悪魔
カッターを用意させたデボラは朝早くに教室に入るとツナの机に手紙を入れながら早く放課後にならないかしらと醜く笑った。
放課後になると山本は部活、獄寺は教師に呼び出され、京子は花壇の水やり当番で校庭にいた。
呼び出されたツナは行きたくはなかったが何の為に呼ばれたのか気になり指定された屋上に入ると既にデボラがいた。
「ビーニさん待たせてごめん。何の用かな?」
デボラはニヤニヤしながら言った。
「ボンゴレの座をデボラに譲りなさい。」
「え!?」
驚くツナにデボラは喚くように言い出した。
「だってムカつくんだよ!一般人の日本人の冴えないアンタがボンゴレの後継者なんて!デボラは血筋が薄すぎるせいで候補者にもなれなかったのに!!アンタにボンゴレなんてもったいないからこのデボラに譲りやがれ!!」
「ど、どうしてボンゴレが欲しいの!?」
「デボラはどうしてもボンゴレが欲しいのよ!さっさと譲るって言いな!!」
キアロスクーロの財が傾いてデボラの父はボンゴレの後継者候補に娘のデボラを立候補させたが血筋が薄すぎる為に却下された。
その為キアロスクーロはツナを手に入れることにしてデボラが並盛に乗り込んだ。
デボラ自身、ボンゴレを手に入れたら思う存分贅沢が出来るし、守護者達は幼いランボを除けばイケメン揃いで侍らせたいと思っていた。それにはツナが邪魔で仕方がない。
「デボラは血が薄すぎるからって後継者候補にもなれなかったのに!アンタなんか一般人の日本人の癖に!!どうせダメツナって馬鹿にされてんだからデボラに譲れよ!!」
「嫌だ!ビーニさんにボンゴレの業を背負わせる訳にはいかないよ!」
ツナは出来ることならデボラに譲りたいがボンゴレの業を背負わせることなる。ツナには恐ろしいボンゴレの業を誰かに押し付ける気にはなれなかった。
だがデボラは目を鋭く吊り上げた。
「そんな訳の分からない言い訳しやがって!本当にムカつくんだよ!」
「言い訳なんかじゃない!!」
「煩い煩い煩ーーーーい!だったら奪い取るまでよ!!」
そう喚くとデボラは柄の部分にハンカチを巻いたカッターをスカートのポケットから出した。ツナはそれを見て顔を青くした。
「ウフフフ!別にダメツナを切りつける訳じゃないのよー?ただねこのデボラ様の優しさを踏みにじった罪は重いわよー?」
デボラはカッターで右の頬に二ヵ所切った。
「ビーニさん!?何を??」
「アハハハ!!ダメツナには地獄を味あわせてやるよ!」
デボラは大声で叫んだ。
「キャーーーーーーーーーーーーッ!!」
デボラの叫び声は学校中に響き渡った。
「ウフフ~。これでボンゴレの財で贅沢しまくってやるわー。キアロスクーロの繁栄のために利用出来るしボンゴレって便利よねー。」
手に入れたも同然だとニヤニヤと笑うデボラにツナは叫んだ。
「なっ!?贅沢や自分のファミリーの為にボンゴレを継ぎたいの!?おかしいよ!」
間違ってると言うツナにデボラは煩いとツナの腹に蹴りを入れた。
「煩い!キアロスクーロは火の車なんだもん!そうなったらデボラ達は破滅よ!それを回避する為にはボンゴレが要るんだから!そんなことよりこれからのことを考えたらー?」
デボラはカッターだけをツナの足下に投げ捨てハンカチはポケットにしまった。
暫くするとデボラの悲鳴を聞いた生徒達が屋上に集まった。その中には獄寺と山本、了平、京子もいて。デボラは嘘泣きをしながら駆け寄った。
「た、助けて!沢田君が、転校生の癖に生意気だって切りつけてきたのー!」
「え!?10代目が切りつけた!?」
ツナの方を見ると足下に血が付着したカッターが落ちていた。
そしてデボラの右頬には二ヵ所切りつけられて血が出ていた。
獄寺達は怒鳴るように吐き捨てた。
「忠誠を誓った俺が馬鹿だったぜ!!」
「お前はもう親友じゃないのな!!」
「ツナ君最低だよ!」
「極限に見損なったぞ!」
ツナは慌てて否定した。
「違うよ!ビーニさんが勝手にやっただけだよ!」
否定するツナに他の生徒が切り捨てた。
「何でビーニが自分の顔を傷付けるんだよ!」
「そうよ!デボラちゃんが自分でするわけないじゃない!」
「本当なんだ!俺は何もしていない!!」
ツナの言葉は獄寺達に無視された。
「嘘つくなよ!早く謝りやがれ!」
「これ以上失望させないでほしいのな。」
「沢田君ちゃんと謝って!」
「嘘をついて誤魔化すとは男として極限に情けないぞ!」
「そ、そんな。俺は何もしてないよ!信じてよ!」
デボラに謝罪しないツナに他の生徒が大声で言った。
「コイツ自分がしたことわかってないぜ!デボラちゃんに代わって仕返ししてやろう!」
一人の生徒が言うと他の生徒も仕返しだ!デボラの痛みを思いしれ!と罵りツナに暴行しだした。
長く続く暴力の中でツナは何度も「やってない!」「信じて!」「止めて!!」と叫んだが獄寺達は言葉を無視して暴力を振るった。
京子や他の女子生徒達に慰めれているデボラは誰にも分からないようにニヤリと笑った。
気絶して動かなくなったツナを見て獄寺達は「これで少しは分かっただろ?」と笑いながらデボラを守るようにして屋上を後にした。