悪魔


突如現れた部隊に研究者達は逃げ回り警備として施設にいたグリージョファミリーの構成員達は突入部隊と攻防を繰り広げた。

突入部隊に倒され又は拘束される構成員達と研究者達。

突入部隊の隊長が玲一に連絡を入れた。

〈グリージョファミリーの構成員達と研究者達を捕獲!被害者が収容されていると思われるフロアを発見しました!〉

〈了解。これから俺達救助部隊が突入するからフロアのロックを解除して。〉

〈了解!〉


玲一は連絡を切ると部隊に指示を出した。

「救助部隊A班B班共に突入する。A班は無事な被害者を救助!B班は無事ではないだろう被害者の救助!」

「「「「了解!!」」」」


突入するツナ達はB班。
ツナとクロームは【無事ではないだろう被害者】とは何だろうと首を傾げつつも施設を駆け抜けた。

玲一は突入部隊長に連絡を取る。

〈被害者のフロアはこの先か?〉

〈はい!施設のデータを調べたところ、3つのフロアがありますが手前とその次のフロアはA班、一番奥のフロアはB班が適任ですね。〉

〈了解。〉




被害者が収容されているフロアの前にたどり着くと既にロックが解除されていた。

「これからこの中に入る。手前とその次はA班が担当、一番奥はB班が担当だ。」

玲一はそう言うとフロアのドアを開けた。

最初のフロアにいた被害者達は人体実験される前で無事救助出来たが次のフロアに閉じ込められていた被害者達は体の一部を奪われていた。
片腕や片足が無い被害者達。中には両腕が無い被害者や両足が無い被害者、片方か両方の目を奪われたのか顔半分を包帯に覆われている被害者達もいた。

「え・・・・・・?」

「嘘・・・・・。」

酷い状態の被害者達を見て声を出したのはツナとクローム。
ソフィアは驚く二人に「この施設の犠牲者よ。」と話した。

「実験材料として体の一部を無理矢理奪われたのよ。」

「「!?」」

ツナとクロームは被害者達を見て茫然とする。
ソフィアはそんなツナとクロームを見て次のフロアでショックを受けるかもしれないと思った。

2つ目のフロアを見て玲一はカルロに連絡を入れた。

〈カルロ!被害者達は救助出来たけど自力で動けない被害者達が50人いるから担架の用意して!〉

〈分かった!〉


カルロは警察の小隊を引き連れて救助にかかった。


救助が粗方終わるとカルロは自分が持ちかけた話だから最後まで見届ける義務があると警察の小隊に撤退を命じてカルロだけツナ達と合流した。
奥のフロアに足を踏み入れると「あー、玲一の奴早くも見せたのか。」とツナとクローム見て思った。

既に奥のフロアに入っていたツナとクロームは牢屋のような所に押し込められた人達を見て声が出なかった。

体の一部が異常なまでに膨れ上がった被害者、全身を鱗に覆われた被害者、触手のような物がある被害者、全身が変色している被害者、葉のような物が生えている被害者がいてその殆どが正気を失い呻き声や奇声を上げていた。

愕然とするツナとクロームに玲一は話し出した。

「目を逸らさないで。これがグリージョファミリーの実態さ。こういったファミリーを潰すのもディアベルだよ。」

ツナとクロームは何とか口を開く。

「玲一さん。この人達は治りますか?」

「治療法とかあるの?」

玲一は首を横に振ったことで答えた。

「そんな・・・!」

「この人達は何も悪くないのに!」

治療法がない。それならどうなるのか。ツナとクロームは嫌な予感しかしなかった。
ソフィアは一歩前に出た。

「こうなってしまっては今の医学では無理なの。」

ツナとクロームに言うとソフィアは拳銃を抜いた。

「ソフィアまさか!?」

「待って!」

止めに入るツナとクローム。そんな二人を見てミリアムは宥めるように言う。

「ツナとクロームの気持ちは分かるよ。でも正気を失っていて治療法が無いこの人達はどうやって生きていくの?」

ツナとクロームは黙った。確かに生きていく能力がなく、引き取り手もない。そんな彼等を救う手立てはない。暫しの沈黙の後牢屋の方から声が聞こえてきた。

「・・・お、願い・・・殺・・・して。もう、辛い、の・・・お・・・願い・・・。」

聞こえてきたのはかろうじて正気を保っていた被害者の声だった。その被害者は左頬は焼き爛れた痕があり体中の皮膚が黄やオレンジ、青に変色していた。

ソフィアは拳銃をその被害者に向けた。

「最後に何か言い残すことはある?」

優しく聞くソフィアに被害者はツナとクロームの方を向いた。

「助けよ・・・うとしてくれて、あ、りがとう・・・。」

ツナとクロームに言うと最後に天井を見上げて「イデア守れなくてごめんね。」と大切な人に言い残し被害者は目を閉じて死を待つ。

ソフィアと玲一とミリアム、カルロは拳銃を構える。

パーンッーーー
パーンッーーー
パーンッーーー
パーンッーーー
パーンッーーー

何度も何度も響く銃声。倒れていく被害者達。

硝煙に混じる血と肉の臭いにツナとクロームは死んでいく被害者達を見ながら吐くのを堪えるのが精一杯だった。

ーーーー

任務が終わりディアベル本部に着くとツナとクロームは雲雀に呼ばれた。

「小動物、ついでにクローム髑髏ちょっと付き合いな。」

「「??」」

雲雀は有無を言わさずツナとクロームを飲食店に連れていった。

個室に通され座ると雲雀はメニュー表を見て店員を呼んだ。

「このステーキを2つとコーヒー1つね。」

メニューを勝手に決めた雲雀にツナとクロームは「えっ?」と目を点にした。

暫くすると分厚いステーキがツナとクロームの前にドンと置かれた。

「僕の奢りだから気にせず食べな。」

食べなと言われた二人は何でメニューを勝手に決めたんだろう?と首を傾げる。それに正直あの任務の後で食欲がない。

食べないツナとクロームに雲雀は「さっさと口に入れなよ。」と少しドスの聞いた声を出し、二人は一口サイズに切って口に入れたが。

「うぇ。」

「うっ。」

吐き出そうとするツナとクロームに雲雀は出すなと言った。

「無理矢理にでも飲み込め。それが出来ないなら水を飲んで胃に流し込みな。」

ツナとクロームは何とか飲み込んだ。それを見て雲雀は軽くため息した。

「確かに殺した後の臭いは凄く酷いから食欲が出ないのも分かる。でもこの先今日みたいな任務は嫌って言う程あるよ。その度に食欲なくしても意味はない。ディアベルってそういう組織だろう?」

雲雀は二人がこうなるだろうと検討をつけていた。ツナとクロームはこのことを伝えようと雲雀が誘ったんだと分かった。

「ディアベルはマフィアを潰す組織ですよね。その俺達が食欲がないからって食べることを拒否しても意味ないですね。」

「これから先もこんな任務沢山あるわ。」

「分かったら食べきりな。」

雲雀の荒療治。
ツナとクロームは分厚いステーキを食べ始めた。


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