番狂わせ
ヴァレリオはツナに隠しカメラのボタンを渡すように言った。
「かなり背瀬川椎子とリボーン達の愚行が録画されてるだろうからそろそろ煌に渡さないとな。」
ツナはジャケットからボタンを取り外し手渡した。受け取るヴァレリオはボタンを懐にしまった。
「ボタンの映像とスコトスファミリーの悪事と背瀬川椎子の悪事。これだけの証拠があるんだ。ボンゴレに勝目は無いよ。」
ボンゴレは喉元に刃物を押し付けられているも同然だった。
夜になりディーノから折角イタリアに来たのだから京子に観光案内したいと連絡が来た。リボーンはいきなりだなと思い理由を聞いた。
「観光?」
『ああ、折角こっちに来たんだ。たまには京子も息抜きが必要だろ?』
「ツナが居るからストレスが溜まってるかもしれねえな。」
『だろ?』
「それでいつだ?」
『明日の午前中に迎えに行くぜ。善は急げってな。』
「まあ良いだろう。京子には伝えとくぞ。」
リボーンは了承して連絡を切った。
ディーノはかつての師であったリボーンに失望していた。
「何で信じてやらねえんだよ。ツナはお前の生徒だろ?」
ディーノは嘆息した。
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「楽しんで来い。」
「極限に気を付けるのだぞ。」
「うん。」
ボンゴレのロビーで京子は了平とリボーンに行って来るねと言ってディーノとロマーリオが居る方に歩いて行く。
「ディーノさんロマーリオさんよろしくお願いします。」
「おう!任せておけって!」
ディーノはニカッと笑って京子の荷物を持つ。と言っても怪しまれないように最低限にしていて小旅行用のバッグ1つだけだ。
「本当は極限に付いて行きたいのだが。」
心配する了平に京子は仕方がないと宥めた。
「駄目だよ。パーティーや夜会が入ってるんだから。我儘言わないの。」
「う、うむ。」
「俺達が常に付いてるからよ。」
ディーノが了平を安心させるように言うと了平は頷いた。
「極限に京子を頼んだぞ!」
「安心しろ!」
京子は最後に了平に本当の別れを告げた。
「お兄ちゃん。さよなら。」
了平は京子のこの言葉の意味を知るよしもなく楽しんで来いよと京子に笑いかけた。
ボンゴレ本部を出て京子はある方向を見た。
『次はツナちゃんが出る番だね。』
既に兄を見限った京子は親友のことだけを心配していた。
「さあ乗ってくれ。」
ディーノがリムジンのドアを開けて促す。京子は後部座席に乗るとリムジンは走り去った。
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ルナは煌の執務室で高級肉を食べていた。
《そろそろ京子ちゃんはボンゴレを出たかしら?》
ディーノから連絡を受けた煌はルナに伝えた。
「ディーノから連絡があった。今出たそうだ。」
《そう。良かった!ボンゴレは女の敵よ!》
「女の敵?」
《確かに食べ物も衣服も最高級だけど汚い性根の人間達に囲まれてるようなものだもん。ストレスしかないわよ。ストレスは肌荒れに繋がるわ!》
力説するルナに煌は分からないと首を傾げた。
「女はストレスで肌荒れになるのか?」
《だから煌ちゃんは駄目なのよ!女はデリケートなの!全然分かってない!》
本気で分からないという顔をした煌はルナに駄目出しされた。その様子を見ていた部下は自分のボスが梟に説教されているのを見て何とも言えない気持ちになりつつも報告した。
「ボス、そろそろ御時間です。」
「そうか。分かった。ルナ、ヴァレリオから隠しカメラとボイスレコーダーを受け取っておいてくれ。」
ルナから逃げるように煌は執務室を出た。
《むう。逃げたわね。仕方ないけど。》
ルナは高級肉を食べ終えると窓から飛び去っていった。