番狂わせ
悲鳴を聞いた獄寺達は駆け付けると左手の甲から出血し、泣いている椎子が廊下に居た。
「た、助けて!ツナちゃんがムカつくって言ってきて切りつけられたの!」
獄寺と山本は驚くがツナの足下に落ちているカッターを見て椎子を信じてしまった。
「10代目いや沢田何やってやがる!」
「友達の椎子に酷いことすんなよな!」
ツナは誤解だと言うが椎子を信じてしまった獄寺と山本は嘘を付くな!謝罪しろ!と捲し立てる。
「俺は何もしてない!!」
「だったら何で椎子さんが怪我してんだよ!てめえがやったんだろうが!」
「早く謝るのな!」
「背瀬川さんが勝手にやったんだよ!信じて!」
ツナは必死に訴えるが獄寺と山本は聞く耳を持たない。そして集まった生徒達の中の誰かが仕返しをしようと言い出した。
「背瀬川の代わりに俺達が仕返ししてやろうぜ!」
この言葉が合図になってツナを取り囲み暴力を振るい出した。ツナは自分は何もしていないと叫ぶが誰一人聞きかない。暫くするとツナが気絶して動かなくなった。そんなツナを見て獄寺達は嘲笑って教室に戻って行った。
椎子の悲鳴を聞いた京子は何か嫌な予感がすると感じ悲鳴が聞こえてきた方に向かっていた。運が悪いのか委員会の話し合いをしていた教室はツナと椎子が居た教室から一番離れていた。
急いで行くとツナが仰向けで倒れていた。京子は慌てて駆け寄り廊下にしゃがみツナに声をかけようとするがツナを見て顔色を青くさせた。
頬は腫れていて手足に痣があり、唇は切れて血が出ていた。
「い、一体何があったの!?」
京子は先ずは保健室にツナを運ぼうとするがツナより少しだけ背丈が低い京子はどうやって運ぼうかと悩んだ。
「どうしよう。気を失ってるから背負うのは難しいかも。抱き抱えるのなら私でも出来るかな。」
京子は慎重にツナの背中と両膝の裏に腕を入れようとすると「うっ・・・。」と声が聞こえた。
「ツナちゃん!?」
京子の声でツナはゆっくりと瞼を開ける。
「・・・京・・・子ちゃん?」
目を覚ましたツナに安心した京子は抱き抱えて保健室に足を向けた。
保健室にシャマルは居なかったが京子は気にも止めずにツナをベッドに座らせると治療を始め、ツナの腫れた頬に湿布を貼りながら何があったのか聞いた。
「何があったの?」
「・・・聞いてくれるの?」
不安そうにするツナに京子は力強く頷いた。
「だから教えて?」
「うん。」
椎子がボンゴレ10代目候補の座を譲れと迫ってきたこと。
断ったら椎子は自分の左手の甲をカッターで切りつけて騒ぎを起こして陥れられたこと。
椎子の悲鳴を聞いて左手の切り傷を見た獄寺達は椎子の嘘を信じてしまい椎子の代わりだと言って暴力を振るわれたこと。
ツナは京子にすべてを話した。
「陥れられちゃって。俺は背瀬川さんの道具にはなりたくなかったし。」
「そんなことがあったんだね。でも背瀬川さんはいつもツナちゃんを狙うように見てた理由が分かったよ。」
ツナは驚くように言った。
「え!?京子ちゃん気付いてたの!?」
ツナや自分達を見る椎子の表情を思い出し京子は体をふるりと震わせた。
「うん。だって背瀬川さんってツナちゃんを見る時は目付きが怖かったから。それに回りの人達をいつも見下している感じがしたの。」
「多分背瀬川さんはボンゴレを手に入れる為なら人でも何でも使うと思う。現に嘘を付いて回りの人達を利用した。」
「でもここままじゃツナちゃんきっと酷い目にあうわ。何とか誤解を解かないと。私、協力するね!」
可愛らしくガッツポーズをして誤解を解こうと言ってくる京子にツナは信じてくれるのかと聞いた。
「俺のこと信じてくれるの?」
おずおずと聞くツナに京子は勿論だと返した。
「私は信じるよ。だってツナちゃんは親友だもの。それにいつも守ってくれたから。信じるのが普通でしょ。」
自分と同じ女の子なのに先頭に立ち振るいたくない拳を振るっていつも真っ先に助けて守ってもらった。そんな心優しいツナを信じるのは京子にとっては当たり前なのだ。
信じてくれる京子。ツナは嬉しかったが。
「ありがとう京ーーー」
京子ちゃんと言おうとした時、超直感が警報を鳴らした。
〈京子と花が傍にいたら背瀬川椎子が京子と花を陥れる。〉
超直感の知らせにツナは目を見開いた。様子がおかしいツナに京子は大丈夫かと聞いた。
「どうしたの?ツナちゃん大丈夫?」
ツナは京子に超直感が知らせたことを話した。
「この騒ぎが収まるまで京子ちゃんは俺の傍に居たら駄目だ!」
「え!?」
「超直感が知らせてきたんだ。俺を庇ったら背瀬川さんが京子ちゃん取り上げる花を陥れるって。」
京子はどういうことだと首を傾げる。
「私を陥れる?確かに私は##RUBY#守護者#お兄ちゃん##の妹でボンゴレの関係者だけど何の力もないし一般人だし花だって一般人だよ。」
そんな自分と花を陥れて椎子が何の得になるんだと聞くとツナは利用しようとしていると話した。
「俺が背瀬川さんを拒否し続けたら背瀬川さんは京子ちゃんと花を利用しようと考えてるのかも。」
「利用!?もしかして私や花を陥れてツナちゃんが背瀬川さんの言うことを聞くようにさせる為に?」
「多分。だから暫くは離れた方が良いと思うんだ。」
京子は理解はしたが納得は出来なかった。だが京子自身戦える訳もなく。寧ろ傍に居たらツナが辛い思いをするだけで。
「・・・・・・分かった。でも私はツナちゃんの味方だよ!」
「ありがとう京子ちゃん。」
京子は戦えない分、影で支えようと心に決めた。
そしてその話を京子から聞いた花もまた影でツナを支えようと決めたのだった。