番狂わせ
飛び去っていくルナを見送るとヴァレリオはツナにあることを確認するように言った。
「都奈さん。本当にここから逃げる覚悟はある?」
「え?」
「ボンゴレから逃げればもう二度とリボーンや守護者は勿論、都奈さんの父親でもある沢田家光にも会えなくなる。彼等と縁を切る覚悟はあるかい?」
ボンゴレと縁を切るということはリボーン達とは一生会えないということだ。ツナは少しだけ考える。
『ヴァレリオさんの言う通り、ボンゴレから逃げたら二度と会えない。逃げたらリボーン達は多分困るよね。だってリボーン達にとって俺は道具。それは瀬川さんも同じ。俺はリボーン達と一緒に居たくない!』
考え込み答えを探すツナをヴァレリオは静かに待つ。
ツナは道具のように自分を扱うリボーン達と共に生きるのは嫌だった。
「逃げる覚悟は出来ました。居たところで道具扱いする人達と一緒に居るなんてもうムリですし。仲直り出来なくて構わないです。」
再構築が出来なくても構わないと言ったツナにヴァレリオは分かったと頷いた。
「分かったよ。それじゃ改めてよろしく。」
「はい!」
ツナの意志を確認したヴァレリオはボンゴレ本部を調べることにした。
「本部を調べるから暫くここを離れるけど大丈夫か?」
「大丈夫です。今頃リボーン達は背瀬川さんと過ごしてますから。特に獄寺君達は背瀬川さんの気を引こうと必死になってると思いますし。」
「そうか。それならまあ大丈夫だろうな。」
ヴァレリオは姿を幻術で消して部屋を出て行った。
ツナは横になり体を休めた。
『何か一気に状況が変わったなぁ。京子ちゃんが言ってた通りだ。』
「それにしても煌君がマフィアだとは思いもしなかったよ。普通の家に住んでて学校も俺と同じだったし。」
人のことは言えないけどと呟くと疲れていたツナはそのまま眠りに落ちていった。その寝顔は安心している表情だった。
ーーーー
アルジェント本部の煌の執務室の窓をルナが嘴でつついた。
音に気付いた煌は窓を開ける。
「ルナお疲れさん。」
《煌ちゃん!お肉!》
「肉の前に報告が先だろ?」
《はーい。》
ルナは筒が取り付けられた足を前に出すと煌は手早く外し、ヴァレリオの報告書に目を通した。
「都奈はそんなに粗末な部屋で過ごしてるのか?」
《うん。私の目から見ても酷い部屋だったわ。》
「これは急がないとな。」
報告書をデスクの引き出しにしまうと内線でルナのご褒美を持って来るように命令した。
「極上の肉をたらふく食べさせてやるからな。」
《やったあ!それ食べたらまたヴァレリオと都奈ちゃんの所に戻るから沢山食べないとね!》
極上肉に喜ぶルナに煌はまさかと思うがと前置きして言った。
「都奈のこと気に入ったのか?」
人間の好みに煩いルナが主であるヴァレリオ以外で気に入った人間にはちゃん付けで呼ぶ。煌がちゃん付けで呼ばれているのもルナが気に入ったからだ。
《気に入ったわ。都奈ちゃん梟の私を馬鹿にせずに挨拶してくれたもん。鳥の癖にとかいって挨拶しない人間は嫌。》
「そういや挨拶しなかった奴には嘴で突つきまくって半殺しにしてたな・・・。」
過去にルナをただの梟の癖にと嘲笑った中堅層の部下に切れてルナはその部下を徹底的につついた。それはもう逃げ回る部下を縦横無尽に追い回して。
##RUBY#血塗#ちまみ##れになった部下が土下座して謝るまで猛攻は続いた。
《半殺しなんて失礼ね!あれは躾よ!躾!》
煌は血だるまにするのが躾なのか?と思いつつも部下が持ってきた肉をルナに与えたのだった。
ーーーー
ヴァレリオはボンゴレ本部を調査していた。
「ここは背瀬川椎子の執務室のようだな。」
執務室に入るとヴァレリオは回りを見渡す。
「隠し通路は大抵ボスの部屋と執務室にあるもんだ。」
壁を見ながら隠し通路に繋がるスイッチを探す。
「ん?」
突起物のような物がヴァレリオの目に止まった。
「これか?」
突起物を下に下ろすように引くと棚が動いた。見てみると短い通路がありその先に下りの階段が見えた。
「ビンゴ!」
ヴァレリオは中に入ると棚を閉じるスイッチを探して入口の近くにある突起物を見つけると足で押す。すると棚が動いて入口を塞いだ。
「さて、探ってみるか。」
ヴァレリオは階段を降りて行き逃げる為の通路や侵入を防ぐ為の通路を調べあげたのだった。