悪魔
「クローム!暫くの間俺には関わらないで!出来れば学校も休んで。超直感が知らせてきた。」
「超直感が?」
「うん。ビーニさんがクロームに何かするつもりみたいだ。だから今すぐ帰宅して!」
クロームは首を横に振った。
「私はボスの守護者だから平気。」
ツナは困ったと頭を抱えたがクロームが陥れるのは見たくはない。
「俺を思ってくれるならお願いだから休んで!それにクロームに何かあったら骸が悲しむ!」
主の名前を出されてしまったクロームは分かったと頷いた。
「困ったらいつでもヘルシーランドに来て!私はボスを信じてるから!」
「ありがとうクローム。」
クロームは踵を返したが素直にツナの言うことを聞くわけじゃなかった。
「骸様に相談してみよう!」
ヘルシーランドに帰るとクロームは骸の元に行き話をした。
「可愛いクローム。落ち着きなさい。暫くは静観するのです。」
「そんな!」
「お前は沢田綱吉の優しさを踏みにじるつもりですか?」
「・・・いいえ。」
「暫くデボラとかいう害虫の次の動きを見てからでも遅くはありません。それまでは手出しは無用です。良いですね?」
疑問系だが明らかに手出しはするなと言った骸にクロームは悲しそうに分かりましたと頷いた。
『クロームには悪いですがデボラ・ビーニがボンゴレを継げば僕は楽が出来ますからね。』
骸はデボラが正式にボンゴレ10代目に決まったらツナを助けてやっても良いくらいには思っていた。
制裁が1ヶ月続くとデボラはそろそろ飽きたと次の行動に出た。
屋上で転がっているツナの元に行くデボラ。
「あはは!デボラに譲らなかった罰はかなり効いたでしょ?」
「・・・・・・。」
「あーら言葉もないのねぇ?どう?そろそろ譲ろうと思わない?どうせ獄寺君達との関係は破綻したんだし意味ないじゃない。」
「破綻させたのはビーニさんだろ?それにボンゴレの業は甘くないよ。」
「まだそんなこと言えるんだ?だったらこっちも考えがあるんだよ!」
デボラはツナの腹を思いっきり踏んだ。
「ガハッ!?」
「ふん!このデボラに逆らったお前が悪いんだよ!」
更に踏んでデボラは屋上を後にした。
ツナは帰宅すると帰国していた家光が殴り付けた。
「ツナ!お前はなんてことをしてくれたんだ!デボラ嬢の顔を傷付けてその後も苛め続けるとは!恥を知れ!」
ツナは殴られた頬を押さえながらやってないと訴えた。
「俺は本当に何もしてない!信じて!!」
「うるさい!そんな嘘をついたところでお前は御払い箱だ!」
怒鳴り付けた家光が懐から1枚の勅命書を出した。
「これは9代目が決めたことだ。お前は10代目から外す!」
「な!?」
ボンゴレを解体して獄寺達を解放しようとしていたツナは勅命書を見てショックを受けた。
そんなツナを横目に家光は溜め息をついて「自業自得だ!」と言うとボンゴレリングと手袋、死ぬ気丸を奪い取りリビングに行った。
ツナは勅命書を持ったまま暫く玄関に座り込んだ。
デボラは車を並盛の外れに止めさせて降りた。隣には背格好がツナと同じくらいの部下(部下と言ってもデボラの世話係のメイド)を連れて。
その部下は並盛高校の男子生徒の制服を着込み髪の毛はツナのそっくりに見えるカツラを被っていた。
「作戦通りにお前はこのデボラを殴ったり蹴ったりするふりをするのよ!良いわね?ミスって殴ったりしたらお前はクビよ!!」
「かしこまりました。デボラお嬢様。」
静か答えるメイドにデボラは予め部下に取り付けさせた防犯カメラがある方に歩いていく。メイドは合図として声を上げてデボラを殴り付けるふりをした。
叫び声を聞いてデボラはタイミング良く転ぶ。そこにメイドがデボラを踏みつけたり頭を蹴ったりするふりをする。
デボラは悲鳴を上げながら逃げようと立ち上がったがメイドがデボラの腹を殴り付けた。
デボラはよろめきながらも逃げていきメイドは追いかけていった。
その一連の行動は防犯カメラにしっかりと写っていた。
「ウフフ!上手く行ったわ!お前もご苦労だったわね。」
メイドに労いをかけてデボラは車の後部座席に乗り込み、メイドもまた助手席に乗り並盛の外れから走り去った。
屋敷に戻ったデボラは大量の包帯と湿布、ガーゼ、絆創膏を用意させるとニタリと笑った。
「これでダメツナは終わりね!邪魔者は排除しなくちゃね!ギャハハハハ!」
デボラはこれでボンゴレは自分とキアロスクーロの物だと笑った。