悪魔
並盛ーーーー
沢田家ではイーピン、ランボ、フゥ太が出ていきリボーンは苦虫を噛んだような顔をしていた。
ツナが刑務所に入れられてから数日後、風がイーピンを迎えに来た。
「イーピンを連れていく?どういう事だ!?」
「イーピンはまだまだ未熟です。本当なら最終試験のターゲットを間違えてしまった時点で連れ戻すつもりでしたがリング戦やら代理戦がありましたからね。」
「待て風!勝手な事をされたらこっちが困るんだ!!」
「勝手な事?イーピンはボンゴレの一員ではありませんし、貴方の所有物でもありません。」
「くっ!」
確かにイーピンはボンゴレの一員ではない。
リボーンいずれイーピンにボンゴレ入りをさせてデボラのボディーガードにしようと考えていた。
リボーンと風が言い合っていると荷物を纏めたイーピンが子供部屋から玄関に来た。
「師匠!」
「イーピン。さあ行きますよ。」
「はい!奈々さん御世話になりました。」
見送りに来た奈々に挨拶をしたイーピンは沢田家をさっさと出る。これ以上ツナを裏切った人間の顔を見たくはなかったからだ。
イーピンが出ていくと風がリボーンと奈々に静かに言った。
「リボーン。私は弟子のイーピンを信じますが貴方は何故生徒である沢田綱吉さんを信じないのですか?」
「それはアイツがーーー!?」
デボラを苛めたからだと続けようとしたが風の目を見て言葉を詰まらせた。
風はリボーンを軽蔑した目で見ていた。
イーピンの手紙はいつも近況やツナの事が書かれていた。
しかし先日届いた手紙にはツナがリボーン達に制裁をされて刑務所に入れられたと書かれていた。
それを読んだ風は今のリボーン達はイーピンにとって最悪の環境だと思って急いで迎えに来た。
「沢田綱吉さんは私達の呪いを解く為に動いてくれました。そんな彼が苛めなどするような人物でしょうか?沢田奈々さん。貴女にとって彼はお腹を痛めて生んだ子供でしょう?」
「し、しかしデボラが訴えてきたんだ!」
「そうよ。あの子はとんでもない事をして家光さんを困らせたのよ!」
「そうですか。沢田奈々さん。貴女は子供を生んだが母親にはなれない人間のようですね。リボーン、貴方には軽蔑どころか失望を感じます。もう会うことはありません。」
風は奈々には憐れみの目を一瞬向けた後にリボーンを睨み付けると沢田家から出ていった。
憐れみの目を向けられた奈々は何故そんなことを言われたのか分からずに首を傾げ、リボーンもまた分からずにいた。
イーピンが去って数日後、今度はボヴィーノファミリーの幹部二人がランボを迎えに来た。
「ランボを次期のボヴィーノのボスにするだと!アイツはデボラの守護者だぞ!」
「しかしボスは持病が悪化してしまい早急に次のボスを決めなくてはなりません。そしてボスはランボを指名しました。」
「我々はランボがボスになることに異存はありません。」
だから連れて行くと言うボヴィーノの幹部達。リボーンはランボは今は子供だが20年後のランボは守護者に相応しい力を持つと分かっていたから阻止しようと「ボンゴレの守護者になれるんだ!ありがたく思いやがれ!」と怒鳴り散らし幹部達を追い返した。
だがランボが鬱陶しかったデボラが認めたことからランボは迎えに来た幹部達と沢田家を出て行った。
ランボが出ていくのを見てフゥ太はこっそりドン・ボヴィーノに連絡を入れた。
「ドン・ボヴィーノ。今ランボが沢田家から出ていきました。」
『そうか。連絡ありがとう。フゥ太君。』
ドン・ボヴィーノは連絡を切るとふうと息を吐いた。
ランボの手紙にはいつもツナの事が書かれていて時には似顔絵まで描いてありそれを見てドン・ボヴィーノはツナに会ったことはないが優しい人物だと思っている。
そしてツナの武勇伝はマフィア中に知られている。その武勇伝は仲間の為に戦っているとういう物ばかり。そんなツナが誰かを苛めて暴力を振るうとは思えなかった。
それに最近のボンゴレは不穏な動きが見えていた。例えばボンゴレのシマでは麻薬の売買は禁止されているのに売買が行われていたり、怪しげな研究所が出来ていたりと以前のボンゴレでは考えられない事が起きていた。
そんなボンゴレとボンゴレに雇われているリボーンの傍にランボを置いておく訳にはいかないと持病が悪化したと嘘を付いて幹部達にランボを迎えに行かせのだ。
ランボが無事にボヴィーノファミリーに戻った事が知らされるとフゥ太もまた沢田家を出ていった。
「フゥ太!どこに行くつもりだ!」
フゥ太をボンゴレ専属の情報屋にしようと考えていたリボーン。
「何処って、依頼が入ったからフランスに行くんだ。しばらくはフランスに身を置くつもりだから。」
「・・・そうか。元気でな。」
フゥ太もまたボンゴレの一員ではないからリボーンは強引に引き留めたりは出来ない。だがフランスに居るならすぐに連れ戻せるだろうと考えて見送った。
因みにフランスに行くというのはリボーンを欺く為の嘘である。
フゥ太はある薬を持ち出していた。
白い粉状の薬。これは常に奈々がツナの食事に入れていた。フゥ太は情報屋の勘が働いて奈々に白い粉は何?と聞いた。奈々は栄養剤だと答えが明らかに怪しい。試しに自分も飲んでみたいと言ったら「ツッ君専用なのよ。」と断られた。
「ただの栄養剤なら誰が飲んでも平気な筈。これ、絶対に怪しいよ!」
フゥ太は今までの依頼人の中に製薬会社を経営しているマフィアがいてそのマフィアに頼んで粉の成分を調べてもらおうとアメリカに向かった。