番狂わせ
朝の9時頃アルジェント本部に一足先に着いたツナはメイド達に出迎えられた。既に風呂の用意がされていてツナは風呂に入った。
「うわー。凄いゴージャスだなぁ。ホテルみたい。」
余りの豪華さに奈々達のように半ば茫然とした。
風呂を済ませるとメイドにある部屋に案内された。
メイドに笑顔で促されたツナは扉を開けるとそこには自分を信じてくれた奈々がソファーに座っていた。
「都奈!」
「母さん!」
ツナは駆け寄り奈々は立ち上がりツナを抱き締めた。
「やっと会えたわね。」
「ただいま母さん。」
泣きながら笑顔で再会を喜びあうツナと奈々。そこに今度はフゥ太とイーピンがやって来た。
「ツナ姉!」
「ツナさん!」
子供達が会いたかった!と言いながら駆け寄りツナは子供達をギュッと抱き締めた。
「俺、ずっと会いたかったよ!母さんの傍に居てくれてありがとう!」
ツナは漸く悪夢は終わったと思った。
その様子を窓から覗いていたルナは嬉しそうに《良かったねツナちゃん。》と呟くとアルジェント本部の玄関の方に飛んで行った。
煌とヴァレリオが帰還するとルナがヴァレリオの肩に止まった。
《煌ちゃん、ヴァレリオお帰りなさい。》
「ただいまルナ。」
「ルナお疲れさん。」
挨拶を交わすとルナは煌にあることを告げる。
《あの人達そろそろ大丈夫そうよ。体調も良い感じだし。》
「そうか。会えるか?」
《会えると思うわ。》
煌とヴァレリオはそれぞれ着替えるとある部屋に向かった。
アルジェント本部のある一室には少女と少女より年上の女性がお茶を楽しんでいた。
「カリサお嬢様。お茶のおかわりはいかがですか?」
カリサと呼ばれた少女は首を横に振る。
「それよりベッダも座って飲んで。もう私は令嬢でも何でもないのだし。」
「いいえ。私は最後までカリサお嬢様付きのメイドです。」
カリサとそのメイドであるベッダが話をしている所に煌とヴァレリオがやって来た。
「カリサさん、ベッダさん。体の調子は大丈夫?何か足りないものがあれば直ぐに言ってくれ。」
煌に優しく聞かれたカリサとベッダは滅相もないと慌てた。
「体はすっかり良くなりました!足りないもの何て無いです!」
「メイドである私まで助けて頂いてありがとうございます!」
頭を下げるカリサとベッダに煌はカリサとベッダに頭を上げてと言った。
「俺達は助けたいと思っただけだから。なあヴァレリオ?」
「ボスの言う通りです。」
気にしなくて良いと言う煌とヴァレリオ。カリサとベッダは命の恩人だと言って感謝しますとまた頭を下げてしまい煌とヴァレリオは苦笑した。
ーーーー
カリサとベッダはコンテファミリーの令嬢とメイドだった。
コンテファミリーは規模は小さいがアルジェントのように戦いを好まず話し合いで解決するファミリーで慈善事業もしていた。
カリサはメイドのベッダを連れてある夜会に訪れていた。その夜会で彼女達の人生が狂わされた。
カリサとベッダが食事をしていると椎子がニヤニヤしながら二人の傍に行った。
「ねえ、アンタのエメラルドのネックレスとルビーのブローチとても良いわ。でもアンタには不相応だから椎子が貰ってあげる!」
あまりの椎子の無礼さにカリサは唖然とした。ベッダは空かさず断った。
「お嬢様が付けているアクセサリーは大切な物ですのでお譲りする訳にはいきません。」
断るとベッダはカリサに場所を変えましょうと声をかけて椎子の傍を離れた。ネックレスとブローチを手に入れ損なった椎子はカリサとベッダの後ろ姿を睨み付けた。
「ああもう!ネックレスもブローチも椎子が貰ってやるって言ってあげたんだから譲りなさいよ!今日は隼人達が居ないからどうしようもないわ!」
いつもならリボーンや獄寺達が奪い取ってくれるのだが今は全員任務中で居なかった。
「こうなったら適当に理由を付けてあの女のファミリーを壊滅させてやる!」
椎子はコンテファミリーが何の理由もなくスコトスに弓引いたとでっち上げ、スコトスとスコトスの同盟ファミリーを引き連れてコンテファミリーを潰してコンテファミリーが所有していた事業を奪い取った。
生き残ったカリサとベッダを見付けた椎子は笑いながらエメラルドのネックレスとルビーのブローチを奪い取って人体実験の施設に無理矢理連れていった。
そこに偶々アルジェントの幻術を扱えるスパイが居て慌ててカリサとベッダの姿を隠して有幻覚のカリサとベッダを作り出した。椎子が有幻覚のカリサとベッダに麻薬を注入している間にアルジェントのスパイはカリサとベッダを人体実験の施設から逃がした。
その後スパイからの連絡を受けた煌がカリサとベッダを保護したのだった。
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煌はカリサとベッダに今後はどうしたいのか尋ねた。
「これからどうしたい?」
聞かれたカリサは助かった時から考えていたことを伝えた。
「色々考えましたが、まずコンテファミリーの再建は無理でしょう。父も母も居ませんし。だからマフィアから足を洗って一般人として生きていこうかと思っています。そして人体実験の被験者を助ける事業を立ち上げていこうと考えています。」
アルジェントが助けてくれなかったら自分達が実験体にされていただろう。だからこそその恐怖に晒されている人達を助けたいとカリサとベッダは思っていた。
それを聞いた煌は胸中ではカリサを何らかの形で支援しようと考えるがそれとは別のことを言った。
「カリサさんに渡したい物がある。」
そう言って煌はヴァレリオに目配せした。ヴァレリオは持っていた小箱を2つカリサに手渡した。
「このアクセサリーケースは?」
受け取ったカリサが不思議そうにすると煌は開けてみろと促す。
「開けてみて。」
アクセサリーケースには椎子に奪われたエメラルドのネックレスとルビーのブローチが入っていた。