悪魔




ツナは物心がついた頃には既に男の子として育てられた。

だがツナはれっきとした女の子。
そんなツナが同じ年頃の女の子達が当たり前に持っているバー◯ー人形やシルバ○アファミリーのウサギやネコの人形、魔法少女系のステッキを欲しがると奈々は笑顔でこう言った。

「お人形さんは女の子の玩具なの。ツッ君は男の子だから駄目よ。」

ツナは自分は女の子なのにと思ったが母親の奈々に言われて我慢させられた。

別の日、ツナは公園の隅で可愛らしい花が咲いているのを見付けて奈々にプレゼントしようと花を摘んでいたら奈々に見つかって笑顔で言われた。

「ツッ君。男の子なんだからお花で遊んじゃ駄目じゃない。せっかくサッカーボールを持ってきたんだからボールで遊びましょうね。」

ツナは奈々に喜んでもらいたいだけだったのに摘んだ花は公園のごみ箱に捨てられてしまった。

その後も女の子らしくしようとすると「ツッ君は男の子なんだから。」と奈々に笑顔で言われ続けた。その笑顔は男のふりをしなさいと押さえつけるものだった。

ツナが12才になった頃、思い切って奈々に何故男のふりをさせられているのか聞いた。

「母さん、何で俺は男のふりをしてるの?」

「それはね、家光さんがツッ君は男の子として育てたいって言ったからよ♪」

「・・・え?それだけで?」

「そうよ。家光さんが言ったことなんだからそれで良いのよ♪」

笑顔で言う奈々にツナは唖然とした。
小学6年になると保健体育の授業がありツナは女は成長期に胸が大きくなることや初潮を迎えると子供が生める体になることを知った。
いずれは女の体になり周囲にバレる。その時に奇異な目で見られるのは自分より男のふりをさせている母親の奈々だ。それなのに家光に言われたからの一言で片付けた。

「でも俺はいずれは女の体になるから回りの人達にバレちゃうよ?そうなったらーーー」

母さんと父さんが回りの人達に変な目で見られたり嫌味を言われるかもと言おうとしたが奈々は遮った。

「大丈夫よ。もし胸が大きくなったらサラシを巻けば何とかなるものだって家光さんも言ってたわ。だからツッ君は心配しなくても良いのよ♪」

「でも母さん。それでもバレたら母さんが回りの人達に変な目で見られるよ。」

ツナは奈々を心配して言っているのだが奈々は全く気付かない。寧ろ「家光さんの言うことは正しいし絶対に守らなきゃね。」と意味不明なことを言ってツナに言い聞かせた。

結局家光の決めたことは絶対と言われてツナは理由は分からないまま男として過ごしてきた。


そして中学生になるとリボーンが現れて骸との戦い、リング争奪戦、未来での百蘭との戦い、炎真率いるシモンとの戦い、虹の呪いを解く為の代理戦に巻き込まれてマフィアの世界に引きずり込まれた。

ツナはマフィアにはならないと言い続けたがボンゴレの初代ジョットに栄えるも滅びるも好きにしろと言われてツナはボンゴレを継いで解体しようと考えていた。
ボンゴレが無くなれば山本と了平は一般人の括りになりプロ野球選手、プロボクサーの道に進める。実際、それだけの能力はあるのだから。
復讐者の牢獄から出た骸だって本当の意味で解放される筈だし、女の子のクロームにはこれ以上怪我をしたりしてほしくはない。
獄寺だって本人がその気になれば足を洗って一般人になることも可能だ。
ランボはボヴィーノに帰れるし、一般人になることも獄寺同様に可能。

そんなことを考えてつつ過ごし高校3年になると一人の転校生がやって来た。


長く弛めのパーマがかかった茶色の髪に緑色の瞳の美少女が自己紹介した。

「初めまして。イタリアから来ましたデボラ・ビーニです。よろしくお願いします。」

デボラの視線の先にはツナがいた。

『血筋が薄すぎるせいでデボラは後継者候補にもなれなかったのにあの冴えない日本人がボンゴレの後継者なんて許せない!!』

デボラはツナを嫉妬し絶対にボンゴレを乗っ取ってやる!と息巻いた。

ツナは超直感でデボラは危険だと感じて近寄らないようにしたがリボーンにより引き合わされた。

「初めまして沢田君。同盟ファミリー同士仲良くしましょうね。」

「よろしくビーニさん。」

握手を交わしたがツナは超直感に従いデボラと距離を取り関わらないようにした。



デボラは何日経っても自分に近寄らないツナに苛立った。

「距離を取られたら嵌められないじゃない!アイツを排除しなきゃキアロスクーロもデボラも破滅よ!!」

キアロスクーロはボンゴレ4世の傍系なのに血が薄すぎる為に親戚関係として認められていない。それに今でこそボンゴレ同盟ファミリーの中では2番目に規模の大きいファミリーだがデボラの曾祖父がボスだったときは弱小ファミリーだった。 曾祖父が弱小ファミリーのままで終わらせないとボンゴレが禁じている悪事に手を出した。麻薬の売買、人体実験、人身売買等をして大くしてきた。
だがその方法もデボラの父の代で行き詰まった。このままではデボラがドンナとしてキアロスクーロを継ぐ頃にはキアロスクーロの財は火の車だ。それを打開するには何らかの形でボンゴレの財と権力を手に入れるしかなかった。

「手に入れるなら沢田との結婚をボンゴレに頼み込んでボンゴレ婦人になるのが手っ取り早いかもしれないけどあんな冴えない奴と結婚なんて嫌よ!」

実際デボラの父親はツナと結婚し子供を生んでしまえばツナを暗殺してしまえば良いと言われていたがデボラはごめんだった。

「ダメツナと結婚するくらいなら引きずり落としてやる!!」

これまでも何人もの人間を陥れてきたデボラには簡単なことだ。


「カッターを用意しなくちゃね。」

デボラは笑ってカッターを部下に用意させた。


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