番狂わせ
パーティー当日ーーー
同盟ファミリーが開いたパーティー会場に着いたツナと椎子とリボーン達。会場に入ると招待されていた他のファミリーのボスやボスの名代で来ていた幹部がボンゴレのドンナである椎子に挨拶を交わしていく。
リボーンはツナの存在が椎子の品格を下げるからと椎子の側から離れろと小声で言った。
「ダメツナが居ると椎子とボンゴレの品位が落ちる!てめえはどこかに行きやがれ!」
言われたツナは無言で頷き椎子達の側から離れて行った。
ツナはを歩きながらあまり人の居ない場所を探していると音楽が流れてきた。
「これからダンスか。それならバルコニーの方に行こうかな。」
バルコニーに行くと会場内はダンスが始まる。
椎子や他のファミリーの人間が踊っているのをぼんやり見詰めているツナはため息を吐く。
毎日椎子に道具のように扱われリボーン達は制裁だと言って暴力を振るってくる。おまけに食事も抜いてくる。おかげで身体は傷だらけで痩せ細っている。正直、立っているのも辛い。
「疲れた・・・。母さんとフゥ太とイーピン元気かな。ランボはボヴィーノで元気にしてるのかな。」
信じてくれた奈々達に思いを馳せていた。
ある男性は信頼している右腕を連れて壁の花と化していた。
「ボス。ダンスはされないのですか?」
「今は敬語は良いよ。それから密着するダンスは嫌いだ。」
眉目秀麗でかつマフィアの中でもボンゴレに次ぐ規模のアルジェントファミリーのボス。それらの肩書きで寄ってくる女を鬱陶しいと言わんばりの態度のボスに右腕は苦笑いをした。
ボスと呼ばれた男は柱に寄りかかりながら踊っている人間達を見ながら何気無くバルコニーの方に目を向けた。
バルコニーにはシンプルな黒のスーツを着ている茶髪の女性がいる。
『・・・都奈みたいだな。』
男は幼い頃のツナが成長したら多分あんな感じだろうと思い、ちょっとした興味を持つ。
「あの女にちょっと声かけてみようか?」
そう言って男はバルコニーの方に向かい、右腕は珍しいこともあるものだと男の後を追った。
バルコニーで過ごしているツナは声を掛けられ声がした方に顔を向ける。
『・・・誰だろう?俺に話し掛ける人なんて居ない筈。でもどこかで見たような?』
ツナは自分に声を掛けるマフィアは居るわけがないと怪訝そうにした。
一方、アルジェントファミリーのボスは大きな琥珀色の瞳と癖のある茶髪を見て直ぐにツナだと分かった。だが幼い頃と違い暗い表情に痩せ細った体には驚きまたスーツに付けているボンゴレのバッジを見て更に驚いた。だが顔には出さなかった。
「あ、あの何か用ですか?」
遠慮がちに男に聞くツナ。男はにっこりと笑った。
「久しぶりだね。都奈。」
ツナは大きな目を見開いた。自分のことを都奈と呼ぶ男は一人だけ。
「も、もしかして煌君!?」
「そうだよ。いつも都奈と遊んでいた月読煌だよ。でも驚いたよ。都奈がボンゴレの人間だなんて。」
「煌君もマフィアなの!?」
「俺はアルジェントファミリーのボスだよ。」
「煌君がアルジェントファミリーのボスなんて知らなかったよ。」
幼馴染みの煌が引っ越ししたのは親の都合としか知らされてなかったツナ。その煌がアルジェントファミリーのボスとして自分の目の前にいることに驚きを隠せなかった。
ツナは一般人だと思っていた煌。ツナはいきなりマフィアの世界に引き摺り込まれたと苦笑まじりに言った。
「初代ボンゴレの直系の血筋ってだけで引き摺り込まれたんだ。他の10代目候補は皆死んじゃってるからって。」
「初代ボンゴレの直系!?でもボンゴレのボスは7世の傍系の背瀬川椎子だ。普通なら初代の直系の都奈がドンナなんじゃないのか?」
「最初は俺が10代目候補だったんだけど・・・・・・。」
翳りを見せるツナに煌は真剣な顔をして聞いた。
「最初は?一体どういうことだ?話してみなよ。」
「え?でももうどうしようもないし。」
「再会した幼馴染みが暗い顔をしているのは放っておけない。」
煌は気晴らしくらいにはなると思うよと言って安心させるように表情を和らげツナが話すのをじっと待った。
煌の表情に安心したツナはポツリポツリと話していったのだった。