悪魔


玲一がマリオ達を叩きのめして一週間後、カルロはある連続放火の事件を担当していた。

帰宅し玲一の作った夜食を食べながら地図を広げた。

「最初が此所で次は此所、その次は此所、更に次は此所ーーーー。」

玲一は地図を広げ確認中のカルロの後ろで気配を消して地図を見ていた。


翌日ーーー

「張り込むんでしょ。軽食作ったから持っていって。それじゃ学校に行ってくるから。」

「サンキュー。気を付けろよ。」

玲一は家事が得意だった。と言うより親戚にコキ使われていて料理、洗濯、掃除等なんでも出来た。だから家事は玲一の役目だった。
カルロは玲一を見送ってから張り込みする場所に向かった。



学校から帰ってきた玲一は小さい溜め息をした。

「忘れていっちゃたか。仕方ない。」

玲一はカルロが張り込みしている場所に行った。


物影に潜んでいるカルロと同僚。

「あ、やべぇ。軽食忘れてきた。玲一怒るかなー。」

頬をポリポリ指でかくカルロ。同僚は苦い笑いをした。


「別に怒ってないよ。はいこれ。」

「おー、サンキュー・・・って玲一!?」

ちょこんと隣に座る玲一に何でここが分かったと小声で言うカルロ。同僚は目を点にした。

「地図を見てここだって分かったから。放火されてる場所ってばらばらに見えるけど線を引いてくと星の形になるから次はここだって思ったんだ。」

「いつ地図を見てたんだ?」

「昨日カルロの後ろで。」

「昨日って玲一の気配感じなったぞ。」

「気配消すのは得意。じゃないと奇襲かけて親戚共をボコれないでしょ?」

『コイツ、そんなことして親戚をボコったのか。』

冷や汗をかくカルロ。同僚はまだまだ子供なのに推測力が凄いと驚いた。(後日玲一が13才だと知って別の意味で驚いた。9才くらいに見えていて、アジア人は若く見えるのは本当なんだと苦笑いしたらしい。)

「星形になるように放火するから愉快犯?それともそう見せかけて怨恨?」

どんな犯人か興味があるとワクワクしている玲一は逮捕してみたいと言い出しカルロは遊びじゃないから帰れと追い返した。


だがその後も犯人を当てたり、気配を消してカルロの近くにいてカルロが動いたら玲一も動いて犯人に向かって飛び蹴りして捕まえたりと色々やらかした。
その度にカルロは玲一の頭を叩き、バレた時はカルロが上司に子供を巻き込むなと叱られていた。

そして玲一は警察や近所で『捕まえたがりの日本人』と言われていた。

気の良い同僚達は玲一を警官にしろとカルロに言っていた。

「なぁなぁ、カルロの同居人にさ将来は警官になれって言っとけよ。」

「玲一君だっけ?ここに勤務させなよ。」

「玲一がやりたがったらな。」


同僚達は玲一を2~3回くらいしか会ってないからそう言って来るが一緒に暮らしているカルロは玲一は警官には向いてないと思った。最初は向いていそうだと思ったが、協調性がない。警察はチームワークも重要だし規則もある。チームワーク?規則?それって美味しいの?な玲一には不向きな職業だ。


「玲一は個人探偵辺りが似合いそうだ。」

カルロは小さく呟いた。



学校では相変わらず徒党を組んで弱者から搾取したり暴力を振るう連中を叩き潰し、女子には興味がないと告白を断っていた玲一。
偶然告白される現場を見てしまったカルロはもう少し優しく断れないものかねと呆れていた。


数年後ーーー

大学に通っていた玲一も後1年で卒業だ。就職を考えなくてはいけない。
玲一はどんな職業に就こうかと夕飯の食材の買い出しをしながら考えていた。そんな時、ある男に声をかけられた。

「雲雀丘玲一君だね?」

「・・・そうだけど貴方は?」

訝しげに見る玲一に男は笑って見せた。

「俺はダンテ・ランベルティ。君の同居人のカルロの友人だ。」

「何か用でも?カルロは今日も帰りは遅くなると思うけど。」

「いや、君に用があるんだ。ちょっと良いかな?」

ダンテは向かいにある喫茶店を指で差す。玲一は暫し考えた。

『カルロの友人という確証はないけどダンテとかいう男は隙がない。やはり警察官か何かか?』

「・・・カルロの友人ね。良いよ。あの喫茶店はコーヒーが美味いんだ。」

「俺もあの喫茶店のコーヒーは好きだ。」


二人は喫茶店に入りコーヒーを注文した。


「俺に用があるって何?」

「君の話や噂は聞いている。捕まえたがりの日本人だって?そんな君をスカウトしに来たんだ。」

「スカウト?」

胡散臭い。玲一はそう思い席を立つが素早く腕を捕まれた。

「最後まで聞いてくれ。」

「・・・聞くけどスカウトを受けるかは俺が決めるから。」

玲一は席に着くとダンテは話を続けた。

「俺は10年前までは警察官だったが辞めてある組織を作った。その組織に君をスカウトしたい。」

「組織?」

「秘密結社だ。マフィアを潰す為に作った。」

「マフィアを潰すなら警察官でも出来るんじゃ?なのに何でわざわざ作ったの?」

ダンテはコーヒーを一口飲み話を続ける。

「警察は規則規律があって動きにくいんだよ。何やるにも時間がかかる。就職を考えているんだろう?だが君は過去に強盗罪を犯してる。そうだろう?」

「・・・・・・。」

親戚のことを言っているんだと玲一は思い驚いた。驚いたのはそのことを知られていることではなく何故そのことを知っているのかだ。

「カルロが動いて隠蔽したみたいだが我々の組織の情報網を甘く見てもらっては困る。日本人で強盗罪の君がイタリアで就職出来るとは思えない。出来てもバレてしまったらクビになるだろう。日本に帰っても同じことだとは思わないか?」

田舎では強盗暴行で捜査されていたがカルロが動いて隠蔽していた。
つまり玲一は奪われた物を取り返しただけだがあの田舎では強盗暴行罪として見られている。それは分かっていたが玲一はカルロが動いていたことを初めて知った。


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