番狂わせ
頬が腫れ上がっているビアンキが呻き声をあげた。
「うぅ・・・。」
「ビアンキを離せ!」
攻撃体勢を取るリボーンにヴァレリオは笑みを浮かべる。そんなヴァレリオにリボーンは怒鳴った。
「何がおかしいんだ!」
「落ちぶれたものだな。リボーン。」
「てめえっ!誰に向かって物を言ってんだ!」
ヴァレリオは大げさに溜め息をした。
「ハア~~。気付かないのか?自分の体の動きが鈍くなっていることに。」
リボーンは拳銃の引き金を引こうとするが指が恐ろしくスローな動きだ。
「っ!?」
撃鉄を上げなければ銃は撃てない。戦慄するリボーン。ヴァレリオはニヤリと笑う。
「お前に撃ったヤツは少々特殊でな、動きを遅くする術と雲の属性を弾丸に蓄積させた特別製だ。更に少量だが弛緩作用も追加されているから立っていられなくなるぜ。」
ヴァレリオはビアンキを物置部屋の隅に転がして膝をつくリボーンに向かって両手足を撃ち抜いた。
「ッ!!」
「呻き声一つあげないとは腐ってもアルコバレーノだっただけあるか。」
弛緩作用が効いている上に両手足を撃ち抜かれたリボーンは床に倒れヴァレリオはリボーンをロープで芋虫のように縛った。そしてリボーンとビアンキ引き摺りながら物置部屋から出て行った。
ーーーー
ツナは飛び降りてアルジェントの部隊と合流していた。
《都奈ちゃん!怪我してない?》
ツナの傍に来たルナにツナは笑顔で答える。
「大丈夫だよ。」
ルナとの再会を喜んでいるとアルジェントの救出部隊長は車に乗るように促した。
「沢田都奈さん、早くこちらへ。」
「ありがとうございます。」
ルナと一緒なこともあってツナは安心して車に乗った。救出部隊長はツナが乗ったことを確認すると救出部隊に帰還命令を出した。
「救出部隊は帰還する!」
救出部隊はボンゴレのシマから脱出すると蜂の巣になったツナの死体はすうっと消えた。
ツナの死体はヴァレリオの幻術で作られたもの。
リボーンが物置部屋に来る直前にツナは窓から飛び降りていた。そして着地すると物置部屋に待機させていた幻術のツナを窓がある方向に動かせていると救出部隊から無線でリボーンが物置部屋に入ったと連絡が入りヴァレリオはビアンキをロープで拘束して物置部屋に向かって行ったのだった。
ボンゴレのシマから出たツナはほっとするが煌とヴァレリオが心配だった。
「煌君とヴァレリオさん大丈夫かな?」
小さく呟くとルナは大丈夫だと答える。
《ヴァレリオと煌ちゃんは平気平気。強いから。そうじゃなきゃ私はヴァレリオを主とは認めないし煌ちゃんの命令も聞かないわ。》
「ふふ。ルナちゃんは二人を信じてるんだね。」
煌とヴァレリオのことをよく知っているルナが言うなら大丈夫なのだろうとツナは思うが無事を願っているとルナはアルジェント本部に着いた後のことを話す。
《アルジェント本部に着いたらまずお風呂に入って方が良いわ。》
「お風呂?」
《うん。ドンパチした所に居たせいで火薬の匂いが付いてるから。》
袖口を嗅ぐと火薬や埃が混じったような匂いがしてツナはこれでは奈々達が心配すると苦笑した。
「確かに。これじゃ母さん達がビックリするね。」
アルジェント本部に着いたら真っ先に奈々とイーピン、フゥ太に会いたかったがこれ以上心配かけるわけにはいかないとツナははやる心を落ち着かせた。
ーーーー
煌と部隊が9代目達を囲み武器を向けているとクナイが6本飛んできて9代目の守護者達の額に刺さった。倒れていく守護者達に9代目は目を見開いて息絶えた守護者達の名を呼ぶ。
9代目と倒れた守護者達をつまらなそうに見た煌は後ろを振り向くとそこにはヴァレリオがいた。
「都奈さんは無事救出したよ。リボーンとビアンキを捕まえた。」
左手にロープで縛ったリボーンとビアンキを引き摺るヴァレリオに煌は笑う。
「成功したか。しかし毒蠍はともかくあのリボーンを芋虫みたいにした挙げ句に年寄りの守護者達を瞬時に絶命させるあたり腕を上げたようだなヴァレリオ。」
「まあクナイには即効性の毒を塗ってるし。こう見えても鍛練は怠ってないからな。」
「そうか。」
ヴァレリオと楽しそうに会話していた煌はチェデフに攻撃していた部隊長から連絡が入ってきた。
『こちらチェデフ攻撃部隊。チェデフを制圧。沢田家光を捕獲しました!』
「よくやった!アルジェント部隊は待機。混合部隊は沢田家光をボンゴレ本部まで連行させろ!」
通信を切ると煌は9代目に向き直る。
「貴様の守護者達はあの世行き。ボンゴレの部隊はほぼ壊滅しチェデフも制圧した。もう逃げ場はないぜ。」
「ぐっ!」
項垂れる9代目を拘束した煌はボンゴレのロビーに向かった。ヴァレリオに引き摺られているリボーンはツナは死んでいないのかと聞いた。
「おい、ツナの奴は生きてるのか?」
「ああ。お前らから助け出す為に死んだように見せかけただけだ。」
「そうか・・・。」
リボーンの目が一瞬輝いたのを見逃さなかったヴァレリオは『都奈さんにあれだけのことをしておいて何を期待しるんだか。』と呆れていた。