番狂わせ


翌日、アルジェント本部の玄関でツナはルナと別れを惜しんでいた。

「ルナちゃん今までありがとう。」

《都奈ちゃんと仲良くなれて良かった。京子ちゃんによろしくね。》

「うん。」

別れを惜しむツナとルナに煌は時間だと伝える。

「そろそろ時間だ。空港まで送るよ。」

「分かった。それじゃルナちゃん元気で。」

《ありがと。都奈ちゃんも元気でね。》

ヴァレリオがリムジンのドアを開けると別れの言葉を交わしたルナとツナ、奈々とフゥ太はリムジンに乗る。
ヴァレリオは助手席、煌は運転席に乗ると空港までリムジンを走らせた。


空港に着くとフゥ太の今後の話になった。

「僕ね色々考えたんだけどアルジェントの客人として身を寄せることにしたんだ。煌さんとヴァレリオさんもOKだって。」

「「えっ!?」」

てっきり一緒に生活すると思っていたツナと奈々は驚いた。

「フゥ太?」

「本当なの?」

「うん。僕はマフィアじゃないけど情報屋ってことで狙われるんだ。情報屋はグレーゾーンみたいなものだし。僕がマフィアやヤクザに襲われたらツナ姉とママンに迷惑がかかる。だからいっそのことアルジェントに保護して貰おうって思って。」

そもそもフゥ太はマフィアに追われてツナに助けて貰って沢田家で生活していた。だがツナが一般人に戻ったと分かったフゥ太はツナと奈々の為に沢田家を出ることにした。
だがフゥ太自身はあくまで情報屋。戦闘技術どころか護身術さえ出来ない。そんなフゥ太は煌とヴァレリオに相談した。そして話し合った結果、煌は客人として保護することに決めたのだった。
ツナと奈々の為に考えたフゥ太。ツナと奈々はそんなこと気にしなくて良いのにと思ったが、フゥ太に何かあった時、自分達ではどうにも出来ないこともある可能性は高確率である。それならばアルジェントで守って貰った方が安心だ。

「寂しいけどフゥ太が決めたなら俺は尊重するよ。」

「フゥ太君ずっと傍に居てくれてありがとう。」

抱き合っている三人を見て煌は微笑ましそうに見ているとヴァレリオが煌に搭乗の時間だと教えた。

「都奈、奈々さん搭乗の時間だよ。安心してフゥ太は俺達アルジェントが守るからさ。」

奈々とフゥ太から離れるとツナは煌とヴァレリオの傍に行った。

「ヴァレリオさん本当にありがとうございました。」

「気にしなくて良い。俺は煌の命令で動いていた訳でもあるしさ。京子さんによろしくな。」

ツナは力強く頷くと煌に向き直る。

「煌君本当にありがとう。俺達もう会えないけどずっと幼馴染みだよね?」

少し不安げに見上げてくるツナに煌はツナの頭を撫でた。

「勿論さ。俺と都奈は会えなくてもずっと幼馴染みだ。」

笑顔で答える煌に都奈は嬉しそうに笑った。そして笑顔で。

「煌君、ヴァレリオさんさようなら。俺は忘れないよ!」

奈々と搭乗口に向かうツナに煌とヴァレリオとフゥ太は手を振った。


都奈と奈々が乗った飛行機が離陸し飛んで行くのを見届けた煌とヴァレリオとフゥ太。フゥ太は少し空港内を見てみたいと言ってきた。煌は後ろに控えたいた部下にフゥ太の護衛を命じ、フゥ太は部下と空港内を見て回ることした。

フゥ太と部下の姿が小さくなるとヴァレリオは面白そうな表情で煌に言った。

「本当に良かったのか?」

「何がだ?」

本当に何のことだと分からない顔をする煌。

「何がって。都奈さんだよ。好きなんだろう?都奈さんは煌の好みのストライクだ。」

「・・・。」

黙秘する煌にヴァレリオは軽く溜め息をした。

「都奈さんが煌の妻になったらアルジェントは安泰なんだがな。彼女には超直感があるし。」

今度は煌が軽く溜め息をした。

「いや、その##RUBY#超直感#ボンゴレの血筋##が都奈にとって厄介だったろ?仮に妻にしたところで優し過ぎる都奈がマフィアとしてやっていけないのは分かるだろ。それに。」

「それに?」

ヴァレリオが聞き返すと煌の携帯の着信音が鳴った。会話を止めて電話に出るとフゥ太の護衛をしている部下からだった。

「どうした?」

『フゥ太様がまだ見たいらしく今は土産屋を見てます。』

「フゥ太もまだ子供だしな。俺達は先に本部に戻るから好きなだけ見させてやって。」

電話を切ると煌はヴァレリオに答えた。

「初恋は初恋のままでいいんだよ。」

そう言って歩き出す煌にヴァレリオは何も言わずに煌の隣を歩いたのだった。



End.


45ページ 後書き

46ページ ツナのその後


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