悪魔

マフィアだった女



夜中、人の気配がない倉庫。

ツナとミリアムはビデオカメラを片手に倉庫に忍び込んだ。

「本来はそれぞれ違う場所から撮影するんだけどツナは初めてだから同じ場所から撮影しようね。」

「うん。」

小声で話をして倉庫にある荷物の後ろに隠れる。


「コッタファミリーの人間と買い取る人間が来るまで後1時間切ったわ。」

「う、上手く撮れるかな。」

何せツナは初めての任務。緊張しかない。

「大丈夫。最初は上手くいかないことだってあるんだから。あたしも初めての任務の時は失敗したもん。 ガセネタだったら録画も何もないしね。」

ミリアムはそう言ってツナを落ち着かせたがバレたら戦うしかないと服に忍ばせている拳銃を触りながら心の中で呟き密売が行われる時間まで待った。

ツナは出来れば戦うことはしたくないと思いつつも雲雀から渡された大空のリングを指に嵌めた。


倉庫の外の方から車が止まる音がしてツナとミリアムはビデオカメラの電源を入れる。

「あたしは右側から撮るからツナは左側から撮ってね。」

「分かった。」

荷物の後ろから録画を始めた。

ガラガラと倉庫の扉が開く音がしてコッタファミリーの構成員数名が入ってきて、さらに数分後に買い取る人間が数名入ってきた。

荷物とコッタファミリーの構成員、買い取る人間達との間はかなり離れているがツナは緊張しながらビデオカメラを回す。


コッタファミリーの構成員が「ブツは持ってきた。」と鞄を出し、買い取る人間に確認させるように鞄を開ける。

「確かに。」

買い取る人間はトランクを開け金を見せる。

「成立だ。」

コッタファミリーの構成員と買い取る人間がそれぞれ受け取り買い取る人間達は早々に立ち去る。
それを見届けるとコッタファミリーの構成員達も倉庫から引き上げていった。


ツナはビデオカメラのスイッチを切ると息をハァーと吐いてミリアムもまたスイッチを切った。

「大丈夫ツナ?」

「な、何とか。撮れてるか確めないとね。」

撮れてることが分かるとミリアムは「初の任務成功じゃん!」とツナに言ってツナは「ミリアムがいたから。」と答えると二人は倉庫を後にした。




任務の報告をするとダンテは労いの言葉をツナとミリアムにかける。

「ご苦労だった。ツナ、徐々に任務のランクを上げていくからそのつもりでいろ。」

「了解!」


了解と答えたがツナは『徐々に上げていく。それは分かる。でもランクが高い任務を受けるようになる頃にはキアロスクーロとボンゴレに攻め込むことになる。それはリボーン達と刃を交えることになるんだよね。』と胸中で呟いた。


ーーーー

ダンテの執務室を出るとミリアムは「今回の任務で多少だけどお金が入るよ。」とツナに教えた。

「お金入るの!?」

驚くツナにミリアムは任務遂行したからねと話す。

「明日にでも偽名でカードを渡されると思うよ。」

「偽名なんだ。」

「大体のメンバーは偽名で発行してる筈よ。あたしも偽名で発行されたしメンバーの殆どは表社会には戻れないから。」


ディアベルのメンバーは殆どが表社会でやっていくことが出来ない人間が多い。ツナもまた表社会でやっていくにはリスクが有りすぎる。

『メンバーの人達は殆どが俺と同じで表社会には出ていけない理由があるんだった。』

改めてツナは表社会には戻れないと実感した。


「明日はオフだからアクセサリーとか買おうよ。」

「え?」

「イタリア語で買い物出来るか実戦も兼ねて出掛けよう。この前可愛いアクセサリーショップ見つけたんだ!」

ツナの洋服や下着類はある程度ソフィアが用意してくれたがアクセサリー類はなかった。

「アクセサリー・・・俺に似合うかな。」

ツナは男として生きてきて今までアクセサリーを身に付けたことがなかった。欲しがったところで奈々に止められるのはわかっていたし身に付けたのはボンゴレギアくらいだ。
それを何処と無く察したミリアム。

「似合うよツナは可愛いもの!」

「ありがとう。それじゃ明日買いに行こう。」

可愛いと言われて照れるツナ、明日が楽しみだと笑顔のミリアム。

それを偶々ダンテの執務室に向かっていた玲一が見かけて何かを思い付いたような顔をしていた。




ミリアムはベッドに入ろうとするとドアをノックする音がした。

「誰?」

「俺だけど。ちょっと良い?」

玲一の声だと分かりミリアムはドアを開ける。

「玲一?」

「ツナの初の任務上手くいったんだって?」

「それがどうかしたの?」

玲一は誰が任務成功しようが気にしない性格だ。その玲一がツナの任務が成功したことを気にしていることにミリアムは驚いた。

「ミリアムのことだから明日辺りにでも買い物するんだろ?今回はツナを連れてさ。」

「そうだけど。」

ミリアムは任務を完了させ金が入ると買い物に出掛ける。その事を玲一とソフィアは知っていた。
玲一は数枚の札をミリアムに渡そうと出した。ミリアムは困惑しかない。

「?」

「ツナの洋服でも買ってあげて。出来れば可愛い感じのヤツ。」

「・・・・・・何か企んでる?」

「企んでないよ。ツナの初任務成功のお祝いだよ。」

「・・・ふーん?玲一が誰かをお祝いするなんてね。」

疑惑の目を向けるミリアム。玲一は心外だと言わんばかりの顔をした。

「ツナは女だということを捩じ伏せられて生きてきた。同じ年頃の女を見て可愛い洋服や小物に憧れて身に付けたいと思ったことが何度もあった筈だ。だからさミリアムが見立ててやって。」

ツナの今までの生きてきた道を考えると思うところはあると話す玲一にミリアムは金を受け取る。

「確かにツナはずっと男として生きてきたからね。OK。可愛い洋服ね。」

ツナの洋服はツナの好みを聞いたソフィアが用意した物で、基本的にシンプルな物が多く、ボトムスはホットパンツやジーパンばかりでワンピースやスカートはない。

「俺には女の服はよくわからないからよろしくね。それじゃお休み。」

「お休み。」


玲一は自室に向かいながら笑いを堪えていた。


『可愛い洋服を着たツナを見たら恭弥はどうなるかな?』


そう彼はミリアムが言っていたように企んでいた。

玲一は確かにツナのことを考えれば思うところはあるのだがハッキリ言って雲雀をからかいたくて仕方がないだけだった。


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