悪魔


翌日、共有スペースで雲雀は仏頂面をしていた。
不機嫌な雲雀にツナはハラハラしているが玲一は平然としていた。

「クローム髑髏。君はあの牝豚の守護者だろ?何で居るの?」

デボラの守護者だろうと言われて今度はクロームが仏頂面をした。

「違う。あんな人の守護者なんか辞めた。」

「辞めた?」

「骸様の指示で来たけど私は自分の意思でここに来たの。私のボスはボスだけ。」

クロームを胡散臭げに見る雲雀に玲一は言った。

「デボラ・ビーニの守護者って言葉はクロームにとってNGワードみたいだよ。」

「元だけどその肩書き大っ嫌い。」

心底嫌そうな顔をするクローム。雲雀は骸は兎も角、クロームはツナに害することはないことをわかっていた。

「まああのナッポーがいないだけマシか。」

ツナとクロームは本当に雲雀と骸は仲が悪いと思った。


ーーーー

フゥ太はアメリカのあるファミリーに居た。

「フゥ太君。これがあの栄養剤の成分結果だ。」

ファミリーのボスはしかしと顔を顰めた。

「しかしとてもじゃないが栄養剤なんて物じゃない。量を1グラム間違えただけで最悪死んでしまう代物だ。しかも服用したら成長が止まる。」

「成長?」

「成長と言っても身長等ではなくて例えば男なら変声期がこないとか女なら生理がないとかだ。」

長い間沢田家で居候していたフゥ太はツナを思い出した。

『今思うと身長は少し伸びてたけど声は変わってなかったような気がする。』


「そうですか。調べてくれてありがとうございました。」



成長が止まり、たった1グラム多いだけで死に至る可能性がある薬。

『僕の予想を越えていた。ボンゴレは何の為にツナ兄にこんなものを服用させてたの?』

ファミリーの本部を後にしたフゥ太は青空を仰ぎ見た。


ーーーー

ボンゴレ本部ではデボラはイタリアの大学に通いつつボスとしての教育を、獄寺、山本、了平も守護者としての教育を受けていた。(京子とハルも一緒にイタリアに渡っている。)

「あー!もうっ!!面倒臭い!!」

デボラはベッドに座り叫ぶように言った。

「やることも覚えることも多すぎなのよーーっ!!」

ボスとしての掌握術や交渉術、情報技術、経済学等を学び、戦闘訓練もあり、大学での課題もある。

「すぐにドンナとしてボンゴレを動かせると思ったのにーーーっ!!ダメツナを排除しない方が楽だったわーーー!!!」

てっきり直ぐドンナ・ボンゴレになれると思い込んでいたデボラは父親に言われた通りにツナの妻になった方がマシだったと喚いていた。


一方、守護者達は既に簡単な任務をこなしていて隊を率いるようになっていた。

ーーーー

クロームがディアベル入りしてからディアベルのメンバー達の中で闘技場をこっそり覗くのが流行っていた。


死ぬ気の炎を纏ったツナとミリアムが雲雀と玲一を攻撃し、クロームがツナとミリアムの援護に回る。ソフィアもまた雲雀と玲一に攻撃しつつもクロームの術を強化している。

壁や床に激突する音、あちこちにはクレーターのように穴が出来る。


「相変わらずすげえな。」

「ツナって見た目弱そうだけどめちゃくちゃ強いじゃない!」

「あ、ミリアムが消えた!」

「いや、違う。クロームの術でミリアムを消した!」

「ミリアムが雲雀に向かって行った!!」

「うわっ!玲一の蹴りが思いっきりツナの腹に決まった!痛そう!」

「ミリアムがトンファーで吹っ飛んだ!」

「ソフィアがクロームの術を強化しながら助けに行った!あの人やっぱり凄いぜ!!」

「ミリアムとツナが連携して雲雀に攻撃しにいった!」

そこはまさに戦場と化していた。
ディアベルのメンバー達は凄いと感動していたが同時に『このメンバー達とは間違ってもやり合いたくはない!!』と心底思ったらしい。


訓練が終わると雲雀はおもむろに懐からケースを出した。ケースを開けると7属性のリングが並んで入っていた。

「小動物には渡したけど一応君達にも渡しておく。」

そう言って雲雀は霧のリングをクロームとソフィアに渡した。

「ありがとう雲の人。」

「ありがたく貰っておくわ。」

「さて、問題なのは属性が分からない玲一とミリアムだね。とりあえず適当に選んではめてみて。」

試しに玲一は嵐属性のリング、ミリアムは晴のリングをはめてみた。

「はめたら自分の守りたいものや誇りを思い浮かべながらリングに集中しな。」


ミリアムは叔母夫婦が無事であること、親友のツナを中心にしたディアベルメンバーを思い浮かべる。

玲一は『群がって弱い人間から搾取する連中』を叩き潰すことをある意味誇りにしていた。


「きゃっ!?」

「!?」

ミリアムがはめたリングからは黄色の炎、玲一がはめたリングからは赤の炎が立ち上った。

大きく純度が高い炎を見てツナとクロームは暫し見とれ、ソフィアは驚いている。そんな中で雲雀は片側の唇を上げた。
玲一とミリアムが炎の注入を止めたところで雲雀は「どうやら玲一は嵐属性でミリアムは晴属性のようだね。」と話した。

「属性?」

ミリアムは属性って何?と首を傾ける。玲一は雲雀に説明を促した。

「嵐のリングは怒涛の攻撃に適している。晴のリングは回復させる能力がある。」

「嵐のリングは攻撃、晴は回復力を活性化させるってこと?」

「そんなところだよ。簡単に言えば自分をサポートするリングだと思えば良いさ。ただランクはB。ボンゴレが所有しているボンゴレギアには及ばない。あれはランクAオーバーだからね。」

「ランクAとかはないわけ?」

「簡単に言ってくれるね。滅多に見付からないんだ。見付けたら特別に格安で売るよ。」

「見付かったらダンテと商談して。」

リングの話からいつの間にか商談の話になっていく雲雀と玲一。

ミリアムは『ランクAの嵐のリングが玲一に渡ったら怖すぎる!』と恐怖し、ツナは『どうかランクAの嵐のリングが見付かりませんように!』と祈った。


44/62ページ
スキ