番狂わせ


脱出計画当日ーーー

ヴァレリオはツナと計画の最終確認をした。

「良いか?午前1時にルナがこの部屋の窓を3回つつく。これがアルジェントが攻めてくる合図だ。」

「はい。」

「合図がしたらアルジェントは一斉に攻撃を開始するから都奈さんは5階の物置部屋に向かって窓から飛び降りる。着地したらアルジェントの指示に従って。ルナもそこで待機してるから安心して。」

「分かりました!」

「よし。食べ物をこっそり失敬してきたから食べて体力を温存しておこう。」

食事を終わらせると複数の足音が聞こえてきた。ヴァレリオは自分とツナの姿を隠し幻術でツナの分身を作り出した。
扉が乱暴に開くとリボーンが空かさずツナの頭に飛び蹴りを食らわした。軽く吹っ飛ぶツナに獄寺達は嘲った。

「リボーンさんに鍛えられた癖に本当に弱っちいな!」

「まあそんなのどうでも良いのな。今日は厨房の手伝いだ!」

「たまには極限に楽させてやるぞ。」

「辛い作業はやらせないでと言ってくれた椎子に感謝しやがれダメツナ!」

幻術のツナは静かに頷いて厨房に向かって行きリボーン達は罵倒しながらそれぞれの持ち場に戻っていった。
リボーン達の気配が遠ざかるとヴァレリオは自分とツナにかけた術を解いた。

「・・・確かにいつもよりは楽だな。」

「・・・背瀬川さんは自分を良く見せる為にたまにこういうことしてますから。本当にたまにだけど。」

「まあ背瀬川椎子は日付が変わると共に全てを失うから全く持って意味が無いけどな。」

日付が変わった瞬間背瀬川椎子もボンゴレもスコトスも破滅の道を歩むしかない。だがツナはそれは仕方がないとしか言えない。リボーン達は椎子に盲信して回りを一切見ていなかった。
だからボンゴレの同盟ファミリーはボンゴレの縁を絶つことを選んだ。椎子とリボーン達を認めていないヴァリアーは有能な構成員を引き抜いている。(ツナは知らないがラルやバジル達は家光とボンゴレに見切りを付けて家光にはボンゴレからの特命任務に就いていると言ってマフィアランドに身を寄せている。)
ボンゴレに残ったのは椎子達に媚を売るだけが取り柄の使えない部下とボンゴレを手に入れようとしている同盟ファミリーだけだ。

ツナと椎子のアリバイを調べるとか、雲雀のように中立の立場にいた者に話を聞くとか、スコトスを調べるとか引き返す分岐点はいくらでもあったのだ。だがリボーンも獄寺達も家光も9代目も指一本動かさなかった。その結果がボンゴレの終焉に繋がっただけだ。

「リボーンも獄寺君達も父さんも9代目も自業自得としか言えないよ。」

父親に命じられたとはいえ自身の意思で椎子はツナを嵌めた。陥れなければ失うものは無かった筈。弱小ファミリーでもスコトスファミリーの令嬢ではいられたのだから。

「背瀬川さんは嘘を付くことで生きてきた。だから逆に嘘だと知られた時全て自分に降りかかることを知らなかった。」

椎子がしてきたことがそのまま椎子自身に返ってきただけ。まさに因果応報。ツナは椎子もまた仕方がないとしか言えなかった。


ーーーー

アルジェントはスコトス本部に幻術で姿を隠した部隊を送り込んだ。
部隊の隊長はボスである煌に通信した。

「全隊配置に着きました。」

「そうか。そのまま合図があるまで待機。」

「了解!」


煌は通信を切ると執務室で高級生肉を食べているルナに顔を向ける。

「これからボンゴレに乗り込む。」

《了解。》

高級生肉を全て平らげるとルナは煌の肩に止まる。

「都奈を助けるぞ。」

《うん!》

アルジェント本部を出るとツナの救出部隊とボンゴレを殲滅する部隊が既に整っていた。

「久しぶりだなボス。部隊の編成はバッチリだ。」

「流石だな。ヴァレリオ。いや分身と言うべきか?」

《ヴァレリオの分身見るの久しぶりだわ。》

ヴァレリオは分身を作り出してアルジェント本部に向かい部隊を編成していた。

「都奈さんは大分体力が回復してるよ。京子さんのおかげだろうな。」

「そうか。それじゃボンゴレをプチッと潰すか。」

「プチッとかよ。」

ヴァレリオと軽口を叩くと煌は全隊に向き直り命令を出す。

「これからボンゴレ本部に向かう。沢田都奈救出部隊はボンゴレ本部南側に、ボンゴレ殲滅部隊はボンゴレ本部西側で待機。チェデフ殲滅部隊はチェデフ本部の東側で待機。」

命令を下すと煌はルナと一緒にボンゴレ殲滅部隊の先頭のリムジンに乗り込むとボンゴレへ向かった。

ヴァレリオの分身は全て部隊に姿を隠す術ををかけるとここでやることは終えたとポンッと音を立てて消えた。


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