悪魔


見舞いと称して玲一が病室に入ってきた。
椅子に座ると頭と右足と両手に包帯、左目には眼帯をしているソフィアに玲一はまたかと一部のメンバーに呆れるしかない。嫌がらせでソフィアに怪我を追わせても彼女の過去は消えない。

「・・・またやられたわけ?」

「ええ。いつものことよ。」

玲一はそのことにはたいして触れない。これはソフィアが考え解決するしかないからだ。

「もうすぐ退院だよね。ソフィアに任務が入ったよ。」

「今回はどんな任務?」

「ロッソファミリーの殲滅。今回は絶対じゃない。任意だ。」

任務を受けるのも受けないのもソフィアの自由だと淡々と言う玲一。ソフィアは「そう。」と答えた。

『ついにこの時が来たのね。兄は元から反りが合わなくて嫌いだったけど父と母は差ほど嫌いではなかったわね。・・・濡れ衣だって言ったけど信じて貰えなくて最終的に切り捨てられた。でも・・・。』

僅かに残っていた両親への情。ソフィアに迷いが出る。

「ねえ、玲一が私の立場ならどうする?」

「さあね。俺は君じゃないから分からない。自分で決めな。」

「そう簡単には答えてくれないってことかしら?」

「自分で決めないで他人の意見を聞いて行動して後悔した時に俺やダンテのせいにされても困る。少し時間があるんだ、後悔しないように考えなよ。」

「・・・そうね。」

「それじゃ帰るよ。」

玲一は立ち上がり病室のドアを開けるとソフィアに振り向かずに言った。

「俺は親戚をボコって家を出て最終的にディアベルにいる。親戚をボコったこともディアベルに入ったことも俺の意思だ。後悔してないよ。」

そう言うと玲一は病室を出て行った。

ソフィアはまだまだ自分は甘いと感じ横になった。

「ディアベルで生きていくことを選んだんじゃない。ディアベルはマフィアを撲滅する組織。それにロッソがある限り罪のない人達が犠牲になり続けるわ。」

ソフィアは退院すると任務を受けるとダンテに伝えた。


あちこちから出る煙。瓦礫と化したロッソファミリーの本部。少し前まで聞こえていた怒号や悲鳴、呻き声、爆音、銃声は今は聞こえない。

本部を制圧する部隊にいたソフィアは警察に連行される兄と両親に怨みの言葉を投げ付けられた。

「てめぇは本当の裏切者だ!!」

「行方を眩ましたと思ったらディアベルにいたとはな!この恩知らずが!」

「何でお前なんか生んだのかしら!お前のおかげで私達は!!」

罵られたソフィアは両親に残っていた情が消え連行される両親と兄を一瞥すると部隊に戻った。


ロッソファミリーを潰してもソフィアの状況は相変わらずで一部のメンバーには嫌われていたがソフィアが実績を積むと嫌っていたメンバーの中にソフィアを認める者も出てきた。そんな中ある少女がディアベル入りした。


「ミリアム・ブランディです。よろしく。」

簡単に自己紹介を済ましたミリアムはキアロスクーロを潰すと公言して玲一とソフィアが鍛えることなった。

ミリアムは元とはいえソフィアが嫌いだった。デボラのように優しいふりをして陥れる人間だと思っていた。

戦闘訓練や情報技術等ソフィアが担当の時はサボり悪態をつく。

そんな状態で任務がソフィアとミリアムに入った。

任務自体は問題なく終わったが帰還する時に事故が起きた。

「玲一達が待機している場所までは歩きになるわ。」

「・・・了解。」

山奥にあった実験施設を潜入してデータを入手したソフィアとミリアムは夜中施設を出て山道を歩いていた。

「あっ!?」

足を踏み外したミリアム。ソフィアはミリアムの腕を掴んだが一緒に転がりながら落ちていった。


「ミリアム大丈夫?」

「大丈夫ーーー痛っ!」

立ち上がろうとするミリアムは左足に激痛が走り座り込んだ。
ソフィアはミリアムの足を触る。

「ちょっと痛い!触んないで!!」

「骨にヒビが入ってるかもしれないわ!!」

ヒビが入ってると言われてミリアムは顔色を青くさせた。ソフィアは上を見ると落ちた場所から5メートルほど落ちたと検討をつけた。

「今玲一に連絡入れるから。」

ソフィアはミリアムを安心させるように言って連絡を入れるが繋がらない。

「電波が入らない!」

「えっ!?」

ソフィアは暫し考えるとミリアムをおぶさって登るしかないと決断した。

「ちょっと何考えてるのよ!」

幸いこの辺りには太めの蔦がありその蔦を何本も使って絡ませて更に太くした。そしてその蔦を使ってミリアムをソフィアの体におぶさるような姿勢にさせた。

「私がミリアムをおぶさって登るしかないから少しの間我慢して。」

「馬鹿じゃないの!?あんただけ登って助けを呼んでくれば良いじゃん!」

「この山は潜入していた施設のテリトリーよ!その足で何かあったら殺されるわ!」

ソフィアはミリアムの足に痛みが走らないように慎重に登る。

「あたしはあんたなんか嫌いなんだから!降ろして!!」

ぎゃあぎゃあ喚くミリアムにソフィアは一喝した。

「私を嫌いなのは構わない。でもミリアムはキアロスクーロを潰すんでしょ?こんな山で一晩中いたら潰す前に無駄死にするだけよ!!」

「っ!?・・・。」

ミリアムは大人しくなりソフィアは何とか登りきった。


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