悪魔


見た目はお洒落なレストラン。その周辺にはマンションが幾つかある。

「沢田さん、ここ一帯がディアベル本部だよ。」

玲一が言うとツナをレストランの中に通した。

入るとテーブルと椅子が設置されていてメニュー表も置いてある。

ツナはレストランにしか見えないんだけど?と思うがレストランの奥のドアを玲一が開くと日本支部のように階段があった。

階段を下りていくとやはり日本支部のようにいくつもの部屋があった。

真ん中の部屋のドアを玲一が開けると一人の男性がいた。

「沢田さん、偉そうに座ってるのがディアベルのリーダーのダンテだ。」

玲一のいい加減な紹介にダンテは眉を寄せるが立ち上がってツナの側に行く。

「初めましてダンテ・ランベルティだ。ディアベルは沢田綱吉さんを歓迎する。」

「は、初めまして沢田綱吉です。」

ダンテと緊張気味のツナは握手をする。それを見ながらソフィアは飲み物を用意してミリアムを呼んだ。

「ミリアム、飲み物淹れたから配ってくれる?」

「ソフィアの淹れたコーヒーは中々美味しいだよね。沢田さんも気に入るかも。」

ツナはミリアム、ソフィアという名前にポカーンとしていた。

「ええっと、小林美香さんと半田苑子さんだよね?」

混乱するツナにミリアムとソフィアは顔を見合わせてそう言えばと説明した。

「小林美香と半田苑子は偽名なんだ。あたしはミリアム・ブランディ。」

「私はソフィア・カランドラよ。」

そう言うとソフィアは術を解き瞳の色を戻しミリアムはカラーコンタクトを取った。

「私とミリアムは偽名で潜入してたの。さすがに本名だと下手したらイタリアに強制送還される可能性があったから。」

「そうだったんですね。」

納得するツナにミリアムが話しかける。

「あたしのことは名前で呼んでね。」

「私も。仲間になったんだから。」

「分かりました。俺のことはツナって呼んで下さい。」

改めてよろしくねとお互いに言うとダンテが咳払いをしてソフィアとミリアムは肩を竦めた。


「ツナは明日から暫くの間はイタリア語を覚えること。それと戦闘技術を身に付けることに専念しろ。イタリア語を教えるのはミリアムとソフィアだ。」

「「了解。」」

「戦闘技術は玲一が教えろ。」

「了解。」


こうしてツナはダンテの指示でイタリア語と戦闘技術を玲一達に教わることになった。


ディアベル本部にツナの部屋が用意されるとツナはベッドに寝転んだ。

デボラに陥れられて刑務所に入れられ、玲一達に助け出され雲雀にも再会した。

「何か一気に色んなことが起きたよね。」

ツナは明日に備えて眠りに就いた。


ーーーー

翌日朝食を取るとソフィアが筆記用具をツナに渡した。

「ツナ、イタリア語の勉強よ。」

「うん。」

自信がないのか小声で答えるツナにソフィアは笑顔で大丈夫だと言った。

「大丈夫よ。直ぐに喋れるようになるから。」

「本当?」

「ええ。ここはイタリアでイタリア語が飛び交ってるのよ。直ぐに聞き取れるようなるし喋れるようになるわ。」

「そっか。ここイタリアだったね。」

『イタリア語って難しそうだけど頑張らなきゃね。』



ソフィアの教え方は実に丁寧で分かりやすかった。横暴な黒衣の家庭教師とは雲泥の差だ。

ツナは発音と単語を覚えようと必死になる。そんなツナの様子を見てソフィアはこの分なら早く覚えそうねと安堵した。


ーーーー

シャワールームでミリアムは髪の色を戻していた。




「それにしても玲一の口振りだとツナはビーニに陥れられたみたいだよね。詳しい話は聞いてないけど。」



自分を嵌めて家族を虫けらのように殺したデボラ。

嘘を付いて他人を引き込む癖に他人を見下し馬鹿にするデボラ。

ミリアムは陥れられた日を思い出した。


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