番狂わせ


アクセサリーケースを開けたカリサと傍にいたベッダは目を大きくさせた。

「これは私の物です!ですけど何故ドン・アルジェントがこれを?」

「見覚えがあったんだ。ネックレスはコンテファミリーの次期後継者候補の証でブローチは正式に後継者に決まった証だからさ。」

同盟すら組んでいないアルジェントのボスの煌が知っていたことにカリサとベッダは驚いた。煌は理由を話す。

「以前ドン・コンテと夜会で少し会話した時に聞かされたんだよ。ネックレスとブローチを付けているカリサさんが後継者だってね。同盟組もうとか思っていた矢先にこんな事になってしまったけど。」

「そうだったのですね。」

再び自分の手元に戻ってきた証を手にしてカリサは涙ぐんだ。

「もう私のファミリーは無いけれど確かにコンテファミリーがあった証。この証は死ぬまで私が守ります。」

亡き両親に呟くように言ったカリサ。

煌は受けた苦痛から逃げることなく考え抜いて自分達と同じ苦痛を受けている人達を助けたいと立ち上がろうとしているカリサこそがネックレスとブローチを持つのが相応しいと思った。そしてその思いは直ぐに叶うと伝えた。

「コンテファミリーが所有していた企業を全てではないが取り戻した。幾つかは倒産していた。残った企業を足場にして被害者を救う為の事業を始めると良い。」

コンテファミリーの企業を取り戻したと言った煌にカリサとベッダは驚いた。既に椎子とスコトスファミリーが全て食い潰していると思っていた。

「残っていたのですね。」

「驚きました。」

「でもこれで苦しんでいる人達を助けることが出来るわ。ベッダ。」

「はいカリサお嬢様!」


喜ぶカリサとベッダに煌は1枚のカードを懐から取り出しペンを走らして渡した。

「俺は裏社会の人間だから表立って力を貸すことは出来ない。これはせめてもの餞別だ。」

受け取ったカリサはカードを見るとURLが書かれていた。

「これは?」

「凄腕の情報屋の連絡先だ。双子の日本人で有能だ。依頼したら直ぐに欲しい情報を調べ上げる。何せあの復讐者も認めるくらいの実力だからな。」

情報屋に依頼して引き受けて貰えれば実験施設の場所や実験台として拐われてしまった人達の居場所の特定をすることが出来る。
カリサにとって情報屋とのパイプはこれから先必要だ。

「ありがとうございます!」

礼を言うカリサとベッダは後に被害者を救う為に保護施設やリハビリ施設などを設立し、また情報屋を駆使して実験施設の場所を調べ上げインターポールに通報して被害者達を助けていくことになるのだった。


ーーーー

カリサとベッダの部屋を出た煌とヴァレリオはツナ達が居る奈々の部屋に足を向けた。
奈々の部屋に入るとツナが駆け寄った。

「煌君!ヴァレリオさん!」

無事で本当に良かったと喜ぶツナに煌とヴァレリオは笑って答える。

「ただいま都奈。」

「都奈さんも無事で良かったよ。」

お互いの再会を喜んでいると奈々が傍に行き礼を言った。

「都奈を助けてくれて本当にありがとうございます。」

頭を下げる奈々に煌は頭を上げてと声を掛けた。

「奈々さん頭を上げて。俺は都奈の幼馴染みとして当然のことをしただけだから。」

そう伝える煌を見てヴァレリオは『幼馴染みとしてなのかな?』と含みがある言葉を内心で思った。


ーーーー

翌日の昼、アルジェント本部の庭であるパーティーが開かれた。
テーブルには奈々特製の料理とデザートがところ狭しと言わんばかりに並びある人物を待っていた。
暫くするとある幼児が走ってきた。

「ツナーーーーっ!!」

「ランボ!」

ランボは泣きながらツナに飛び付いた。

「ツナ!良かったもんね!」

「久しぶりだね!」

再会に泣きながら喜ぶランボ。涙と鼻水でツナが着ていたワンピースはグジョクジョだ。だが気にもせずツナはランボの頭を撫でている。後から追ってきたドン・ボヴィーノを迎えて再会のお祝いをした。久しぶりの奈々の手料理に喜ぶツナとランボ。イーピンとフゥ太も美味しそうに食べて、ルナも肉料理を食べていてドン・ボヴィーノはルナの食欲に驚きつつも奈々の料理に舌鼓を打つ。

宴もたけなわになると煌がツナ達にイタリア観光を提案した。

「明日は都奈達に観光に誘いたいだけど?行くか?」

煌の提案に子供達が直ぐ様飛び付いて、何故かルナまで食い付いた。ツナと奈々も少しくらいは楽しんでも良いかと思って煌の提案に頷いた。
ドン・ボヴィーノはランボを煌に預けていくことにした。

夜になりツナは与えられた部屋で明日の準備をしていた。

「明日の観光が終わったらランボとはお別れだね。」

マフィアではないイーピンとフゥ太は生きている限り会えるがマフィアのランボとは会うことはもう出来ないのだ。そして日本に帰国したらもう二度と煌とヴァレリオ、ルナに会えない。

別れが近いとツナは思うと少し寂しい気持ちになった。


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