番狂わせ
放課後の並盛高校の応接室では雲雀が面白そうな顔をしていた。
「君みたいな草食動物が一人でここに来るなんて思ってもみなかったよ。」
雲雀の牙城に来る生徒や教師などいない。だが目の前にいる草食動物は強い意思を持ってやって来た。その事に興味を持った。
「何か用?笹川京子。」
興味を持ってくれた雲雀に京子は一安心した。そして雲雀に頼み込んだ。
「ツナちゃんの無実を証明したいから協力してください!」
「小動物の無実?証拠でもあるのかい?」
「ボンゴレ本部での証拠ならあります。」
「ボンゴレ本部のだけじゃ無理だ。」
並盛高の生徒と教師は一般人だと言う雲雀に京子は笑顔で答える。
「ボンゴレ本部での証拠があるってことはボンゴレはもう崩壊してるってことですよ?」
「崩壊?」
京子は雲雀にツナの幼馴染みであるアルジェントファミリーのボスの煌に助けられたこと、椎子とリボーン達は牢獄に入れられたこと、ボンゴレはザンザスが継いでボンゴレはヴァリアーに名を変えたことを話した。
「後は並盛での証拠が要るわけだ。」
「はい。リボーンちゃんはもう居ませんから証拠集めも出来ます!風紀も正せますよ!」
雲雀はツナと椎子のアリバイの調査をしようとしていたがリボーンが邪魔をして調査が全く出来なかったのだ。
「成程ね。・・・1つだけ聞いて良い?」
「何でしょう?」
「君の兄は不味いことになってるんだよね?君はそれで構わないのかい?」
「構いません。お兄ちゃんは最後まで私の話もツナちゃんの話も聞かないで背瀬川椎子に騙され続けていたから。自業自得です。」
言い切る京子に雲雀は若干目を見開いた。
「へえ。僕は君を過小評価していたようだ。協力してあげる。」
「ありがとうございます。」
お礼を言う京子に雲雀は草壁を貸すことにした。
「僕は僕で動くから草壁を貸すよ。」
「はい!」
草壁と応接室を出て行く京子を見送ると雲雀は執務を再開した。
「女の友情は壊れやすいって言うけど笹川京子と沢田都奈は違うようだね。」
どこまでも信じた京子と庇い続けたツナを知り雲雀はポツリと呟いた。
京子と草壁はツナの家付近や並盛中付近にあるコンビニや小売店にある防犯カメラのデータを借り、また商店街や並盛駅のデータも借り、更には差押えになっている椎子の屋敷付近の店のデータまで借りた。
「草壁さんのおかげですぐ借りれました。ありがとうございます。」
「いえ。沢田さんとは本当に仲がいいんですね。」
ニコニコと笑いながら言う京子に草壁は本当にツナの親友なんだなと思った。
防犯カメラのデータを借りた京子はパソコン室で草壁と風紀委員達と手分けしてチェックしていた。するとそこに花が入ってきた。
「京子。私にも手伝わせて。」
「勿論だよ花!草壁さん良いですよね?」
「構わない。人手が多いに越した事はないからな。」
花はツナを心配していた。だが花の父親が勤めていた会社は背瀬川財閥と関わりがありツナを庇うことが出来ずにいた。またツナの話を聞いた花はしぶしぶ頷き京子と共に影でツナを支えていた。
入室の許可を得た花はパソコンを起動させ証拠になりそうな映像を探し始めた。
ーーーー
並盛ホテルで寛いでいるディーノとロマーリオは訪ねてきた人物を部屋に通した。
「恭弥じゃねえか!」
「久しぶりだな。草壁は元気か?」
雲雀はにこやかに話しかけてくるディーノとロマーリオに答えることはせずにある事を要求した。
「笹川京子に全て聞いた。貴方達はアルジェントとやらと知り合いなんでしょ?沢田に連絡取りたいんだけど。」
「別に良いけどよ。ツナに繋いで貰えるかは分からねえぞ?まだゴタゴタしてるかも知れねえし。」
さっさとしろとトンファーを出す雲雀にディーノは呆きれたがアルジェントに連絡を取り、ツナもしくは煌に取り次いで欲しいと言うとツナが出た。どうやらまだ観光に行く前だったようだ。
『もしもし。お久しぶりです。ディーノさん。今回は俺の為にありがとうございます。』
「お!久しぶりだな。元気そうで良かったぜ。今雲雀が居るんだけどーーー」
「沢田都奈。これから言うことにちゃんと答えな。」
雲雀がディーノの携帯を奪い取った。久しぶりの雲雀の声にツナは内心で絶叫した。
『わ、分かりました。(雲雀さん相変わらず恐いーーーー!!)』
「牝豚に騙されて君に暴力や嫌がらせをした馬鹿共をまとめて退学処分にするんだけどさ。君はあの馬鹿共を訴えるかい?」
訴えるなら手配するし証拠も貸すと言ってきた雲雀にツナは「退学って何?訴えるって何?雲雀さん何を企んでるのーーーっ!」と顔色が悪くなった。だが早く答えなければディーノが咬み殺される可能性がある。
『退学処分は決定なんですよね?』
「そうだよ。あんな馬鹿な草食動物共は僕の学校にはいらないからね。」
『俺に暴力とか嫌がらせをした人が退学処分なら俺は告訴しません。』
「・・・本気で言ってるの?」
少々訝しげに聞いてくる雲雀にツナは本気だと言った。
『はい。退学処分になった時点で苦労すると思うので。』
転校するにも高校中退で働くにしろ退学処分の理由が理由だ。苦労するだろう。ツナはそれで充分だと言う。
「そう。なら僕達は僕達でやるってことで良いね?」
『はい。(本当に何をやる気なんだろう。)』
「それじゃ。」
雲雀は通話を切るとディーノに投げ渡して出て言った。
携帯を受け取ったディーノは相変わらずだなと苦笑していた。