悪魔

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話終えたツナ。
共有スペースは静まり返っていた。
ボンゴレとデボラ、キアロスクーロにソフィアは僅かに眉を寄せ、玲一は呆れ、雲雀とミリアムは怒りを露にした。
沈黙を最初に破ったのはダンテだった。

「成程。キアロスクーロはボンゴレ欲しさにツナを陥れたというわけか。」

「はい。それにビーニさんは贅沢したいって言ってました。」

ツナが答えるとソフィアは呆れ返った。

「贅沢したい程度で欲しがるなんて。デボラ・ビーニは甘過ぎるわ。」

確かにボンゴレの財と権力はマフィア界で最大だ。しかし欲のままに財を貪り権力を振りかざしたらあっという間に潰えるだろう。特に元マフィアのソフィアからしたらデボラの考えは愚かでしかない。財も権力もファミリーの存続のため、ファミリーのシマに使うものだ。(最もソフィアのファミリーはシマの住民を脅して悪事を働いていて、住民のことは考えていなかった。)それを分かっていないデボラは甘過ぎると一刀両断した。
ダンテは軽く頷いた。彼もディアベルのトップだ。デボラの愚かさには呆れつつ玲一に話を振る。

「玲一の調査だとデボラ・ビーニは転校する度に苛められていたんだったな?」

「そうだよ。デボラ・ビーニを苛めたとされてる人はほとんどが事故死してる。ただ。」

玲一は一端話すのを止めてツナを見た。ツナはキョトンとした。

「??」

「ツナの場合は殺すことは無さそうだ。そうだろ?ソフィア?」

「そうね。ツナあってのボンゴレだからね。」

「何で?俺はもう10代目じゃないよ??」

ツナは10代目から降ろされた身。玲一とソフィアの言葉にただただ?マークを頭に浮かべる。
ソフィアはあくまでも私の考えだからと前置きして話した。

「あくまで私の考えだからね。ツナは確かに10代目の地位を剥奪されたから同時にボンゴレから追放されたと思うけどそれは違う。」

「違うの?」

「ツナの体にはブラッド・オブ・ボンゴレが流れてるししかも初代ボンゴレの直系。易々とボンゴレがツナを追放するとは思えないわ。」

10代目剥奪=ボンゴレ追放と思っていたツナはソフィアの話で自分の血筋を思い出した。

「そうだった。それが原因でボンゴレと関わることになったんだった。」

「これも私の考えだけどツナが男の子として生きるのを強要されたのはその血筋のせいね。ツナが女の子として過ごしていたら敵対ファミリーは何がなんでも手に入れようとするわ。女なら妊娠させて子供を生ませることが可能だから。」

子供を生ませる意味は分からないが妊娠させるという言葉にツナは顔色を悪くさせる。
ソフィアの言葉を理解した雲雀は眉を寄せた。

「小動物が敵対ファミリーの人間との間に子供をもうければその子供はボンゴレを継ぐ権利があると名乗りを上げることが出来るわけか。」

「ええ。継ぐことが出来なくてもブラッド・オブ・ボンゴレがボンゴレ以外に流れた時点でマフィア界は荒れ狂うでしょうね。・・・私が居たファミリーはボンゴレとは敵対していた。そしてそのボスはボンゴレの血筋を欲しがっていたわ。」

ソフィアが元マフィアだったことにツナは驚いた。ツナにとってソフィアは優しいお姉さん的な存在だから。
驚くツナを見て目を伏せるソフィア。
彼女が居たファミリーはボンゴレとは敵対していたがブラッド・オブ・ボンゴレを欲していた。異能である超直感。それがあればボンゴレを乗っ取れると考えていた。だが次々とボンゴレの血縁者は死んでいき手にすることは出来なかったが。(デボラは傍系でかなり薄い血筋で却下していた。またデボラとファミリーの人間の間に出来た子供は更に血筋が薄くなり超直感を持って生まれるとは考えられなかった。)

ツナは改めて自分の身体に流れる血が厄介な代物だと理解した。
敵対ファミリーからしたら格好の餌。
ボンゴレからしたら10代目を剥奪しても初代ジョットの生き写しで家光にはない超直感がある。そのツナを子供を生ませる道具にすることは出来る。
つまりボンゴレはツナを手放さない。キアロスクーロだって隙あればツナを輸姦させるだろう。
全ては血筋が欲しい為。ツナを殺したら永遠に手にすることは出来ない。

「俺は普通に生活したいだけだったのに。」


玲一は呟くように言うツナを見て予想以上に辛い道を歩かされていると思った。
雲雀は血筋に縛られているツナを見て痛々しい表情で見ていた。

ダンテは小さく息を吐く。

「ツナ。辛い話をさせたな。だがおかげで情報を得ることが出来た。」

情報という情報ではないがキアロスクーロとデボラの目的は明らかになった。ボンゴレにはツナの家庭教師としてヒットマンのリボーンがいることも分かった。
後は更に調べ潰せる物は潰していけばキアロスクーロもボンゴレも傾くだろう。

『カルロの情報だとキアロスクーロは色々とやらかしているらしいしな。』

ダンテは共有スペースを後にした。


ミリアムは俯いていた。

『ツナはあたしと同じような目にあってたんだ!』


俯いて拳を握るミリアムにツナは話し掛けるが。

「俺の話を聞いて気分悪くなっちゃったよね。大丈夫?」

てっきり話を聞いていたミリアムは気分が悪くなって俯いていると思ったツナ。
ミリアムは顔を上げてツナを見た。

「ツナの話で気分が悪くなってないよ。デボラがしていることは胸糞悪いけど。アイツは最低だから!」


ミリアムの過去をある程度知っているソフィアと玲一はミリアムの今感じている気持ちを理解出来るが何も知らないツナは不思議そうにする。

そしてミリアムばかり気にするツナに雲雀は仏頂面だ。それを見て玲一は笑いを堪えていた。


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