悪魔
屋上に放置されていたツナは目を覚ますと涙が流れた。
「何で?何でこんなことになっちゃったの?」
ツナは泣きながら痛みを訴える体を叱咤して帰宅するとリボーンと奈々に怒鳴り付けられた。
「ツナ!女には優しくしろって言っただろうが!」
「獄寺君と山本君が教えてくれたわ!デボラちゃんの顔になんてことをしたの!」
「俺は何もしてないんだ!!ビーニさんが自分でやったんだ!」
「何馬鹿なことを言ってやがる!自分で顔を傷付けるわけねぇだろ!」
「女の子の顔を傷付けて!それは悪いことなのよ!早く謝りなさい!」
ツナは泣きながら信じてと言い続けると奈々はツナの顔を打った。
パシーンッ!
「何で嘘を言うの!デボラちゃんに謝るまでご飯は抜きますからね!」
「そりゃ良い躾だなママン。ツナ!ちゃんと謝るんだぞ!」
「そんな・・・!」
この日からツナは地獄の日々を送った。
家族、家庭教師とその愛人には躾だと暴力を振るわれ、食事は1日にコーヒーか紅茶が一杯だけ。
学校に行けば罵られて下駄箱には生ゴミや虫の死骸が入れられ教室にはいれば汚水をかけられる。机は罵倒する言葉がマジックで書かれて教科書やノート、体操着は破られ焼却炉に捨てられた。
デボラが「沢田君に睨まれた。」、「沢田君に殴られた。」と騒げば獄寺達はまたやったのかとツナを制裁し、放課後になれば屋上や裏庭に引き摺りデボラが安心して帰宅出来るようにと制裁した。
毎日の奈々の躾とリボーン達の制裁でツナはあっという間に痩せ細り傷だらけだ。
信じて欲しい人達に信じて貰えない辛さを味わい続けても頑張れたのは居候のランボとイーピン、フゥ太と守護者のクロームが信じてくれたからだ。
フゥ太達はおやつや夕食の残りをこっそりツナに渡したりした。
「こんなのおかしいよ!ツナ兄はそんなことしないのに!」
「ランボさんツナの味方だもんね!」
「ツナさん優しい人。苛めなんてしないのイーピン知ってる!」
怒ったフゥ太達は奈々とリボーンに抗議しようとしたが慌ててツナは止めた。そんなことをしたらランボがリボーンに殴られる。
「俺は大丈夫だから!それにいつか分かってくれるから!」
子供達は泣きながらツナに食料を渡した。
子供達以上に怒ったのはクロームだった。
高熱を出して学校を数日欠席していた間にデボラがツナを陥れた。
何も知らないクロームは教室に入るとツナがいないことに気付き京子に聞いた。
「京子ちゃん、ボスは?休みなの?」
いつもなら獄寺と山本と一緒にいる筈なのにツナがいない。獄寺と山本はいるのに。しかももう少しで始業のチャイムが鳴る。
不思議に思うクロームに京子は吐き捨てるように言った。
「クロームちゃんは休んでたから知らないと思うけど沢田君はデボラちゃんに怪我させたの!その後も苛め続けるから獄寺君達が制裁して今は屋上で倒れてると思うわ!」
「なっ!?」
クロームは教室を飛び出した。京子は呼び止めるがクロームは無視した。
クロームは屋上に着くと体をゆっくり起こすツナがいた。
「ボス!」
クロームは怪我だらけのツナに驚いた。
「クローム熱下がったんだね。良かった。」
怪我だらけでクロームを気遣うツナにクロームは私の熱なんかどうでもいいと泣き出した。
「ボス、何が、あったの?話して。」
ツナは信じてくれるのと恐る恐る聞くとクロームはコクンと頷き、ツナはありがとうと言って話した。
「それじゃあボスは無実なのに皆は暴力を振るってるの!信じられない!特に嵐の人達はボスと過ごした時間が長いのに転校したばかりの人を信じるなんてあり得ない!」
泣いていたクロームは今度は怒りを露にしていた。
「私がボスはそんなことしないって言ってくる!もしそれで言い争いになっても嵐の人達と戦うことなってもわかってもらえるまで言い続ける!」
「クローム!獄寺君と山本と戦う気なの!?」
無言で頷くクロームをツナは慌てて駄目だからね!と止めた。クロームは渋々諦めた。
「ボス。保健室に行こう。手当て手伝うよ。」
それにツナは今度は別の意味で慌てた。ツナは男として生きているが実際は女。勿論、クロームは男と思っている。
「大丈夫だから!」
「でも化膿しちゃったりしたら大変。」
「本当に大丈夫だから!」
クロームの優しさに嬉しさを感じるツナに超直感が危険を知らせた。
《デボラ・ビーニがクロームに何かするつもりだ》
ツナはクロームに自分に関わらないようにと言った。