悪魔


教室に入れば汚水をかけられ、石を投げつけられ、突き飛ばされる。
机は『死ね』『学校に来るな』『ブス』と罵る言葉がマジックで書かれ、私物は取り上げられて壊された。
そしてデボラは嘘泣きしてミリアムに苛められたとクラスの生徒達に助けを求める。生徒達にはまたやったのか!と暴力を振るわれる。
そして数日後にはデボラはミリアムの恋人と付き合って親友二人と友人になっていた。

デボラは恋人とイチャつき、親友二人と出掛けるのをミリアムに見せ付けるようにした。

毎日デボラは嘘をついてそれを真に受けた生徒達は制裁と称した暴力を振るう。
恋人と親友二人もミリアムは恋人でも親友でもないと吐き捨てて制裁に参加していた。


恋人と親友を奪われ、暴力を振るわれてミリアムは悔しさと信じてもらえない辛さを味わいながらも生きてこれたのは家族が信じてくれたからだ。

「お母さんはミリアムの味方よ!」

「ミリアムはそんなことしない子だって父さんはちゃんと分かってるよ。」

「姉ちゃんは凄く優しいって知ってるもん!だから信じるのは当たり前!」

ミリアムは家族の優しさを支えに学校に行った。家族は行かないでと言ったがここで登校しなかったらデボラは騒ぎ出し他の生徒が標的にされる筈。
ミリアムはあんな奴に負けるものか!と通い続けた。

そんな日々が2ヶ月が過ぎた頃、デボラがミリアムを見る目が怪しくなってきていた。
理由はミリアムの両親が学校に呼び出されて担任の話を聞いて真っ向から否定したからだ。

「デボラって子は右頬を怪我したって言ってますけどミリアムは右利きなんです。右利きのミリアムに切りつけられたら左側の頬に傷がつます!」

「しかしカッターにはミリアムさんの指紋が検出されてます。」

「それもおかしいんです!ミリアムが言うにはカッターの柄の部分にはハンカチが巻かれてたって言ってました!それにデボラって子は湿布を1枚貼ってるくらいなのにうちの子は全身怪我だらけなんですよ!普通の人が見たら苛められてるのはミリアムだって分かります!」

ミリアムの両親は担任の教師にデボラが嘘をついているのではないかと怒りをぶつけた。



デボラは今まで嵌めた人間は家族、親友、恋人に見捨てられていたのにミリアムの家族は違ったことに苛立った。

『ああ!何で可愛いデボラを信じないのよ!面倒だから始末しようかしら。正直あのブスを苛めるのもブスの彼氏も飽きちゃったし。友人とやらもつまんないしね。』

下品な顔でデボラは笑った。


ミリアムの両親は学校の教師でさえ話にならないと諦めた。そしてこれ以上ミリアムを傷付けさせないために引っ越しを考えていたがミリアムは引っ越しに反対した。
理由はデボラに負けたくないことと、引っ越しをしたら弟は友人達と離れ離れになってしまうからだ。

「あたしは反対よ!ここで逃げたらビーニは他の子をターゲットにすると思うしまたクラスの子達に暴力を振るわせようとする!それにジルは友人達と会えなくなるわ!」

ミリアムの言葉を静に聞いていた両親は口を開く。

「ミリアムがビーニさんに負けたくないのは分かったわ。けどどうやってビーニさんと戦うの?」

「戦うのはビーニさんだけじゃない。クラスの子達とも戦うことになる。何か手はあるのか?」

「っ!!」

ミリアムは俯いた。両親の言う通りデボラだけではない。裏切った元恋人と元親友、クラスの生徒達とも戦うことになる。そして手立ては何一つない状況。
悔しそうにするミリアムに弟が呆れるように言った。

「俺だったら転校して数日の奴と友達だったら友達を信じるよ。なのに姉ちゃんを簡単に裏切った彼氏と親友は薄っぺらい人間だってことだろ?そんな奴等は既に恋人でも親友でもないよ!」

「!?」

ミリアムは弟に言われてハッとした。恋人も親友も簡単に裏切った。それはミリアムと過ごした時間を大切にしていないということだ。大切にしていたらミリアムの方を信じる筈。


「姉ちゃん、新しい学校で友達と彼氏を作ろう。俺も新しい学校で友達沢山作るから心配ないよ。」

「ジル・・・。」

「ミリアムは充分頑張った。父さんはそう思うよ。」

「だからもう止めようね?」

ミリアムは泣きながら頷いた。




引っ越しの準備が終わると段ボールの中に食器や包丁等もしまっているためにスーパーで夕飯を買うことになった。

「ミリアムは怪我が治ってないから留守番ね。この時間帯は混むから人とぶつかったりするし。」

「分かったわ。」

母親に言われて素直に従うミリアム。確かに人とぶつかって運悪く怪我を増やしたらどうしようもない。

「それじゃ行ってくるから。」

「体が辛かったら横になりなさいね。」

「姉ちゃん行ってくるねー。」


両親と弟はミリアムを家に残して車でスーパーに向かった。




「遅いなぁ。スーパー凄い混んでるのかな。」

ミリアムは連絡しようと携帯をポケットから取り出すと携帯の着信音が鳴った。てっきり両親のどちらかだと思って携帯番号を確認しないで電話に出ると警察からだった。

『ブランディさんですか!?』

「はいそうです。」

『あなたのご家族が事故で亡くなられました。』

「!!??」



ミリアムはそこからはあまり良く覚えていない。
気が付いたら父方と母方の祖父母と母の兄夫婦と妹夫婦がいて葬儀が終わるところだった。

「ミリアム、辛かったね。これからは叔母さんと暮らそうね。」

ミリアムは呆然と頷くだけだった。


叔母の家に引っ越してミリアムは怪我が治り次第学校に通うことなった。


キャリアウーマンの叔母と今日から出張の叔父は既に出勤していて、ミリアムはお世話になるからと手伝いを買って出て家の前を掃除していた。
箒で掃いているとミリアムにとって悪魔のような声が聞こえた。

「あ~ら、ブスのミリアム、久しぶりねぇ~?」

ミリアムは手にしてた箒を落とし箒はカランと音を立てた。



そこにいたのはデボラだった。


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