悪魔
見て回る玲一は一番端の監禁部屋で京子とハルを見つけた。
京子とハルの他にも数人の女性がいた。
『あの子達か。』
幸いナチュラル系のメイクだったおかげで割りとすぐに分かった。
監禁部屋の奥で膝を抱えている京子とハル。精神的にかなりきているのか頬がやや痩せていて目のクマがあり絶望した顔をしていた。だが玲一は冷笑した。
『たった数日でそんなになっちゃうの?ツナは無実なのに1ヶ月以上刑務所に居たんだよ?』
デボラに付いてツナを孤立させるのに一役買いツナを罵倒し嘘を流して居場所を奪った。玲一にとって京子とハルもまた『弱者から搾取する連中』と認識していた。
玲一がツナ達が居る監禁部屋に戻ると潜入したディアベルメンバーが食事を配っていたが。
「これがここの食事なの?」
「これだけ?」
「そうみたい。」
配られたのはシリアルバー1本と水。配ったディアベルメンバーはそうなんだよと話した。
「俺達もそれには驚いたよ。商品の女性に粗末な物を食わせてるんだから。体調不良になったら値が下がるだろうに。」
「売れればいいんだろうな。ヤルートは経営者としては向いてないね。」
「それ以前に人身売買は犯罪だよ。」
そう言うとメンバー達は他の監禁部屋にも食事を配りに行った。
オークション当日ーーー
監禁部屋にヤルートの部下が適当に衣装を渡しに来た。
「お前達この服に着替えておけ。着替えなかった場合は射殺する。」
ツナ達にも配られ衣装を見たが3人は固まった。
「嘘でしょ?」
ひきつった顔をするミリアム。
「ヤルートって・・・変態なのね。」
顔を青くさせたクローム。
「俺こんなの着たくないよ!」
泣き声まじりのツナ。
渡された衣装は布地がとにかく少ない。
しかし着用しなくては任務にならない。ツナ達は泣く泣く衣装を着た。
さすがにツナ達の着替えを見るわけにはいかないと玲一は一旦事務所と監禁部屋を繋ぐ通路で待機して作戦の反復をしていた。
『ヤルートはオークション前に女達をヤルートの部屋に集めて品定めしつつ楽しむからそこをつくのがツナ達だ。ツナ達がヤルートを捕獲してミリアムが連絡してきたらソフィアが部隊を率いて女達を保護。カルロと警察はオークション会場にいる客を一斉に逮捕。逃げ回る客は戦闘力が高い恭弥が咬み殺すんだっけ。』
「今回大変なのはツナ達か。」
自分と一緒に潜入した男性のメンバー達は被害者達の確認とソフィアを誘導するくらいだ。
玲一は男性のメンバー達と共に事務所に移動した。
一番端の監禁部屋(京子とハルが居る監禁部屋)の女性達から順にヤルートの部屋に連行された。
ヤルートの部屋は派手な照明器具が天井に設置され部屋全体がけばけばしい色で彩られていた。部屋には壇場があり奥にはキングサイズより大きいベッドがありその上にヤルートがドカッと乗っかっていた。
連れてこられた京子とハル、女性達はベッドの上に乗っかっている太っていて顔が脂ぎったヤルートを見て嫌悪した。
「ヒヒ、良いね良いねー。今回は上玉が多いね!」
嫌悪されていることに気にせずに舐め回すように見るヤルートは壇上に乗るように指示を出した。
「さあ商品達の値段を付けなくちゃいけないからねー。壇上に上がりな。拒否したら撃ち殺すからねー。」
おどけるように言うヤルートは拳銃をちらつかせて脅した。
京子とハル、女性達は壇上に上るしかなかった。
「素直な商品は良いね♪良いね♪そこの女は30万スタートね。あの金髪は体は良いけど顔がイマイチだから25万スタートね。」
次々と値段を付けていくヤルート、値段を記録する部下。
ヤルートは面白そうに値段を付けていくと京子とハルが目に入った。
「おやおやおや~?イタリア人じゃない子がいるねー。日本人かな?若いし肌も白くて良いね♪黒髪の子は60万スタートで隣のかわいこちゃんは70万スタートね!この子達はかなり競り上がるよー。」
「ッ~!?」
「っ!?」
自分自身に値段を付けられた京子とハルは惨めで悔し涙を堪えていた。
他の監禁部屋から連れられた女性達にもヤルートは愉しそうに値段を付けていく。
「さて次の部屋の商品で最後かな?」
ヤルートの部下に連れられ入ってきた女性達を見てヤルートはヒヒヒッと笑い、京子とハルは目を大きく見開いた。
入ってきたのはツナとクロームとミリアムだった。