悪魔
朝早くの起床にミリアムは寝ぼけ眼で房から出ると既にソフィアとツナが房から出ていて並んでいた。
「沢田さん。何で並んでるの?」
ソフィアが隣で立っているツナに話しかける。
「点呼を取るから・・・そのあと運動して朝ごはんだよ。(刑務官に説明聞いてなかったのかな?)」
「それじゃその後に刑務作業なのかしら?」
「うん。」
ツナとソフィアの会話を聞いてはどうやらツナはマフィアらしい性格ではないらしいとミリアムはホッとした。
点呼と体操が終わると受刑者達は朝食を取り始める。雑居房で食事をするためツナはソフィアと食べることになる。
「隣良いかしら?」
ソフィアに聞かれてツナはおずおずと頷く。
「率直に聞くけどここから出たくない?」
ツナは出たくても自分は出れないようになっている。ソフィアの言葉に驚くも無言で俯いた。
「私ね脱獄しようと思ってるの。だから貴女もどう?」
ツナはふるふると首を横に振った。
「俺は良いよ。それに脱獄しても捕まったら結局は刑務所に入れられるよ。」
「貴女の罪状は知らないけどずっとここに居るつもり?下手したら老人になるまでここで過ごすハメになるわよ。どうせ捕まると思ってるなら一回くらい脱獄しても良いと思わない?」
貴女はまだ若いんだからと付け加えるソフィア。ツナは思う。
『もう一回で良い。外に出たい。捕まるかも知れないけどもう一度外に出たい。』
家族、家庭教師、友人達、ボンゴレにお払い箱だと言われてデボラとキアロスクーロは自分を忌々しく思っている。
自分にはもう誰もいない。逃げ回ってもリボーンとボンゴレ、デボラとキアロスクーロ以外誰も困らない筈。幸い働ける年齢だ。アルバイトを掛け持ちしながら生活は出来るだろう。
考え込んでるツナにソフィアは声をかける。
「沢田さん?」
「半田さん。その話は本当?」
「ええ。勿論よ。」
ソフィアの目は嘘を言っていないのが分かる。ツナは決めた。
「俺も脱獄するよ。」
ソフィアはツナと軽く握手をしてそれを見ていた見張ってるふりをしている看守は隣の雑居房のミリアムに目配せをし、作戦を開始すると玲一に連絡を入れた。
ーーーー
刑務所に潜入しているメンバーから連絡を受けた玲一は窓から外を見てハァ~ッとため息をした。
外には雲雀の姿があった。
「どうやら俺のやっていることを嗅ぎ回ってるみたいだ。」
ディアベルの支部付近でうろうろされても支部のメンバーに迷惑がかかると玲一は部屋を出た。
雲雀は出てきたと口の端を上げた。玲一は無表情だ。
「俺を嗅ぎ回ってるのか?」
「浪人や留年でもしてなければ君は社会人だ。こんな何もないような場所で潰れた喫茶店に出入りしている玲一は何の職業なの?」
工場は幾つかあるが全て廃業している。回りは何もない。道路はあるが誰もいない場所に来る人間はいない。寧ろ何もない場所にいる方が怪しい。
「そんなことを知ってどうする?」
「僕の利益になりそうだからね。」
雲雀がそう言うと喫茶店に向かっていく。玲一は慌てて止めようとするが雲雀は喫茶店のドアを開いて入った。
喫茶店の中はテーブルと椅子、レジカウンター、厨房があり至って普通だ。
雲雀は見渡すとスタッフオンリーと書かれた扉を見つけ、ここに何かがあると分かりドアノブに手をかける。玲一は雲雀の腕を掴んだ。
「いい加減にして。恭弥には関係ないだろ?」
眉を寄せて睨み付ける玲一。雲雀は口を開いた。
「沢田の件があるんだ。関係あるよ。それに僕は沢田と繋がりを持った時点でグレーゾーンの人間だ。多分君もグレーゾーンの人間だろ?僕と同じような匂いがするよ。」
「グレーゾーン?」
言い合いをしていると扉が開いて雲雀に銃口を向ける支部のリーダーが現れた。