。
雲雀は一体どんなオークションだと怒りを顕にしていた。ヤルートがいたら血まみれの肉の塊になるまで咬み殺していただろう。
ジャケットを着たツナは京子とハルに何があったのか聞こうとしたが雲雀がビシッともう一台の自動車に指差した。
「あの車にソフィアが待機してるから小動物はあっちに乗って!」
「でも俺、京子ちゃんとハルに聞きたいことが。」
「そんな格好でうろつかれたら風紀が乱れるんだ!さっさと乗りな!」
不機嫌な顔をしている雲雀を見てツナは猛ダッシュでソフィアのいるセダンに乗った。
ソフィアが待機している自動車にツナが乗るのを見届けると雲雀はバンに乗り込みクロームとミリアムは京子とハルを押し込むように乗せた。
クロームとミリアムが乗ると待機していた玲一がワンピースと靴を手渡した。
「二人共凄い格好だね。」
クロームとミリアムはヤルートの文句を言いながらワンピースと靴を受け取り衣装の上から着た。
「あの変態撃ち殺しそうになったわ!」
「蔦で首締めそうになった。」
罵倒するクロームとミリアム。
玲一はキアロスクーロと繋がっているだろうヤルートをクロームとミリアムが殺さずに済んで良かったと思った。
雲雀は京子とハルを嘲笑った。
「沢田をあっさり裏切って牝豚についたあげく売り飛ばされそうになるなんて笑えるね。」
京子とハルは自分達は騙された、被害者だと言おうとしたが雲雀の顔を見て硬直した。
雲雀は笑っているが目は笑っていない。京子とハルを睨み付けていた。
着替えたクロームは汚物を見るような目をしていてミリアムは過去に自分を裏切った恋人と友人と同じ人種だと蔑視している。玲一は京子とハルにも洋服を用意すると運転席に着いた。
クロームは玲一に渡された洋服を見てため息まじりに京子とハルの拘束を解いた。
「早く着て。」
手渡された京子とハルはクロームにどうしてここにいるのかと聞いたがクロームは口をききたくないとばかりに無言。雲雀とミリアムを見るが睨み付けられて京子とハルは居心地が悪い中渡された洋服を着た。
ーーーー
後部座席で着替えたツナは助手席に移動してソフィアに被害者の女性達のことを聞いた。
「ソフィア、あの人達は?」
「警察が保護して一足先にここを出たわ。」
「そう。良かった。・・・帰れる場所があるって良いね。」
最後の方は呟くように言ったツナ。ソフィアはなんとも言えない顔をしたがツナの頭を肩に抱き寄せて「今ツナの帰る場所はクロームや私達がいるディアベルよ。」と慰めるように言ってツナは頷いた。
暫くして気持ちが落ち着いたツナは気になっていたことを聞いた。
「そう言えばソフィアは知ってたの?」
「笹川京子と三浦ハルのこと?知ってたわ。正確にはツナ以外のメンバーは知っていた。」
「え?」
「オークションのことはクロームが六道骸から得た情報なの。その時デボラ・ビーニが笹川京子と三浦ハルを売りに出せと指示を出した情報もね。そしてダンテの判断でツナには内密で動いていた。」
「・・・そっか。内密にしてたのは何と無く分かるかな。ダンテさん俺がまだ吹っ切れてないこと知ってるし。」
だがツナは何でデボラが京子とハルを売り飛ばそうとしたんだろうと不思議に思った。
京子は了平の妹。
ハルは獄寺の喧嘩友達。
どちらも手荒く扱っていい存在ではない筈。ましてや売り飛ばすなんてもっての他。
「何で売り飛ばしたんだろう?京子ちゃんはお兄さんの妹だしハルは獄寺君の友達。それにビーニさんと仲良かったのに。」
友人が友人を売り飛ばすのか?と考えているとソフィアは話した。
「普通なら友人が友人を売り飛ばすなんてないと思うわ。ミリアムとクロームの話だとデボラ・ビーニは自己中心的でかなりの男好きって話よね。おそらくデボラ・ビーニは笹川京子と三浦ハルが邪魔もしくは用済みになったから排除にかかった。」
「そんな!ビーニさんは騙してまで友人になったのに!?」
獄寺達を騙してまでボンゴレ10代目の座にいるのに用が無くなったら排除するなんてとツナはデボラを軽蔑した。
ソフィアはこれには不安を抱いた。
『ツナはまだどこかでアルコバレーノや守護者達とやり直せると思っている。それが全てを包み込む大空の特徴とはいえ今のボンゴレはツナを初代直系の血筋としか見ていない可能性が高い。もしツナがボンゴレに戻ったら利用されるだけ。』
ソフィアはツナがボンゴレに戻ることを望まないように祈った。そしてそうさせないようにしようと考え出した。