番狂わせ
一方、ボンゴレではリボーン達がツナを囲み罵倒していた。
「このダメツナが!」
「メンテナンス終わってねえのかよ!」
「弾丸の数もあってないのなっ!」
「極限使えない奴だな!」
「苛めはするわ任務は失敗するわ雑務すら出来ない。呆れたぞ。」
ごめんなさいと謝るツナにリボーンはニヤリと笑う。
「これはねっちょり制裁だな。」
リボーンの言葉で獄寺達はツナに暴行を加え始めた。ツナは止めてと泣きながら言っても獄寺達は止めることは無く暴力を振い気絶するまで暴力は続いた。
気絶したツナにリボーンはもう気絶かと吐き捨て家光が面倒臭そうにツナのジャケットの後ろ襟を掴み引き摺ってツナの部屋に乱暴に放り入れると嘲笑いながら椎子の下に向かっていった。
リボーン達が去ると怪我だらけのツナはすうっと消えてジャケットだけが床に残った。そして幻術で姿を消していて怪我1つしていないツナが現れた。
「リボーン達にとって俺って感情を持っている人間じゃないんですね。」
床に落ちているジャケットを拾い羽織るツナが半ば呆れているとヴァレリオは寧ろリボーン達は真性の馬鹿だと冷笑した。
最初の方こそ暴力を振るわれていて怪我だらけだったが京子がボンゴレに来てからは言葉巧みに暴力を回避させていたし、煌と再会してからはヴァレリオがツナの幻覚を作り出しているからツナは無事なのだが、もし京子がボンゴレに来ることをリボーンが拒み、煌と再会していなかったらツナは死んでいた可能性が高いのだ。
「毎回こんな暴力を振るっていたら都奈さんはもう死んでるよ。それに制裁されて謝罪しないということはどういうことか分からないとかあり得ないんだが。」
本当にツナが椎子を苛めていたなら最初の制裁で罪を認めて謝罪する筈。何度も暴力を振るわれたいなど思わないだろう。それなのに謝罪しないということはツナは無実なのでは?と疑問くらいは持つだろう。リボーン達はそんなことにすら気付かないでいた。
「俺は死なないって思われてるから。リボーンは俺を鍛えたって自負があるし、獄寺君達はリボーンが鍛えたから簡単には死ぬことはないって本気で思ってる。」
超直感で感じ続けたツナはリボーン達にとって自分はストレス発散のサンドバッグなのだと分かっていた。
「まあそれもじきに終わるよ。」
そう言ってヴァレリオは部屋の窓を開けるとルナが入って来た。
《煌ちゃんから指令書預かったわよ。》
ヴァレリオはルナの足に装着されている筒から指令書を取り出す。
「かなり計画は進んでるようだな。」
《うん。背瀬川椎子の悪事もスコトスファミリーの悪事もバンバン出てきて煌ちゃん笑ってたよ。》
ルナはそう言うとツナの傍に歩いていく。
《もう少しでツナちゃんと京子ちゃんはここから出れるから頑張ろうね!》
「ありがとうルナちゃん。俺頑張るよ!」
ルナの励ましにツナは力強く頷いた。そんな1人と1羽を微笑ましく見つつもヴァレリオは指令書を読み進める。
『1週間後ボンゴレに宣戦布告無しで攻撃を仕掛けるのか。しかもとんでもない奴らと話をつけたものだ。これは大変なことになるなボンゴレは。』
煌の次の計画に右腕は軽く引いてボンゴレに本当にほんの少しだけ同情した。
「ルナ。煌に了解したって伝えろ。」
《分かったわ。》
主の命令に了解したルナは改めてツナに向き合う。
《ツナちゃん。京子ちゃんに伝言頼んで良い?》
「伝言?」
《うん。本当はちゃんと伝えたかったんだけど。今まで優しく接してくれてありがとうって伝えて。もう私は京子ちゃんには会えないの。ヴァレリオに聞けば理由は分かるから。》
ツナに頼むとルナは少し悲しそうにして窓から飛び去っていった。
「あの?ルナちゃんが京子ちゃんには会えないって?」
ヴァレリオに聞くツナ。ヴァレリオは煌が立てた次の計画を説明した。
「ヴァリアーと人質の件は解決した。次は京子さんを4日後に帰国させる。」
「あ、だから俺に頼んだんだ。・・・。」
京子が帰国するということはルナは2度と京子には会えないのだ。それは言い換えればツナも同じで。また全てが終われば煌にもヴァレリオにも2度と会えない。ツナはその時が近いと悟った。
『全部終われば煌君とヴァレリオさんとルナちゃんには2度と会えないんだ。何か寂しいな。』
ツナの悲しげな表情を見たヴァレリオは何とも言えない顔をしてツナの頭を撫でることで慰めることしか出来なかった。