悪魔


この後、いつも通りツナはミリアムとソフィアにイタリア語を教わり、雲雀はダンテの執務室に呼ばれ玲一に案内された。

執務室で玲一は適当に椅子に座り雲雀は同盟を組むことを記した書類にサインをするとダンテが口を開いた。

「雲雀恭弥、聞きたいことがある。」

「何?」

「守護者の特徴とヒットマンのリボーンの特徴だ。さすがに今のツナには聞けない。彼女はまだ何処かでやり直せると思っている節がある。そんなツナに聞いても無意識のうちに重要な所を省くかも知れない。」

今まで様々なタイプの人間をディアベルのメンバーにしてきたダンテ。その中にはやり直せる、再構築が出来ると思っていた人間もいた。だからこそツナが思っていることを見抜いていた。

「あの子は甘ちゃんだからね。守護者の特徴は嵐の守護者の獄寺隼人はダイナマイトを使うから中距離の戦闘が得意だね。雨の守護者の山本武は刀が武器だから近距離の戦闘スタイル。晴の守護者の笹川了平は肉弾戦が得意だけどそれよりも面倒なのは他者を回復させる能力だ。もし彼等を咬み殺すなら真っ先に笹川了平を咬み殺すことだね。」

「確かに回復させる能力があるなら先に潰すのが定石だ。」

「赤ん坊は実力はある。確実に仕留めようと頸動脈や額や心臓を狙うからね。その点は守護者共より厄介だよ。ただ格下と見なした相手には無茶難題をふっかけたりするみたい。沢田も赤ん坊に修行と言われて散々振り回されて時には銃で脅されていたしね。ヒットマンとしては一流だけど家庭教師としては三流以下だ。」

「所詮殺し屋ってところだな。」

「まぁね。霧の守護者のクローム髑髏と六道骸。彼等は幻術を使う。クローム髑髏は肉弾戦は不得手みたいだけど六道は肉弾戦も得意だ。雷の守護者は9才くらいの子供で戦い方もろくに知らないよ。」

まあ僕の敵じゃないけどと付け加える元孤高の雲の守護者で最強の雲雀。


「成程。玲一、話は聞いていただろう?」

「ツナの訓練メニューの見直しをするよ。」

今の戦闘訓練の内容はおもに近距離戦と基礎体力を付けること。ツナはヒーヒー言っている。ミリアムも同じように玲一に教わりやはりヒーヒー言っていた。

雲雀は訓練メニューと聞いて玲一を見た。

「沢田は君に訓練を受けてるの?」

「そうだよ。今のところは近距離戦と基礎体力を付けさせてる。」


ボンゴレギアとグローブ、死ぬ気弾がなければ平時のツナは弱い。体力だって無さすぎる。訓練は当たり前なことだ。

「そう。だったら僕も交ぜて。僕ならあの子の才能をこじ開けることも出来るよ。」

「恭弥、大きく出たね。ダンテどうする?彼はやる気満々だ。」

自信はあると楽しそうな顔をする雲雀。ダンテは許可を出した。

「良いだろう。だが訓練メニューは玲一と話し合え。」

ダンテは玲一はある程度加減をしているが雲雀は容赦なさそうだと感付いていた。


ーーーー

夜、ツナはミリアムの部屋に行こうと部屋を出た。

ツナがデボラに陥れられた話をしてからのミリアムはいつもと様子が違った。口数が少なく、夕食も半分以上残していた。
そしてミリアムはデボラのしていることを知っているような口振りだった。

「ミリアムはビーニさんのことを知っているような感じだった。それに夕飯もあまり食べなかったし。」


ツナはミリアムの部屋に着くとノックをした。

「誰?」

「ちょっと良いかな?」


ノックをしたのがツナだと分かりミリアムはドアを開けて通しベッドに座ると隣に座れと手でポンポンとベッドを叩いた。ツナが隣に座るとミリアムは口を開いた。

「もしかしてツナが気になってるのはあたしとデボラ・ビーニのこと?」

「うん。何か知っているような感じだったし。それに夕飯もあまり食べなかったから体調が悪いのかなって。」

「ツナは優しいね。・・・デボラ・ビーニは知ってる。」

ツナはミリアムを見た。ミリアムの青い目は憎しみと悲しみが入り交じっていた。

「まさか・・・陥れられたの・・・?」

ツナは言葉を発するが唇が震えている。

「そのまさかだよ。アイツはあたしを嵌めて両親と弟を殺したんだから!」

「!!!?」


ミリアムはデボラに陥れられた話をツナに話した。





ツナはミリアムの話を聞いてポロポロと涙を流した。
それを見てミリアムはギョッとした。

「ちょっとツナ?どうして泣いてるの!?まだ体が辛いじゃ!?」

慌ててベッドにツナを横にしようとするミリアムにツナは大丈夫だと止める。

「ミリアムは辛い思いをしたんだって思ったら何か涙が。」

「でもそれはツナもじゃん!」

ミリアムはツナに抱きつきツナは抱きしめ返した。


家族に裏切られ、家庭教師に裏切られ、友人に裏切られ、先輩に裏切られたツナ。
恋人に裏切られ、親友に裏切られたミリアム。

二人は親しく愛した人達に裏切られた。

だからこそ同情も憐れみもなく分かりあえた。


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