番狂わせ


証拠になる映像を探してまくって数日後、並盛高の体育館はすすり泣く者や座り込む者や顔色を悪くして俯く者、悲鳴を上げて泣き叫ぶ者がいた。

壇上に上がっている雲雀と京子と花は並盛中時代にツナを苛めた者達を冷たい目で睨み付けている。

「全く何一つ疑うことなく背瀬川椎子を信じて無実の沢田都奈を苛め抜き風紀を乱すとはね。呆れるしかないよ。」

「ツナちゃんに暴力を振るった人達や嫌がらせをした人達に聞きたいんだけど何でそんなことをしたの?ツナちゃんと背瀬川さんの問題だよ?」

「背瀬川の為に仕返しとでも言いたいんだろうけど背瀬川は苛められたって言ってもやり返してなんて頼んでないわよね?それって自発的に沢田を苛めたってことよ。」

強制的に雲雀に呼び出された元並盛中の生徒、並盛中の教師は言い訳をしたかったが先に言われてしまい壇上にいる三人から目を逸らし俯いたが何人かの生徒と教師が喚くように言った。

「笹川と黒川は何なんだよ!」

「貴方達だって沢田を助けなかったじゃない!」

「良い子ぶって!」

「自分達だけ逃れようってか!」


喚き散らす生徒達と教師達に花と京子が怒鳴った。

「ふざけないで!京子はね最初から沢田の味方だったのよ!でも沢田は京子を守る為に庇うなって言っていた。だから京子は影で沢田を支えていたのよ!大体あのお人好しの沢田が苛めをする訳無いじゃない!」

「花も最初からツナちゃんを信じてたよ。でもツナちゃんは優しいから自分を庇ったら私と花も標的にされるから背瀬川さんの味方のふりをして欲しいって。私はツナちゃんを苛めた人達を一生許さない!」

並盛高のアイドルとその親友に怒鳴られて生徒達と教師達は驚くが嘘を付くな!と喚く。
雲雀はうるさい!とドスの効いた声で黙らせると京子と花が味方だった証拠があると言って草壁に映像を流すように指示した。

「草壁。例の映像を。馬鹿な草食動物達この映像をちゃんと見な。」

草壁は映像を再生した。


ーーーー

屋上に連れて行かれて暴力を振るわれて倒れているツナ。笑いながら屋上を出て行く獄寺達。それから数分後、京子と花がツナの傍に行く。

「ツナちゃん!」

「沢田しっかりして!」

「う・・・・・・っ、京子ちゃんと花?」

顔面を何度も殴られたせいで頬が腫れ上がり目があまり開かないツナは声で判断していた。
京子は湿布をツナの両頬に貼り、花は血が出ている所に絆創膏を貼ったり塗り薬を付ける。
起き上がろうとするツナを介助する京子と花はツナに言う。

「ツナちゃん、こんなの絶対おかしいよ!悪いのは背瀬川さんなのに!」

「京子の言う通りよ。獄寺達に話を聞かせるべきよ! 」

ツナは首を横に振る。

「もう駄目だと思う。仮に話を聞いてくれても獄寺君達は信じないよ。認めたら窮地に追いやられるのは獄寺君達だ。だから絶対認めない。」

「でもこのままだとツナちゃんが!」

「せめて背瀬川が嘘を付いている証拠が有れば良いんだけど。」

京子と花は証拠を探そうと話すがツナが止める。

「駄目だ!背瀬川さんに知られたら大変な事になるよ!背瀬川さんは京子ちゃんと花も邪魔だと思ってるんだから!隙さえあれば陥れようと考えてるから!」

自分の二の舞になって欲しくないと泣きながら言ってくるツナに京子と花は渋々と頷いていた。


ーーーー

映像が終わると騒いでいた生徒と教師は京子と花は何の罪もないと理解し黙った。
雲雀は生徒達と教師達の処分を言った。

「沢田都奈にしてきたことは立派な犯罪だ。暴力を振るえば暴行罪。暴言を吐いたら名誉毀損罪。私物を破壊したら器物破損罪。さて君達草食動物はどれだけの罪を犯したのかな?」

生徒と教師、特にツナと同じクラスだった生徒とツナの担任だった教師は震え上がった。
顔色を青くさせている生徒と教師を見やる雲雀は更に続ける。

「この並盛に犯罪者は要らないから沢田都奈を苛めた生徒は退学ね。教師はクビだ。それと警察に君達のことを訴えたからそのつもりで。」

警察に訴えたと言われた生徒と教師は泣いて許しを乞う。

「待って下さい!俺は夢があるんです!」

「それだけは許して下さい!」

「ローンがまだあるんです!警察だけは!」

「クビになったら生活が立ち行かなくなる!許して欲しい!」

許して欲しいと言ってくる生徒と教師に雲雀はドスの効いた声で言った。

「ふざけるな!逆に君達は自分が沢田都奈のように暴力を振るわれても許せるのかい?」

生徒と教師は雲雀に許せるのか?と言われて俯いた。そんな彼等に雲雀は合図を草壁に送る。

「草壁!体育館の全ての扉を開いて!」

「了解しました!」

草壁が風紀委員達に指示を出し全ての扉が開くと警察官が次々と入って来た。見苦しく逃げ回る生徒達と教師達に京子と花は顔を顰める。雲雀もまた顰めて皮肉げに言った。

「優しい沢田都奈は自分を苛めた君達を訴えないそうだ。良かったね。」

ツナが訴えないことを知り生徒達と教師達は驚き目を見開いて漸くツナに謝罪の言葉を口にした。

「沢田ごめんなさい!」

「ツナ本当に悪かった!」

「すまなかった沢田!」

罪人達は謝罪しながら連行された。

雲雀は今日はこれで解散だと言ってツナとは関係が無かった生徒達と教師達はグッタリとして体育館を後にした。

京子と花は壇上を降りようとすると雲雀が声を掛けた。

「ちょっと待ちな。」

呼び止められた京子と花はもう終わったのに何だろうと首を傾げた。

「何でしょうか?」

「何かしら?」

「生徒が減ったからクラス編成をする。君達は沢田と同じクラスだ。」

拒否権はないからと言う雲雀に京子と花は嬉しそうに頷いたのだった。


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