番狂わせ
ユニの右腕であるγから連絡があり煌は執務室でクスクスと笑っていた。
「次の手を打つか。」
ヴァリアーに見捨てられたボンゴレを嘲笑う煌はあるファミリーに向かった。
ボヴィーノファミリーは緊張していた。そしてドン・ボヴィーノもまた応接間で目の前にいるアルジェントファミリーのボスである煌に緊張していた。
「会談に応じてくれたことを感謝する。」
「ボヴィーノにようこそ。」
握手を交わすとお互い着席して、ドン・ボヴィーノは用件を聞いた。
「ボヴィーノファミリーにどのような用件でしょうか?」
アルジェントと比べたらボヴィーノは弱小ファミリー同然。そんなボヴィーノにどんな用件があるんだと訝しげにしていた。煌は緊張しているドン・ボヴィーノに内心で苦笑したが同盟について口を開いた。
「率直に言おう。アルジェントと同盟を組んで欲しい。」
ドン・ボヴィーノは目を見開き驚いた。
「私のファミリーと同盟を組んでどうするのです?」
「沢田都奈のことは知っていますか?」
「ええ。何でも背瀬川椎子に陥れられてボンゴレの座を引きずり下ろされてしまいその後も背瀬川椎子に苛めてられていたとランボが教えてくれました。」
「そうでしたか。それでドン・ボヴィーノ貴方自身は沢田都奈をどう思われます?」
「私は沢田都奈さんに会ったことはありませんが心の優しい方だと思っています。でなければあのランボが毎日のように彼女を心配して泣くことはありません。」
ドン・ボヴィーノの答えに煌はこれなら上手くことが運ぶと踏んで話を進めた。
「実は沢田都奈とは幼馴染みなのです。そして沢田都奈と親友の笹川京子をボンゴレから脱出させる計画が進んでいますが幾つかの障害があります。」
「障害とは?」
「沢田都奈と笹川京子を従わせるには人質が一番効きます。特に沢田都奈には。」
「人質・・・まさか!?」
「そのまさかです。背瀬川椎子のことです。沢田都奈にとって親しい人物を人質に取るかもしれません。その人質の候補の中にランボ君も入っているでしょう。」
ドン・ボヴィーノは真意を聞いた。
「つまりもしもランボが人質にされそうになった場合を考えて同盟を組もうということですか?」
「そうです。と言いたいところですが他にも理由はあります。」
「沢田都奈さん自身ですね?」
「人質を1人でも取られたらこの計画は失敗に終わります。そうなれば一般人の笹川京子はともかく沢田都奈はおそらく監視が今より厳しくなり血筋を残す為だけに生かされるだけか最悪処刑されるでしょう。」
煌の話にドン・ボヴィーノは確かにと頷いた。人質を取られたらこの計画は頓挫する。仮にランボが人質にされたらボヴィーノは勿論ツナも苦境に陥るのだ。そして人質にされたランボも。ランボが人質にされない為にはアルジェントと同盟を組んだ方が安全なのだ。もしランボを人質にしたら同盟を組んだアルジェントが黙ってはいないと牽制できるのだ。ボンゴレも世界2位のアルジェントとは事を構えることは避けたいだろう。抗争に発展したら大打撃だ。
「分かりました。同盟を組みましょう。」
ドン・ボヴィーノはツナと京子とランボと自分のファミリーの為に同盟を承諾した。
ボヴィーノ本部を後にした煌はこれでボンゴレに人質を取られることはないと笑った。
「障害だったヴァリアーと人質は回避した。次の手も早く打たないとな。」
部下が運転しているリムジンの中で煌は算段を立てていった。
アルジェント本部に戻ると煌は奈々の部屋に訪れた。
「奈々さん少し良いかな?」
扉をノックする煌に奈々は扉を開いて部屋に通した。
「奈々さん何か足りない物はある?なかったら何でも言ってくれ。」
直ぐに用意すると言う煌に奈々は首を横に振る。
「足りてるわ。」
奈々の部屋にはキングサイズのベッドにテーブルと椅子、ドレッサーにはブランド物のメイク道具が一式揃っていてクローゼットには何着もの洋服がズラッと並んでいたのだ。おまけにそれらの調度品は見ただけで良い物だと分かる。奈々はこの部屋の全ての物に目眩がしていた。
「そう?なら良いけど。後、朗報があるよ。」
「朗報?」
「ランボ君のファミリーと同盟が組めた。これで都奈を脅す材料はボンゴレは何もないよ。」
「良かった。ありがとう煌君。」
奈々は人質になり得る人物を全てボンゴレから守った煌に感謝したのだった。