悪魔
支部のリーダーの後ろには他のメンバーがナイフや銃等の得意な武器で構えていた。
「玲一さん、その不法侵入者は知り合いですか?」
穏やかな口調だが目は笑っていない。不法侵入者の雲雀を睨んでいる。雲雀は支部のリーダーと他のメンバー達を見て咬み殺そうと殺気を出しトンファーを出そうとしていた。
支部の建物の中で雲雀と支部のメンバー達に暴れられたら倒壊してしまう。雲雀はそれくらいの殺気を出している。支部のメンバー達も同じく。玲一は簡単に説明した。
「彼は雲雀恭弥。俺の遠縁で今回の任務のことで少しだけ関わっている。」
玲一の説明で支部のリーダーは後ろのメンバー達に武器を下ろすように命令した。
「・・・成程。雲雀恭弥さん中に入って下さい。我々が敵う相手ではなさそうですしね。」
支部のリーダーは雲雀を中に通した。
雲雀は通された部屋で席に着くと支部のリーダーは我々に何が聞きたいと単刀直入に聞いた。
「君達の組織について。僕は玲一に沢田のことを相談した。玲一は警察と知り合いみたいだったし僕の知ってる情報を教えたからてっきり警察が動くかと思えば動く気配がない。玲一に動かない理由を聞こうとしても君は行方が分からない。仕方ないから帰国する時に駄目元で空港の職員を脅して監視カメラを見たら玲一と女二人が映っていて職員に調べさせたら玲一達は日本行きだって分かったんだよ。後は僕の部下を使って調べたらここに辿り着いた。」
玲一と支部のリーダーと部下達は雲雀の行動力(というか空港の職員を脅すという傍若無人ぶり)と情報網に冷や汗だ。
「俺の行方を追ってここまで来たのは分かった。でもこの組織は恭弥にとって利益はないと思うけど?」
「そんなの聞かなきゃ分からないだろ?」
食い付いて離れない雲雀。玲一は仕方がないとディアベルのことを話した。
「俺とここにいるメンバーは秘密結社ディアベル。マフィア殲滅を中心にした組織だ。恭弥の求める利益は多分ない筈だよ。」
雲雀は確かにと思った。
雲雀が欲しいのは自分が立ち上げる風紀財団に融資させるパトロンのパイプだ。マフィア殲滅の為の組織にはあまり利益はない。
しかし今の自分には充分に必要な組織だ。ツナが関わっているのだから。
「マフィア殲滅の為の組織。確かに僕の利益にはならないね。でも今は僕にとって必要な組織だ。」
「沢田綱吉か。」
「・・・彼は大切な友人だからね。」
少し淀むような声で言う雲雀に玲一は成程と一瞬だけ悪戯っ子のような顔した。
『へぇ。沢田綱吉に惚れてるわけか。あの恭弥がね。』
雲雀は隠しているつもりだが、玲一の経験から言わせれば過去に自分に言い寄る女と同じ目をしている雲雀。はっきり言ってバレている。
支部のリーダーが話が逸れてきていると促した。
「雲雀恭弥君。玲一さんが言ったようにマフィア殲滅の為の組織だ。沢田綱吉を脱獄させる手筈は進んでいる。沢田綱吉を助けたら連絡しよう。君にとって沢田綱吉さえ助かればここは無用な筈。今日のところはお引き取りを。」
遠回しに出ていけと言ってくる支部のリーダーに雲雀は自分に指図するなと腹を立てるがボンゴレとキアロスクーロが裏で動いている以上迂闊に動けない。身動きが取れない自分に苛立ち歯を噛み締める。それを面白そうに見る玲一はある提案をした。
「恭弥。君の情報網は侮れない。同盟を組まないか?」
自分の居場所を突き止めた雲雀の情報網は使える。それに彼はボンゴレの関係者だ。(雲雀が聞いたらボンゴレの人間じゃないとトンファーで暴れまわるだろう)
「は?僕は誰とも組む気はないよ。」
「沢田綱吉のこともあるし、ボンゴレの情報も欲しいしね。」
ツナを持ち出されて雲雀はツナを助ける為ならと了承した。玲一はツナを助けたら雲雀をからかってやろうと思った。
ディアベルと同盟を組んだ雲雀はいつ頃ツナが脱獄するのか聞いてきた。
「今ディアベルのメンバーが刑務所に潜入して沢田綱吉と接触した。後は刑務所のトップを何とかすれば脱獄出来る。」
ツナとミリアムとソフィアが脱獄したら刑務所は大騒ぎだ。キアロスクーロとボンゴレにバレる可能性がある。
「何とかってどうするわけ?」
「金で買収して矯正監を入れ替えるように仕向ける。もうその様に動いてるしね。」
潜入したディアベルメンバーが既に買収していた。矯正監が退職して新しい矯正監が来る日に就任のゴタゴタに乗じて脱獄させる計画だ。
「今の矯正監がいきなり退職するんだ。かなりゴタゴタして慌てて新しい奴を任命した。だから就任する前日に作戦決行だ。」
「成程ね。仮にデボラ・ビーニとキアロスクーロとボンゴレにバレても矯正監が変わっていたら沢田の足取りは分からなくなるってことか。」
雲雀はツナの顔を思い出すと同時にツナを刑務所に入れたデボラ・ビーニの胡散臭い笑顔を思い出した。
『あの牝豚のせいであの子は!!!』
雲雀にとって愛しい小動物を痛め付けたデボラとリボーン達は咬み殺す対象でしかなかった。