番狂わせ


小さな窓から朝日が入り、ツナは目を覚ました。
ゆっくり起き上がると目を疑った。

『えっ!?何これ!?』

ボロボロだった毛布は新品で手触りも良い。そして自分の下に敷かれている物は上質なマットレスがあった。おまけにルナが一緒に寝ていた。
何が起きたんだとワタワタしていると座っているヴァレリオがおはようと声を掛けた。

「おはよう都奈さん。」

「おはようございます。ていうかこれはどういう状況なんですか!?」

「ああそれ?ボンゴレ本部から失敬してきた。」

「持って来ちゃったんですか!!」

顔色を真っ青にさせるツナにヴァレリオは問題ないと笑う。

「大丈夫さ。さすがボンゴレ。マットレスも毛布も大量にあった。これくらいバレないよ。」

そういう問題なのかと思うがツナは他に気になっていることをヴァレリオに聞いた。

「あの、ルナちゃんって梟ですよね?仰向けで寝てますけど普通、梟は木の枝とかで立って寝るんじゃ無いんですか?」

自分の隣で仰向けでスピースピー寝ているルナを見ながら言う。

「ルナは何故か昔から仰向けやうつ伏せで寝ることも出来るんだよ。ついでに気に入った人と寝たがるだよ。」

面白い梟だろ?と言ってくるヴァレリオにツナはそれならヴァレリオと一緒にいつも寝ているのか聞いてみた。

「それじゃヴァレリオさんはルナちゃんといつも一緒に寝てるんですか?」

「いや、これでも俺はルナの主だし、ルナもその辺は一応弁えてる。」

「そうなんですね。」

梟なのに凄いと感心していると遠くの方から足音が聞こえてきた。

「誰か来るみたいだな。一旦俺は姿を隠す。」

「うん。」

ヴァレリオが自分の姿とマットレスと毛布を消して暫くすると遠慮がちに扉をノックする音がした。

「ツナちゃん。」

「京子ちゃん。」

京子はパンとミネラルウォーターと林檎を持って入って来た。

「はい。今日は林檎も持ってこれたから。」

手渡されるとツナはありがとうと言ってパンを食べ始める。姿を消しているヴァレリオはツナの肩を叩き、耳打ちした。

「笹川京子さんだろ?話がしたいんだけど?」

ツナは頷き京子に小声で伝える。

「京子ちゃん。実は色々あって紹介したい人がいるんだ。」

「紹介したい人?」

京子は不思議そうにするとツナの右側から霧が発生した。
霧が晴れるとヴァレリオが現れる。

「初めまして、笹川京子さん。俺はヴァレリオ・アンブレジーオ。」

ニコリと笑って自己紹介するヴァレリオに京子は戸惑った。

「貴方は・・・一体?」

「俺の肩書きはアルジェントファミリーのボスである煌の右腕ってところ。任務は都奈さんと貴女をここから助けることだ。」

「えっ!?助けるって??」

目を白黒させる京子にツナとヴァレリオが説明した。

「あのね、アルジェントファミリーのボスの煌君は俺の幼馴染みなんだ。毎日遊んでてその頃はマフィアのボスなんて知らなかったけど。昨日のパーティーで再会して今までのことを話したら助けてくれるって言ってくれて。」

「それでうちのボスは俺をここに潜入させたんだ。」

京子はヴァレリオを見て訝しげにしたが聞いた。

「本当ですか?」

「ああ。アルジェントファミリーのボスから与えられた任務だ。任務放棄はあり得ないからな。それにボスは都奈さんがお気に入りだ。」

何ならツナと京子に誓っても良いとまで言われて京子はヴァレリオを信じることにした。

ヴァレリオはこれからのことを話そうとするとルナが起きた。

《ふあー。良く寝た~・・・てこの子は誰?》

小首を横に傾けながらちょこちょこ近寄るルナにツナは京子を紹介した。

「おはようルナちゃん。俺の隣にいる人は笹川京子ちゃん。いつも俺を支えてくれるんだ。」

《初めまして私はルナ。よろしくね。》

ルナが喋っていることに驚いたが京子もルナに挨拶をした。

「ルナちゃん初めまして。私は笹川京子です。よろしくね。」

《気に入ったわ。》

梟と馬鹿にせず丁寧に挨拶した京子をルナは気にいったようだ。

自己紹介が済んだ所でヴァレリオは本題に入る。

「先ずは京子さんにこれを渡しておく。」

京子が手渡されたのはボイスレコーダーと小型の隠しカメラが搭載されたボタン。

「ボイスレコーダーはわかりますけどボタンは?」

「それは特別使用の小型の隠しカメラが搭載されてるボタンだ。そのボタンを君の服と都奈さんの服に付けてくれ。これらはいずれ役に立つ筈だ。」

「昼食を運ぶ時までに付けておきますね。」

ボイスレコーダーと小型の隠しカメラの意図を理解した京子は頷いた。


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