番狂わせ


ツナを陥れた椎子は上手く立ち回りリボーンと了平、並盛中の生徒、教師、ボンゴレを味方に付けていき、まんまとボンゴレ10代目候補の座を手に入れた。

ただ京子と花以外にも椎子に付かなかった人物もいた。

奈々は我が子が椎子を苛めているとは思わない。大怪我しているツナと違い苛められている椎子は怪我一つしていない。それにツナは優し過ぎる性格で苛めなど出来ないのも分かっている。それ故に椎子を信じなかった。

居候のランボ、イーピン、フゥ太もまた椎子を信じなかった。子供達からしたらツナは優しい姉貴分だ。そして以前椎子が沢田家に来た時、椎子はランボ達を値踏みするような目付きで見てきた。まるで利用出来るか出来ないか見定めるように。その目は子供達を馬鹿にしていた。そんな椎子を見て子供達は椎子が嘘を付いていてツナは無実だと分かった。


一方、注意深くツナと椎子を見ていた人物もまたいた。

骸はリボーンと椎子が黒曜ランドに来た時にツナの話を聞いたが、苛められいると言うが苛めを受けている人間がなぜもそう苛めの内容を明るく話すのか?と疑問しかない。普通なら明るく話すことなどない。
そんな椎子を見て骸は椎子の陳腐な演技に呆れ返っていた。だが椎子がボンゴレ10代目になるなら骸自身が動かなくとも早々に潰えるだろうと踏んだ。そして後日、骸はクローム達を引き連れて行方を眩ました。

雲雀はツナと椎子の状況を把握する為に静観していたが椎子の話を聞いても所々辻褄が合わない。それに何よりも化粧と香水等校則違反している椎子は信じるに価しないと考えツナよりの中立に。
後に椎子がボンゴレ10代目に任命されると雲雀は見切りを付け、ボンゴレギアをボンゴレ本部に送り付け、ボンゴレとの関係を切った。

椎子は自分の味方に付かなかった奈々、子供達、雲雀、骸に腹を立てていた。

奈々はツナの肉親だ。その奈々がツナを罵って育児放棄をしたらツナは傷付き弱っていく。弱りきった所でツナは言いなりになる。そこで助けてやると言えばツナは奴隷になるだろう。仮に言いなりにならないなら奈々を人質にしてしまえば良い。人質に関しては子供達も使える。

「もう何なの!あのクソガキ共!こっちが話し掛けてやってるのにちっとも懐かないで!特に沢田奈々はムカつく!利用価値も高いのに!」

自室で喚く椎子は壁に貼ってある奈々と子供達の顔写真を剥がしびりびりに破り捨てると雲雀と骸達の顔写真に目をやる。

雲雀と骸は是非とも自分の守護者にしたかった人物。雲雀は守護者最強と言われていたし、骸は凄腕の幻術士で肉弾戦にも長けている。何よりも獄寺、山本、了平よりも美形で彼等を侍らせたかったのだ。だが実際には雲雀は一度話を聞いてはくれたものの、それ以来椎子が応接室に来ても入室を拒まれ、骸達に至ってはボンゴレギアを黒曜ランドに置いて行方を眩ましたのだ。

「どいつもこいつも歯向かいやがって!この可愛い椎子の何処が気に入らないのよーっ!」

椎子は喚きまくりテーブルを蹴り倒した。

ーーーー

ツナが陥れられて1ヵ月が経過すると、イタリアから家光が沢田家に帰宅した。家光は帰って早々にツナを殴り付けた。

「この恥知らずが!」

「痛ッ!!」

ツナは頬を押さえ泣きながら無実だと叫ぶように言ったが家光は聞き入れない。

「嘘を付くんじゃない!情けないぞ!」

更に殴ろうと拳を振り上げる家光に奈々がツナの前に立ち止めに入る。

「止めてください!ツナの話を聞いて下さい!」

「聞くまでもないだろ?椎子嬢は泣いていたんだぞ!」

「ツナだって泣いて無実だと言ってるのよ!それに怪我だらけのツナに対して背瀬川さんは怪我一つしてないわ!!」

「それは苛めを止めないツナがリボーンと獄寺達に制裁されているからだ!」

罰を受けて怪我しているのはツナの自業自得だと言い切った家光は奈々をやや乱暴に突き飛ばした。

「きゃっ!?」

「母さん!!」

突き飛ばされた奈々に駆け寄ろうとするツナ。家光は駆け寄ろうとしたツナをまた殴り付ける。

「いっ!!!」

「ツナ!大丈夫!?」

慌ててツナの傍に行く奈々に家光は溜め息を吐いた。

「奈々はツナに騙されているんだ。椎子嬢の多彩な才能に嫉妬して苛めていると報告を受けている。」

一旦話を切るとツナを睨み付ける。

「ツナ。お前には失望した。9代目もそう仰っている。」

そう言うと家光は懐から書類を出した。

「10代目候補は椎子嬢に変更した。そしてツナは償いとして椎子嬢の専属の部下だ!」

「そ、そんな!?」

「身から出た錆だ!」

家光は9代目の勅命書をツナに投げ付け、ツナのボンゴレギアを奪い取ると自分が使っている部屋に戻っていった。

一連の騒ぎを見ていたリボーンとビアンキはツナの処遇に冷笑した。

「ダメツナ!明日からねっちょり椎子の部下として修業だぞっ!!」

「本当にダメな子ね。ツナは。」

ツナを馬鹿にしてリボーンとビアンキはそれぞれの部屋に戻る。

奈々は氷嚢を用意してツナの頬に当てる。

「ツッ君。もう今日は母さんと一緒に客間で過ごしましょう。そして明日この家を出て行きましょう!」

「えっ!?でもいつかリボーンも気付いてくれるよ。」

奈々は直ぐにでもツナに暴言を吐き、暴力を振るうリボーンを引き離したかった。
だがツナはいつか必ず椎子が嘘を付いていることに気付いてくれると信じていた。だから奈々はツナの思いを尊重していたが、リボーンの報告書を見ただけで家光はツナを殴り付けたのだ。そんな家光を見て奈々は失望した。

「でももう家光さんとリボーンちゃん達はツッ君のことを信じないと思うわ。」

「でも。」

「信じるなら最初から信じるわ。京子ちゃんと花ちゃんのように。それにもうツッ君は気付いている筈よ。家光さん達はボンゴレという会社の為にツッ君を利用するだけだってことに。」

「っ!?」

ツナは気付いていた。ツナには超直感があるのだから。でも信じていたかった。
そんな様子のツナを奈々は優しく抱き締める。

「家光さんとは離婚するわ。そして違う場所で暮らしましょう。」

ツナは頷きかけたが首を横に振る。

「母さんの気持ちは凄く嬉しい。でも##RUBY#並盛#ここ##を出て行ったら絶対京子ちゃんと花を人質に取るよ。最悪俺のように陥れられる!」

だから並盛から出て行く訳にいかないと言うツナ。
奈々は信じてくれている京子と花のことを思うと引っ越しは出来ないと感じ、一旦、保留にすることにした。


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